アディールたちは水晶宮を後にした。
「どうするんだ、アディール?おいらたちもカルサドラ火山に行くのか?」
「そうだね。ベルンハルトはここには来ていなかった。火山のほうに魔瘴石がいっぱいあるのなら、そこにベルンハルトもいるかもしれない。僕たちもそこに行こう。」
アディールたちが外套を羽織って、街から出ようとすると「あら?」という声が聞こえた。人間の女がこちらを見ている。長い黒髪に赤い縁のあるメガネ。露出の多い軽装。アディールには見覚えのない顔である。
「誰かと思ったらドドルじゃない。」と女が言った。
「ルナナ!?」
ドドルの驚き様を見て、アディールはアグラニのときのドドルの話を思い出した。ルナナ、確か高飛車で、ドドルのことを下僕にしていたという話だったっけ。
「こんなところで奴隷に会うとは思わなかったわ。」と、ルナナが言う。
下僕だと聞いていたけど、奴隷だったとは。アディールは心の中でひとりでのけ反った。
「いい、ドドル?私はこれからカルサドラ火山に行くわ。当然あんたは私を護衛するの。いいわね、私に何かあったらただじゃおかないわよ。命令よ。」高飛車なルナナは、腰に手を当てて上からドドルに言う。
「ええ!?おいら・・・おいら・・・」ドドルは完全に威圧されていた。
「魔瘴石を集めて注目を浴びるのよ。アグラニの英雄にはなり損ねたけど、私はドルワームの英雄になるのよ!」ルナナは髪をかき上げ、手の甲を口元に当てて「アーッハッハ!」と高らかに笑った。
「ちょっとドドル!なにこの日差し!肌が焼けちゃうじゃないの!」
ドルワームから東、カルサドラ火山に向けて歩を進めていると、ルナナはそうわめいてドドルから外套を奪い上げた。つい先日アディールを苦しめたゴブル砂漠。薄着のルナナが悲鳴を上げるのは当然のことである。
「なによ、これ着ても全然涼しくないじゃない!水の羽衣かなにか持ってないの!?まったく使えない奴隷ね!!」
ルナナはそう言って外套を脱いでは「熱い!」と叫んでまた羽織った。
「それになんで自分で歩かなきゃならないの!ラクダを買えばよかったじゃない!」
ルナナの暴言はとどまるところを知らなかった。
「ちょっと!魔物が私の近くまで来ちゃったじゃないの!もっと身を呈して守りなさいよね!いい?あんたは死んでもいいのよ!私が生きていればいいの!」
それからも、のどが渇いた、靴に砂が入った、服が汚れた、足が痛い、と次々と不満を口にし、砂嵐で少しの間はぐれてしまったときには「あんた頭おかしいんじゃないの!?なんで私を置いて進んでるのよ!信じられない!」と吐き捨てた。
黙って歩く自分たちよりもよほど疲れるのではないか、と思いながら、アディールは感心したり呆れたり。やがて火山の入り口に着くと、ルナナはその無限とも思えるスタミナで、あちこちを歩き回り「なによ!もう掘り起こされてほとんど残ってないじゃない!」と言ってひとりで奥に走っていってしまった。
「ひとりで行っちゃった。」アディールが言うと「い、いいのかな?」とドドル。「追いかけたほうがいいのかな・・・?」「おいら行きたくないけど・・・守りに行かないといけないのかなー。」「そう・・・だよねぇ。追わなきゃ。」アディールたちの足取りは、決して軽いものではなかった。
「きゃあ!なによこれ!こんなのがいるなんて聞いてないわよ!」
アディールたちが追った先では、やはりルナナが魔物に襲われていた。
「そりゃ、これだけ魔瘴が強いところに来たら、普通魔物がいるよな、アディール?」
ドドルはそう耳打ちしたが「なにやってるのよ!早くこいつらを倒しなさい!」と一喝されて、助けないわけにもいかなかった。ルナナは走って戻ってきて、アディールとドドルの後ろに隠れた。「いい?私になにかあったら私がただじゃおかないからね!」
ルナナの後にのそのそとついて来たのは、紫色の大トカゲ。アディールとドドルは、大トカゲにサッと構えた。
トカゲが激しい炎を吐き出し、アディールとドドルがそれをサッと避けた。後ろのほうから「ちょっと!服が少し燃えちゃったじゃないの!」という甲高い声が聞こえた。
モーニングスターを振り回しながら「火山だからなー。」とドドルがつぶやいた。
トカゲは今度は猛毒の霧を吹き出し、それをまたアディールとドドルがサッと避けた。また後ろのほうから「ちょっと!なんか気分悪くなったわ!」という甲高い声が聞こえた。
ピオリムを唱えながら「魔瘴探しに来てるからなー。」とドドルがまたつぶやいた。
モーニングスターを振り回しながら「火山だからなー。」とドドルがつぶやいた。
トカゲは今度は猛毒の霧を吹き出し、それをまたアディールとドドルがサッと避けた。また後ろのほうから「ちょっと!なんか気分悪くなったわ!」という甲高い声が聞こえた。
ピオリムを唱えながら「魔瘴探しに来てるからなー。」とドドルがまたつぶやいた。
やがて大トカゲが倒れると「やるじゃない、エリート下僕!」と言ってルナナはまた奥に向かって走り出し、突き当たりのところで立ち止まった。
「ここよ!ここはまだ誰も掘ってないわ!きっと大きな魔瘴石が眠ってるわ!」
ルナナは道具袋からスコップを取り出す。スコップは手持ちの小さなものだったが、掘り始めてわりと早い段階でルナナが「出たわ!」と叫んだ。かなり浅い位置に埋まっていたようである。 ルナナはその魔瘴石に沿って土を掘っていく。浅い位置ではあるようだったが、ルナナがスコップを差す範囲を見ると、ルナナの体よりも大きな魔瘴石のように思われた。ルナナは熱心に土をかき出している。
アディールたちが見ている中、ルナナはとうとう自分の体よりも大きな穴を掘り、魔瘴石の全容を露わにした。
「期待どおりだわ。これだけ大きな魔瘴石だもの。きっと報酬も弾むわ。そしてみんな、私にひれ伏すのよ。」
よく見ると、魔瘴石には札が貼ってあった。半ば破れかけたその札は、ぴらぴらと微風に揺れている。
「あら?なにこのお札。随分古くさい封印ね。邪魔よ。」
アディールたちが止める間もなく、ルナナは札を破り捨て、ちぎれた札はぴらぴらと地面に舞って落ちた。
「あ、アディール。おいらなんかイヤな予感がするぞ。あのお札、はがしていいのか?」
アディールも、ドドルと同じことを考えていた。ベルンハルトはいなかったが、それとは別のチカラが働いている気がしていた。
そうしているうちに、ルナナは魔瘴石に魔法布をかぶせている。
「ちょっとあんたたち!なにボサッと見てるのよ!この石を引き上げなさい!」
ルナナはそう言ったが、今度ばかりはアディールもドドルも、それを手伝うわけにはいかない。
「ルナナ。おいら、それを持って帰るのはいけないと思うぞ?」
「なによ。奴隷のくせに生意気なこと言うわね。でも、まあいいわ。別にあんたの手なんて借りる必要もないわ。」そう言ったかと思うと、魔瘴石に触れて「リレミト」と唱えた。
「ルナナ!」
ドドルの叫びも虚しく、魔瘴石の大岩はブィンという響きを残して姿を消した。そして、大穴にリレミトゲートが残った。
「じゃあね。まずまず役に立ったわ、あんたたち。」
そう言ってルナナもゲートに消えた。
「しまった!」アディールとドドルは、それぞれリレミトを唱え、自分のゲートを通って地上へと戻った。
そこにも、もうルナナの姿はなかった。
「アディール!もうドルワームに戻っちゃったのかな!?」
「あれだけ大きな石だ。ひとりで運ぶとしたら、ルーラしかない。追おう!」
アディールはそう言ってルーラストーンを掲げ、ドルワームへと飛んで戻った。
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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