リリーネは、つい先日までここで生活していたはずなのに、とても懐かしい気持ちでエテーネの村へと足を踏み入れた。
不思議なことに、冥王ネルゲルによって襲撃された形跡は微塵も見られない。それどころか、リリーネを誰もリリーネだと認識してくれない。リリーネが知る村人もいない。村の形はリリーネのよく知るエテーネの村であっても、住む住人はまるで違う。エテーネであってエテーネでない村。
「え?これはどういうこと?」リリーネは困惑した。
しかし、困惑するリリーネに、村人たちは次々と言う。「救世主さま?あんた救世主さまだろ?」と。
「そうか、あんたが巫女さまが言っていた救世主さまだな!」「遅い!アバ様が死んじまったらどうしてくれるんじゃ!?」「アバ様は苦しい儀式をしておられるのだ。救世主さまは早く行って儀式を終わらせてやってくれ!」
知らない村人たちが、よくわからないことばかりをまくし立てる。私が救世主で、アバ様を助ける?リリーネは戸惑うばかり。
戸惑いながらもリリーネは、町のはずれへと足を向けた。
そこはカメ様がいるはずの場所。そして、今も現にカメ様は動くことなくじっとその場にたたずんでいる。
そこはカメ様がいるはずの場所。そして、今も現にカメ様は動くことなくじっとその場にたたずんでいる。
「救世主さま、それはカメ様と言ってな。」村の老人がリリーネに話しかける。
もちろん、リリーネにとって、いや、エテーネで暮らしたことのあるすべての民にとって、それは知らぬ者はない話。リリーネにとって、今更聞くまでもない話。
「そのカメ様のお告げでは、救世主さまが、そのチカラで巫女の儀式を終わらせ、村を平和に導く、のだそうじゃ。」
もちろん、リリーネにとって、いや、エテーネで暮らしたことのあるすべての民にとって、それは知らぬ者はない話。リリーネにとって、今更聞くまでもない話。
「そのカメ様のお告げでは、救世主さまが、そのチカラで巫女の儀式を終わらせ、村を平和に導く、のだそうじゃ。」
「その救世主は・・・私なの?」とリリーネが自分の顔を指差す。
「それはどうか、わしには判断ができませぬ。ただ、もし、あなたが救世主さまなのだとしたら、きっとこの本を役に立てれるのだろうと、そういうお告げも聞きましたじゃ。」その老人は、1冊の本をリリーネに差し出す。「見たことも聞いたこともない物の作り方の本ですじゃ。」
本をめくると、そこにはハツラツ豆の作り方が書いてある。
「これは・・・。」リーネはまた絶句した。「私・・・私が救世主なんだ・・・。私がこの村にハツラツ豆を持ち込んだんだ・・・。」
「巫女さまがいなければ、カメ様のお告げも聞けなくなりますじゃ。どうか、救世主さま。」
本をパタリと閉じ、老人に一礼をしてから、リリーネは村を出た。
「ここは・・・過去なんだ。時渡りの術は、やっぱりあったんだ。お兄ちゃんは、時渡りの術を使って、冥王から守って私を過去に送ってくれたんだ。だから・・・この村にはまだハツラツ豆も存在しない。私が・・・私が作ったものだったんだ。ハツラツ豆を伝えたのは、私だったんだ。・・・待っててアバ様。ハツラツ豆を作って、すぐに戻ります。」
ナルビアに戻ったリリーネは、早速、釜を使ってハツラツ豆を錬金した。その錬金は、今のリリーネにとっては造作もないこと。かつて4勝628敗という大敗を喫した錬金も、今から統計を取り始めたならば、おそらく、その勝数と敗数が逆転していることだろう。
「よう、錬金王。」とイッショウが言った。錬金名人、よりも適切な呼称をついに思いついたようだった。「見つけたんだな、お宝。」イッショウはリリーネの目を見つめた。「そのお宝は、他人に価値のわかるお宝じゃねぇんだろうな。お前だけに価値がわかる、お前だけのお宝。そうだろ?」
イッショウのその目に「うん。」と短く答えて、リリーネはまたナルビアを出てエテーネの村へと向かった。
「また戻ってきてくれるのかしら。」とリリオルがつぶやき「そう信じようじゃねぇか。」とイッショウが返す。もうリリーネには届いていない会話だった。
【続きを読む】
【前に戻る】
【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
ドラクエブログランキング

