カインの冒険日記 -68ページ目

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。


「ここまでしかお送りできないのが申し訳ないのですが。」と神殿の入り口でフルッカが言う。

「いや、ここで十分だよ、フルッカ。」とアディール。「後は僕たち、時渡りの術者の役割だ。」
 アディールの言葉に「私たちの悲願でもありますのよ。」「絶対、冥王を倒して来るぞ!」「ついにワタクシたちのほうから乗り込むことができました。」と3人が続く。それを聞いて安心したかのように、フルッカはまた白鳥に乗って、帰って行った。
 長い闘いの中で、やっとアディールたちが攻めることができる時が来た。常に受けの状態での戦いばかりを強いられてきた中で、ついに攻勢へと転じることができる時が来た。
 ところが、そんなアディールの心境を読んだかのごとく、どこからともなく声が聞こえる。
「エテーネの生き残りよ、攻めに成功したとでも思っているのか?」研ぎ澄まされたように鋭く響く声。忘れもしない。冥王の声。「ついにここまで辿り着いたか。やはり貴様たちエテーネの民は、この冥王の野望を脅かす危険な存在であったな。」そう言いながらも、しかしその発言とは裏腹に、冥王の声はフフッと笑っている。「だが、我が居城に乗り込んで来るとは愚かな。この居城は死が支配する世界。ここにおいて我は無敵だということだ。さあ早く来い。貴様たちの訪れを歓迎するぞ。」
 確かに、ともアディールは思う。乗り込んだと言っても、ここは敵の本拠地。冥王が有利な場所での戦いとなる。しかも、すでに冥王に気付かれていて、不意打ちというわけにもいかない。
「でも」とアディールは思う。「僕たちだって完全に準備ができているんだ。」ついさっきはじめて手にしたばかりの短剣の柄をぐっと握った。「今度は不意を打たれることはない。」お互いに対決のときを理解している。完全なる正面衝突。今からアディールはそれを行おうとしている。


 アディールたちが歩き進む神殿は、廃墟のように崩れている部分が多く、500年前と同じ形ではあるものの、その500年の老朽を感じさせる。しかし、その朽ちた神殿に詰め込まれた魔瘴の邪気は、アディールたちの生気を圧迫し、息苦しさを与える。意気込んで攻め入った冥王の牙城ではあるが、今アディールの心臓は震えるほどの息苦しさを覚えていた。
 そんな折り。通路の扉の前に、1匹の魔物が立ちはだかっていた。大鎌を持ち、翼を広げて飛んだり浮かんだり着地したりを繰り返す魔物。
「よーう。お前がアディールっていうのか。」その魔物が言った。「オレはこの門の門番。ベレスって言うんだ。」
 緊迫するアディールたちとは違い、ベレスは陽気とも思える話しぶり。
「この扉の奥には冥王様がいるが、オレはこの門の門番。お前たちを通すわけにはいかねぇ。」ベレスは鎌をくるくると回している。
「お前、ラズバーンを倒したんだってなぁ?」とベレスは言う。「オレはラズバーンを見張って守る仕事をしていたんだがなぁ?いや、ラズバーンが生きていればそういう仕事をしていたはずだとガラトアさんに言われたんだがなぁ?」
「そうか!」とアディールは思う。悪魔神官ガラトアは僕との接点がある。歴史が塗り替えられたことに気付いているのだ。
「お前のせいで、危うく失業させられるところだったぜ。」
 ラズバーンが500年前に斃れたことで、それを守る役割そのものがなくなったということを言っているのだろう、とアディールは認識した。
「でも、不思議なものだなぁ?お前がこうして攻めてきたおかげで、オレは失業せずに済んでいる。お前からこの門を守るのが、オレの仕事になったんだからな!」そこまで言って、クワッと表情を変えてベレスはアディールに襲い掛かってきた。その鎌の冴えは、とてもさっきの陽気とも思える口調からは想像もできないほど。
 しかし、その鎌の冴えさえも、アディールが手にしたアディールのためだけの短剣、王家のナイフの敵ではなかった。空気さえも切り裂くほどのその短剣は、ベレスの体を簡単に引き裂いた。


 ドサリと地に落ちたベレスの動かぬ身を越えて、アディールたちは冥王の待つ部屋の扉を開こうとする。しかし、アディールが触れる前に、扉は勝手に開いていく。
「見事だ、エテーネの民よ。歓迎の証として、扉は開いてやろう。さあ、ここまで来るがよい。」




続きを読む

前に戻る


目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



ドラクエブログランキング


読者登録してね