カインの冒険日記 -117ページ目

カインの冒険日記

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 ザーンバルフたちがカミハルムイに戻ると、キュウスケがそれを迎え入れた。
「おかえり。なかなかやるじゃないか。おっと、そう睨むなよ。オレが命を張るのは、愛するユーチャーリンのためだけだぜ。早くニコロイ王に暗黒大樹の葉を持って行こうじゃないか。」キュウスケは、さっさとニコロイ王の部屋へと走っていった。
「おいおい、ユーチャーリンって誰だよ。」とザーンバルフが言うと「ツスクル時代のキュウスケの片想いの相手ですわ。キュウスケは、ユーチャーリンのためにツスクルの学び舎を卒業しましたの。」とキサラギが答えた。
「なんだか納得いかないぜ。」と、ザーンバルフが言い「確かに。穏便ならざる気持ちになるのはなぜでしょうねぇ。」とパルポスも続けた。
「ザーンバルフもパルポスも。キュウスケはああいう性格ですのよ。あまりひとつひとつに腹を立てていては、この先もちませんわよ。」
 キサラギがそう諌めるので、ザーンバルフとパルポスは、心を沈めてニコロイ王の御前に立ったのだが「葉を手に入れました、ニコロイ王!」と嬉しそうに言うキュウスケに「ご苦労だったな、キュウスケ。」とニコロイ王が労う姿を見て、やはり納得いかない、とザーンバルフがつぶやき、またキサラギが諌めた。

 ザーンバルフから暗黒大樹の葉を受け取ったニコロイ王は、その葉の不気味な気配にすぐに気がついた。
「なんと不穏な気。母上はなぜ死の間際にこのようなものを求めたのか・・・。ザーンバルフと言ったか?感謝するぞ。」
 ニコロイ王の感謝の言葉を聞いて、ザーンバルフに少しだけ笑顔が戻った。
「では、この葉を捨てられた城の御殿にある王座の間へ納めに行くとしよう。」と、ニコロイは足を進め「ニコロイ様!お待ちを!」と言うコトル大臣に「わかっておる。ひとりで行ったりはせぬ。ザーンバルフ、キュウスケ、わしについてきてくれぬか。」と言って部屋を出て行った。

 一行はまたサクラが舞い散る草原を抜けて夢幻の森へと足を向け、その奥にある捨てられた城へと踏み込んだ。城門の前で、ニコロイ王は足を止めた。
「この葉のせいか、心なし周りの空気が反応しているような気がする。ん?また幻が見える。キュウスケ、ザーンバルフ、そなたたちにも見えるか?」
「はい。私にも見えます。」と、キュウスケ。
「俺にも見えるぜ。」と、ザーンバルフ。

 エルフの子供が嬉しそうに走って来る。
「ナシュロイ王様ー!リタ姫様ー!ニコロイ王子様ー!アグシュナ王妃様がお帰りになりました!」
 そこに少年ニコロイと着物姿のアグシュナ王妃が現れた。
「母上、おかえりなさい。」と幼いニコロイが言い「ただいま。寂しかったでしょう。」とアグシュナ王妃が言った。
 ニコロイ少年は王妃の言葉に首を横に振り「母上の病気を治すためだもん。ガマンできたよ。」と嬉しそうに言う。そして「来月のお父様の誕生日、一緒にお祝いできるね!」と続けた。
 突然、アグシュナ王妃が「うう。」と言ってうずくまった。「母上!どうしたのですか!?」と駆け寄るニコロイ王子に「大丈夫。大丈夫よ、ニコロイ。」とアグシュナが言った。

「ニコロイ王。ご記憶は戻りましたか?」とキュウスケはニコロイ王を見た。
「ううむ。このようなことがあったような気もすれば、なかったような気もする。もう少し進んでみよう。」ニコロイ王は、また城の奥へと歩いた。

 エルフの子供が白肌の少女に「リタ姫様、大丈夫ですか?お加減が悪いようですが。」と言うのが見える。少し離れたところでは、ニコロイ少年とアグシュナ王妃がはしゃいで走り回っているのが見えた。
「あはは。」とニコロイ少年は楽しそうに走り「待ちなさい、ニコロイ。」と少年を嬉しそうに追いかける母親の姿があった。
「アグシュナ。そのように走ると体に障るぞ。」と言うのはナシュロイ王。
「それが、もう全然苦しくないのです。」とアグシュナは言った。
 ニコロイ少年は、嬉しそうに白肌のリタ姫にケーキを見せる。そして「姉上。母上元気になったね。一緒に食べよう、母上のケーキ。」と言った。
 しかし、少年がそう言って差し出したケーキを白きリタ姫は手で打って弾き飛ばした。「姉上!?」驚くニコロイ少年を尻目に、リタ姫はその場を去って消えた。

「そうだった。思い出した。姉上は少しずつおかしくなっていったのだ。母上の体調が回復するにつれて母上を恨むようになっていき、そしてあの日の悲劇に繋がったのだ。」
 ニコロイ王は、亡霊の幻を見ながら、唇を噛んだ。
「しかしリタ姫はどうしてアグシュナ様を憎んだのでしょうか。」隣りを歩いていたキュウスケが王に尋ねた。
「わからぬ。回復を願う気持ちは同じだと思っていたのに。」ニコロイ王は大樹の葉を見つめた。「この葉を納めれば、何かがわかるのだろうか。」ニコロイはまた歩き、御殿へと上がった。
 王座の間へと進んだニコロイは「母上。長らくお待たせしたことをお許しください。」と言って大樹の葉を差し出した。そして「ご遺志のとおり、葉をこの玉座の間に納めます。」と、膝をついて納めた。
 すると、たった今納めたばかりの葉が弾け、それと同時に着物姿のアグシュナ王妃が姿を現す。
「母上!!こ、これは!これも幻なのか!?」ニコロイは目を見開いた。
「ああ、ニコロイ。こんなに立派になって。いいえニコロイ、私は幻ではありません。あなたが大樹の葉を納めてくれたおかげで、私の封印が解けたのです。」
 アグシュナ王妃はニコロイを見つめてそう言った。
「これは・・・見間違えようもない。あの日のままの母上よ。」50年前のままの姿の若き母親に、ずっと老齢であるニコロイが駆け寄った。「母上・・・再び会えるとは・・・。このような日が来るとは・・・」
 若い母親は、初老のニコロイの手を取った。「苦労をかけたようですね。あなただけでも無事でよかった。」
「いえ、母上こそ。こうして生きてお会いできるとは思いませんでした。しかし、どうしてこのようなことに?」
「ニコロイ。リタが聖地と通じ合える特別なチカラを持つ子供、白き者であったことは覚えていますね?」
「はい、もちろんです母上。」と言った後「いえ、覚えていたわけではありません。思い出しました。」とニコロイは訂正した。
 アグシュナは、こくりと頷いて話を続けた。
「リタはそのチカラを利用し、聖地のチカラを我がものにしようとしていたのです。ナシュロイ王と私が気付いたときにはすでに遅く、身に余るチカラを取り込んだリタは心を失い暴走しました。ナシュロイ王はそれを止めようとしてリタに殺められ、私はこの地に50年間封じられたのです。」
「そんなことが・・・。姉上がそのようなことを・・・。」
「私たちは王家の一族として、聖地を守るという使命を果たさなければなりません。」アグシュナがニコロイを見ると、ニコロイは強く頷いた。「聖地は大地のチカラの源。エルトナ大陸の心臓なのです。あの地が悪しき者の手に落ちれば、この大陸は暗黒大樹に蝕まれて滅びゆく運命にあります。あの日私が落とした黄金の指輪を持っていますか?」
 アグシュナの問いに「もちろんです、母上。50年間肌身離さず、こうして持っておりました。」と言ってニコロイは左手の人差し指の指輪を見せた。
「そう、その指輪。それは王家の庭にある聖地への扉を開くカギなのです。リタにチカラを奪われた聖地がどうなっているのか、確かめにいかなくてはなりません。」
「王家の庭。この御殿の裏庭のことですね。姉上とよくふたりで遊んでいたのを思い出します。姉上は王家の庭が好きだった。」
 懐かしむ目でニコロイは言い「参りましょう、母上。」と歩き出した。







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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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