カインの冒険日記 -114ページ目

カインの冒険日記

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「よくやってくれた。」とニコロイが言った。「いや、そんな他人事はよそう。すべてわしの蒔いた種。そなたのおかげで助かった。」ニコロイはザーンバルフに頭を下げた。
「ニコロイ王!一国の王がそのように頭を下げてはっ!」と、青髪のキュウスケ。
「いや、キュウスケよ。こうさせてくれ。」と言った後に頭を上げ、ザーンバルフを直視した。「わしは今、この国の王としてそなたに感謝しているわけではないのだ。ひとりの愚かな男として謝っているのだ。すまなかった。よくこの国を救ってくれた、などと偉そうなことを言う資格は、わしにはないのだ。他者の過ちの責任を王として負うのとはまるで違う。わしの責任なのだ。わし個人の愚かな行いに対して、そなたは手を貸して助けてくれたのだ。とても王としての言葉など、わしの口からは出せん。わしに王としての資格などない。」
 苦々しい表情のニコロイの前に、一筋の光が注いだ。やがて、その光は人の形を形成してゆく。
 白い髪、白い肌、白き者、リタ。
「あ・・・あ・・・これは・・・これもまた幻なのか・・?」
 腰を抜かしたように、ニコロイはしりもちをついた。
「聖地を狙っていた魔物はもういなくなったのですね、ありがとう。」と、白き者は言った。「これで聖地のチカラを開放することができます。聖地のチカラは再びエルトナ全土へと届くでしょう。」小さな体のリタが大きく手を広げると、聖地の白い結晶たちが光を発し、その光はエルトナ全土へと旅立って行った。
「メギストリスのときと同じですねぇ。」とパルポスが言うと「勇者の光ともな。」とザーンバルフが言った。
「これでもう大丈夫。私の役目は終わりました。」
 リタはしりもちをついたままのニコロイのほうを向く。「私のお願いを聞いてくれませんか、そこの人。」とニコロイを呼んだ。
「は、はい。わ、私が誰だかおわかりには・・・いえ」ニコロイは立ち上がってリタに軽く頭を下げた。「はい。なんでしょう?」
「私の大切な弟に伝えてほしいことがあるのです。ニコロイという、まだ幼い6歳の子供です。今もどこかで泣いているかもしれません。」
「はい・・・泣いているかもしれませんな。」ニコロイの声は涙に震えるものだった。
「でも、あなたは強い子だから、ひとりになってもこの国を守る強い王になれるはず。そう伝えてもらえますか?」
「・・・わかりました。必ず伝えます。・・・必ず。」
 白きリタ姫は、笑顔で頷いて「お父様、お母様。リタもおそばへ参ります。」と言ってふわりふわりと浮かんでいった。「ニコロイ・・・あなたのことだけは、守れた・・・よね?」白き者は細い光となって、すうっと空へと消えた。

 ニコロイは、リタが消えた後も、ずっと空を見つめていた。やがて「姉上。あなたはいつも最後の最後まで人のことを想いやって・・・。おつらかったでしょう。あなたはたったひとりで命と引き換えに聖地を守ったというのに。ありがとうございます、姉上。ありがとう、姉上。」ニコロイはまた肩を震わせていた。
「ワタクシたちはニコロイ王の心の闇を払えたのでしょうか。」
「払えたのだと思いますわ。王様、あんなに嬉しそうにしていますもの。」
「ああ。だが、心の底から喜んだときに、人が笑うとは限らない。泣くことだってあるってことだな。」
「ですねぇ。そのときは、ワタクシたちよりも、ピリッポが勝つことになるのかもしれません。」
「ああ。あいつの泣き芸はすごかった。元気にしてるのか?」
「レンダーシアでまた会おう。そう言ってワタクシたちは別れました。」

 やがてニコロイがザーンバルフたちに向き直ったときには、はじめて会ったときに見せていた貫禄のある表情へと戻っていた。
「わしはキュウスケとカミハルムイに戻る。そなたたちも後で城に来てくれ。今度は、カミハルムイの王として礼をしたい。」
「ニコロイ王!?」と、キュウスケ。
「姉上の言葉を聞くと、王の資格などとつまらぬことを言ってしまったことを恥じたくなってしまった。資格など、もとより関係なかったのだ。たとえ愚かであったとしても、わしは王をまっとうせねばならん。それに、父上、母上、そして姉上の遺志を受け継いだわしにしかできないことでもある。行くぞ、キュウスケ。」
 ニコロイはそう言って聖地を後にし、それにひょこひょことキュウスケが続いた。







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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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