「痴人の愛」は好きな作家谷崎潤一郎の作品の中でも一番好きな作品です。
リメイク版の増村保造監督、安田道代主演版は観ていましたが、原作のイメージに近い最初に映画化された木村恵吾監督、京マチ子主演版は初見です。京マチ子も谷崎も大好きなのでずっと観たかった作品ですが、普通にソフト化されない作品でした。
会社では聖人君子と呼ばれるほど、真面目な電気技師の河合譲治は家に15歳のナオミを囲っていた。
神戸の場末のカフェの女給だったナオミの肉体美に惚れた譲治は彼女の母を説得し、東京で二人暮らしを始める。きちんと教育し、一人前のレディにするつもりの譲治だったが、ナオミは勉強を嫌い譲治の金で贅沢三昧。
さらには遊び人のボンボン連中と逢い引きを重ね譲治はついにナオミを追い出すが…
譲治役は名優宇野重吉、ナオミ役が京マチ子とおそらくどの映画版よりハマリ役になっています。
しかし、1949年の作品ということもあり、原作でドキドキするドエロい場面がソフトになっていたり、オチが原作と大きく改変されていて唖然としました。
途中まではナオミが原作通りの奔放さで譲治を振り回しますが、終盤が原作ではありえないようなナオミの心変わりがあります。
谷崎潤一郎はドMなんだから譲治はナオミに振り回されることこそプレイなのにこの作品の改変は原作の本質を揺るがす改変ぶりなのです。
今ならネットで炎上間違いなしな仕上がりでした。
原作は「ロリータ」に並ぶこじらせたおっさんが若い子を自分好みに育てようとするけど、思うようにいかない切ないおっさんのラブストーリーです。
ちなみに今映画化するなら広瀬すずあたりがナオミにハマリそう。ちょっと前なら二階堂ふみ。
この作品がなぜ今普通にソフト化されていないのか実際に観て合点がいきました。