経済においては、様々な命題が主張されている。ところがその多くが正しいものではない。現実による検証がおこなわれていないものも多いし、一部において正しいものを全体に拡張してしまったレトリックもしばしば見かける。たいへん残念なことは、その間違った命題を前提に経済を考える人間がいることだ。
経済に関する、間違った命題、有害な命題に関して、今まで多数取り上げてきたが、ここで羅列して提示したいと思う。
途上国の国民が力をつけてくれば当然先進国の国民が受けている待遇をそちらに配分せざるを得ない
財政支出をすれば民間が将来の増税を予想して消費をその分だけ減らし、総需要は変化しない
先物市場への参加は、リスクヘッジ作用によって生産者に利益をもたらす
日本の株価が上がるということは、日本の景気が良くなっているということである
労組が組合員に対して獲得する賃上げは、主として労組の外にいる他の労働者の犠牲においてである
数多くの雇用者たちが競争することが、労働者にとってのほんとうの保護になる
市場原理に任せれば、優勝劣敗の原理で、優れた企業のみが生き残る
財政不均衡が拡大していけば、国家の財政が破綻する
安定した低いインフレ率を保つことは、安定した高い実質成長率を維持するために必要かつ、ほぼそれだけでじゅうぶん
インフレになりそうであれべ、金利を上げてインフレを抑えるべきである
個人の自己利益追求が、まるで見えざる手のように働き、社会全体が満足する状況に導いてくれる
日本(もしくは米国)は長い目で見ればほぼ機会均等の状況である
経済が停滞する理由は、儲からない分野に資源が配分されるからである
消費税は、悪影響は駆け込み需要の反動くらいで、経済を阻害しない
マクロ経済学においてミクロ経済学による基礎付けをおこなうべきである
IMFは正しく、言う通りに政策を実行すれば、経済はうまくいく
資本主義経済の発展は社会の不平等を広げるが、その差はやがて自然に縮小され不平等が是正される
高齢者が増えると、高齢者は貯蓄を切り崩して生活しているので、日本の家計の総資産は減少していく
数学を使えば精密にかつ効率的に経済を理解し、思考の時間を節約することができる
大きな政府になれば、既得権益のために国民のお金が悪用されたり、権力を乱用されたりする
労働でも生産でも、全ての市場は需要と均衡のモデルで表現できる
入り口があれば出口もあるので、引き下げた金利はいつか上げなくてはいけない
昔の日本人は貯蓄しようとする傾向が強かったので、経済成長した
今までとりあげてきたものをざっとあげてみたが、こんなにある。これらは全て誤り、もしくは誤りを生むレトリックを含んだものだ。
これらのプロパガンダが何を我々に信じさせたいかといえば、
政府が介入しなくても、経済は自然に最善の状態になる
現在の状況は、不公平によるものではない
という嘘であろう。
細かい内容としては、
資本家の資産を目減りさせないようにインフレを防げ
資本家の利益を増やすため利子配当を増やせ
資本家の利益を増やすため賃金を下げろ
といった話である。
このようなプロパガンダが幅をきかすようになったのは、ケインズ派が否定され新古典派が隆盛になってからである。それによる改悪によって、日本及び米国において今よりずっと適正だった富の分配は見る影もない。ピケティ氏が証明した通りである。
我々に必要なことは、プロパガンダに騙されない知識、能力を培うことに他ならないだろう。そしてそのようなプロパガンダをおこなうものを徹底的に糾弾し、また騙されている人間に説明していくことだろう。