ステグリッツ教授はかく語りき(グローバル化) | 秋山のブログ

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グローバル化に関してもいろいろ書いている。大きく分けて二つ合って、先に書いた金融市場のグローバル化と貿易のグローバル化だ。

貿易のグローバル化が社会に悪い影響を与える仕組みとして、金融市場のグローバル化、自由な資本移動が関わってくる。貿易のグローバル化の悪い影響とは、労働者の賃金の抑制だ。

面白い思考実験がある。
P114
『労働力の移動が自由化され、資本の移動が禁止された世界を想定し、非対称的なグローバル化が交渉力にどんな影響を及ぼすか見ていこう。まず、各国は労働者をひきつけるために競い合うだろう。彼らは良い住環境や、良い教育環境や、労働者に対する低い税率を約束するだろう。そして、これらの財源を確保するため、資本に対して高い税率を課すだろう。』

企業が主張してきた資本の自由な移動と投資の保護についても正しくないことを明らかにしている。
P115
『この主張には二つの穴がある。第一に、グローバル化は国全体の産出量、たとえばGDPを上昇させるという点。第二に、グローバル化の利益がトリクルダウン効果で国民全体に行きわたるという点だ。二つの議論はいずれも正しくない。市場が完璧に機能する環境下で、自由貿易を実現するのであれば、。。(中略)。。”可能性”もあるだろう。しかし、多くの場合、市場はそれほどうまく機能しない。』
ステグリッツ教授は指摘していないが、労働塊の誤謬の誤用で、市場が完璧に作用すると間違えている人間が多そうだ。
トリクルダウンにいたっては、あまりにもくだらない論理なので論外。

TPP反対に繋がるグローバル化の問題点の指摘もある。
P215
『しばしば国際企業は、国内で手に入らないものを、国際舞台で手に入れようとしてきた。世界貿易機関(WTO)の金融サービス協定は、金融市場の自由化を強制すべく、外国銀行の国内参入を義務付けた。。。(中略)。。。各国政府による規制の導入を制限した。』
この後、米国が協定を使って相手国に自国に不利な制度を作らせないようにする実例がいくつも出てくる。そのまとめ。
P216
『北米自由貿易協定第11章や、他の二国間投資協定(欧米が途上諸国と締結した経済協定を含む)は、ほぼ例外なく、規制変更の結果として生じた損失を企業に補償することを定めている。自国の議会と裁判所が頑として拒んできた措置を、アメリカは国際協定に組み込んでしまったのである。』
大事なのは最後のまとめ。
P217
『わたしたちは耳にたこができるほど言い聞かされる。これは不可避な道であり、グローバル化のもとでほかに選択肢などない、と。しかし、この運命論は、現行制度から恩恵を受けている人々が考えだしたものだ。彼らは、今日の窮状が選択の結果であるという事実を、うやむやにしようとしている。民主主義を奉じる各国政府は、グローバル化の経済的枠組みを選択してきており、民主主義はこの選択によって枷をはめられてきた。上位一パーセントの人々は、たとえば大衆迎合主義のもとで、民主主義が”過剰な”累進課税の導入に駆られることを懸念した。現在、わたしたちの耳元にささやかれるのは、グローバル化に参加したいなら累進課税は導入できないという話だ。』
TPPにおいて規模から考えると、米国にとって重要なのは日本で、日本にとって重要なのも米国に他ならない。しかしこの2国間には、宣伝のために利用される一部の高税率の品目は除いて、多くの製品の関税はかなり低い。結局、TPPの目的は、本質的でない議論の影に隠されてようとされてきたISD条項に他ならないだろう。TPPは日本のためにならなければ、米国のためにもならない。米国の1%の人のためだけのものだろう。