ステグリッツ教授はかく語りき(見えざる手) | 秋山のブログ

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世界史の教科書を見れば歴史上の人物としてアダム・スミスはかなり重要視されていることがわかる。受験生は、条件反射のように、アダムスミス=国富論とおぼえさせられる。とくに「見えざる手」の話は相当有名だ。

P77
『近代経済学の父アダム・スミスは、個人の自己利益追求が、まるで見えざる手のように働き、社会全体が満足する状況に導いてくれると主張した。世界金融危機の影響がまだ続いている現在、銀行家の自己利益追求が、全体の利益につながったと主張するものはひとりもいないだろう。どれだけ甘く採点しても、社会全体の犠牲の下で、”銀行家自身”の利益につながっただけだ。』
全体の利益どころか、全体的には大きなマイナスだったと指摘している。

何故うまくいかなかったは、経済学上の重要な概念、市場の失敗で説明している。
教授の分り易い市場の失敗の説明は、以下の通りだ。
P78
『政府がきちんと役目を果たせば、労働者や投資家が得る報酬は、彼らが社会にもたらす利益とひとしくなる。これがひとしくならない状態を、わたしたちは、”市場の失敗”と呼ぶ。要するに、市場が効率的な結果を生み出せない状態だ。』

重要なのは次の部分だ。
P79
『個人的報酬と社会的利益がうまく合致しないのは、次のような場合である。。。(中略)。。。事実上、全ての市場はこれらの条件を一つや二つは満たしており、市場がおおむね効率的であるという推定はほぼ成り立たない。つまり、このような市場の失敗に対して、政府が矯正を行なう余地はきわめて大きいわけだ。』

今回の話は付け加えることはあまりない。「見えざる手」なんてもはや何の価値もない概念だ。それを明らかにする研究をおこなった教授を始めとした経済学者は、経済学の力を示したとも言えるであろう。