インフレーション2 | 秋山のブログ

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インフレーションを貨幣数量説にからめて掘り下げてみる。

実証上、マネーストックと物価との相関はよく知られていることである。経済規模が同じであれば、その総計は物価によって左右されるので当たり前と言えば当たり前のことである。しかしマネーストックと物価の関係はその程度のものではない。以前はマネーストックの増減に2年程遅れて物価が綺麗に同じような曲線を描いて追随するという現象も見られていた。もっともこの現象は最近認められない。→参照

一般的に物価が上昇するためには、消費者の収入の増加が必要である。需要は、特に中下層の消費者の収入によって決まると言ってもいいだろう。マクロにおいては個人の選好の影響は小さくなる。選好を主として、収入の増減は曲線をスライドさせるだけと説明している経済学のモデルは、本末転倒であろう。

企業等に融資された貨幣が使われれば、それは消費者の収入となっていくだろう。一方、融資され、使った貨幣を企業は回収しなくてはいけないので、増加した貨幣の分だけ企業は商品の価格に上乗せするだろう(消費量、販売量が代わりに上がれば価格の上昇は抑えられるが、価格の上昇の方が優勢であろう)。上乗せしても消費者はその分収入を増やしているので、恙無く物価は上がるというのが、2年遅れて物価が上がるカラクリだと思われる。
最近は、企業が内部留保を貯め、借り入れをしなくなっている。その代わりに国が借金をして、お金を使っているが、国は需要や利益を考えておらず、税等を上げる場合でも、着眼点が違うということで、マネーストックと物価の関係は崩れて当然であろう。

貨幣が消費者に供給されても、返済のための価格転嫁がなければ、スムーズに物価は上がらないであろう。しかし、上昇の余力が存在するということは、長い時間をかければ相応の物価に収束する可能性は高いであろう(一方、物価がそのような値になれば、そこから変化するためには新たな供給が必要となるだろう)。
ここで考えなくてはいけないのは、貯蓄についてである。貨幣が供給されても、それが貯蓄され、消費の循環に入っていかなければ、供給されなかった場合とほとんど効果に違いはない。貯蓄したお金は必ず融資に回されるなどという話が出ることがあるが、まったく保証のない話だ(融資は需要の予測に支配されており、預貯金の金額の影響は金利を介したもののみで軽微である)。証券に対する投資は、設備投資と混同され、経済に良い効果を与えるかのような誤解が蔓延っているが、最初に発券された時を除けば、所有者が変わるだけの話で、消費の循環には入っていかない。

どのようにして物価が上昇するか考えてみましょう。

労働者の賃金は、売ったモノの代金をそのまま貰えるわけではありません。金利を取られたり、以前企業が借りた金の返済に回されたりします。逆に足りない場合に、企業は借りて賃金を払ったりすることもあります。このように借りたり、返したりしながら、貨幣は循環し、生産と消費を繋げています。
ここでもしこの新たな借り入れがないと仮定してみましょう。売って得た代金以下の可処分所得にしかならないので、モノの価格が足りない分を補うだけ下がらなければ、供給する能力は十分あるにもかかわらず購入できる量は減少します(不況です)。そして時間の経過とともにどんどん縮小していくでしょう。
実際は、経済主体が借り入れをおこなっているのでそのようなことにはなりません。その中でも重要なものが企業による設備投資です。設備投資は、生産性を向上させるだけでなく、貨幣の供給源としても大変重要です。
貨幣の供給が十分以上にあり、可処分所得が十分にあれば、それは需要の拡大に繋がります。旺盛な需要は、価格を上昇させる圧力になり、インフレを引き起こすでしょう。そしてそれはまた可処分所得の過剰分をいつか吸収するでしょう。マネーストックが物価と相関が高いという事実は、このような機序によっておこっていると考えられます。

消費者の経済行為の循環に、貨幣を供給するもののメインが、企業への融資であった場合、インフレとマネーストックの関係はより密接になります。というのは、企業は融資に利息をつけて返済するために商品の価格に上乗せするするからです。この構造が生きていた時代には、マネーストックから約2年程遅れて、インフレ率は極めてよく似た変動をしていました。企業の代わりに、国が赤字を出して循環に貨幣を供給し、経済を支えている現在ではこの構造は成り立たなくなっています。

設備投資は、消費者の経済行為の循環に貨幣を供給するものですが、金融資産の貯蓄や株や証券などへの投資は、貨幣の供給には全くなりません。逆に循環から貨幣を減少させるものです(マネーストックには含まれています)。どちらも投資という言葉が使われていたり、既におこなわれた融資を債権化して市場に出すなどのことがおこなわれているので、誤解が生まれていると思われます。



●ベースマネー

マネタリストは、マネーストックと物価の関係という有益な実証研究をおこないましたが、マネーストックのコントロールに関しては誤った考えを持っていましたが。それはベースマネーを操作することによって、マネーストックがコントロールできるということです。信用創造によって貨幣が増えることを述べたのはよかったのですが、その元がベースマネーであると考えたことが誤りでした。ベースマネーは少なすぎればマネーストック拡大の足枷になるというだけの話で、マネーストックは有効需要に主に規定されるものです。ベースマネーとマネーストックには安定した関係はありません。ベースマネーによるコントロールは失敗しました。