財政政策の意義 | 秋山のブログ

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以前も書いているが、有効需要不足は、生産と消費を取り持つ循環する貨幣の減少によっておこる。消費者の収入が減少したり、融資、設備投資が少なくなったり、投機に貨幣が移行することでおこるのである。消費者が購入する意欲を持ち、またそれを生産する能力があっても、購入する資金がたりなくなるため、生産を抑制することになる。そしてその結果余剰の人員が生まれ、非自発的失業が生まれるだろう。
これに対処するために財政政策は、もちろん有効であるが、多くの人間が指摘するように、国が使った人間の賃金として貨幣を供給して減少分を補っても、その後の循環する貨幣の減少改善に繋がらないのであれば、一時的な効果しかないことになるだろう。

景気対策として、国は財政政策をしばしばおこなっています。さて、この財政政策はどのような効果を経済に対して持っているのでしょうか。

不況は、生産と消費を繰り返す実体経済の貨幣の循環がうまくいっていないこと、その循環の中の貨幣が減少していくことによっておこります。従って貨幣を供給するか、貨幣の減少を食い止めることにより、改善することができます。
財政政策をおこなえば、国のおこなった事業の対価として、貨幣が実体経済の循環に供給されます。従って、一時的にせよ改善することは明らかですし、改善は実際に観察されています。問題は、増やした貨幣がどうなっていくかということです。国が投入した分を税等で回収するならば、一般的にその効果は失われるでしょう。もちろん同じ税でもどこから回収するかで大きく違ってきます。実体経済の循環から貨幣を減らしている、証券等の市場へ移行した貯蓄から取り返すのならば、効果は失われないでしょう。また、供給した貨幣によるインフレには一応、注意しておく必要があるでしょう。相応のインフレしか起こりえませんが、効果が相殺され消失する可能性はあります。

財政政策には、生産性の向上という側面もあることを忘れてはいけません。国民に対する訓練となり、従事した人間の生産性を上げることになります。道路等の整備による生産性の向上も、言うまでもないことでしょう。また、例えば港の整備など、輸出に関わる能力を上げることによって、入ってくる貨幣が増えたり、出て行く貨幣が減ったりするかもしれません。



●クラウディングアウト

財政政策をおこなう際に、発行される国債が金利の上昇を引き起こす可能性があります。時間的余裕があれば信用創造で銀行預金の総額が増えると言っても、現在の日本のように日銀が低利で融資したり、銀行同士で融通しあうシステムが整っていなければ、金額が足りなくなることもありえる話でした。昔、米国で観察されたクラウディングアウトは、金融システムの未熟さからおこったことでしょう。現在の日本では、融資した残りの預金が国債を買うために足りなくなったとしても、日銀からの貨幣を借りるための利率と国債の利率の関係次第ではありますが、いくらでも借りて国債を買うことができる構造になっています。つまり現代の日本では、利率の上昇はおこらないということです。(なお、利率が上がる力を相殺する外国からの貨幣の流入があり、そのため通貨が高くなるという話もあります。しかし、述べたように利率が上がる構造にないので利率は上がらないのです。そして通貨がしばしば反応してあがるのは、そのような間違った理論を皆が信じているために、皆がいち早く上がる動きに乗ろうとするからです)

古典派経済学におけるクラウディングアウトの理解は、金利以前の問題でした。社会の生産力は常にほぼ最大限に発揮されていると考えられていたために、政府が事業をおこなえば現在おこなわれている民間の事業にしわ寄せがくるという考えです。部分的な不足を見て、そう勘違いする人間は少なからず存在します。