IMFと陰謀論 | 秋山のブログ

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某所で書き込みを読んでいたら、「消費税増税とIMFと金融ユダヤ勢力の思惑」という1年程前のブログの紹介があった。IMFと言えばスティグリッツ教授も、そこで働いていた頃からいろいろ批判してきた組織である。IMFが色々間違ったことをしてきたことも、その主張がかなりおかしいこともその通りである。しかしこの記事の内容には論理的にちょっとおかしい点があるし、スティグリッツ教授が述べてきたその原因とも違うようだ。そこでこの記事の内容を検討してみることにする。

まず、記事の最初の辺りは大凡その通り。IMFに日本の政策にケチをつける資格はない。日本は莫大な金を出資している出資国である。
出資した金は別に消えてなくなるわけではないので(機会費用の問題は多少ある)記事の筆者程目くじらを立てる必要はないが、それの増額は日本が財政危機などとは程遠い状況にあることを裏付けるものだ。

次にIMFが貸し出した国のためになったかどうか。これも大凡その通りで、必ずしもその国のためになっていない。ただしこれがユダヤ資本が儲けるためにやっていることだという意見は違うだろう。私の(そしてスティグリッツ教授の)意見は、IMFがシカゴ学派の間違った経済学(≒新自由主義)に犯されているからというものだ(間接的には、この手の経済学者に資金援助したり、間違った思想の人物が任用されるように働きかけたりすることで、投資家、投機家はそれを実現しようとしてはいる)。
ペルーの例を見れば、新自由主義的な手法で国がうまくいく場合もある。投資家に利権と大きな利益を献上する以上に、技術の導入や社会の整備で生産性が著しく高まれば、成功といえるだろう。すべきことはケースバイケースでプラスとマイナスを将来についてまでしっかり計算しながら支援することで、一律に新自由主義を導入させることではないだろう。
韓国は当時のペルーのような国ではないので、マイナスばかりでプラスはない。これも記事の通りである。(韓国のことを笑っていられない。日本のバブル処理も、似たようなことになっている)

記事のもっともよろしくないところは、消費税増税からハイパーインフレに繋がるところだ。
増税でデフレ不況は悪化するだろう。当然、財政も悪化する。しかしそれは経常収支が悪化することを意味しない。国債を買うための資金は国内の銀行に常にあるだろう。さらに、たとえマネタイゼーションで対応したとしてもそれでハイパーインフレが起こるわけではない。あることの前に何かがあったからそれをしたらそうなるなどと言うのは、極めて幼稚な思考法だ(同様な例に、アジアの通貨危機が日本に不況をもたらしたなどという馬鹿げた主張がある)。ハイパーインフレが起こるためには、著しい需要超過と現在流通しているお金の何10倍もの紙幣増刷がなければならないだろう。著しい供給過剰の現在なら、マネタリストの想定するほどの上昇すらないだろう。

提言した理由を考えれば、財務官僚からの圧力だろうなというところが妥当だと思われる。