めちゃくちゃ惜しい池田信夫氏 | 秋山のブログ

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池田信夫氏のアベノミクスは世界経済のリスク要因という記事が面白い。
少し変えただけで分り易い正しい記事になるからだ。

IMFは過去大いに間違えておりチーフエコノミストが何を言おうが意味はない。まあ、ここはどうでもいいだろう。

国債の長期金利が0.9%を超えると買いが入り、それ以上上がらないことを指摘している。
池田氏は日銀が介入して買い支えていると疑っている。もちろんその可能性は低くはないが、そうでなくても十分成り立つ話だ。

国債はほとんど邦銀によって所有されている。邦銀は自己資本比率規制によって日本国債をかなりの量所有せざるをえない構造になっている。経常黒字により日本国の資産は総計として増加する状態にあるので、全ての国債を賄うだけの資金が邦銀にはある。そして国がどれだけ借金をしても、国内の誰かの懐に入るわけで、結局邦銀がその分預金を増やすために足りなくなることはない民間の資金需要が増す場合も、信用創造で貸し出されるために足りなくなることはない。
邦銀としても利益は出したいので、国債はなるべく安く多く買いたいところである。しかし日本国債は買おうとする海外資本も多く例年3倍くらいの倍率になっている。邦銀が買えなかった半分未満の国債が外資によってかわれ、さらにそのごく一部が投機的な市場で扱われる。自己資本比率規制に引っかからない範囲で、邦銀も売り買いをするが、基本的には売り買いしなくても持っているだけで十分な利益を得ることができる。満期日にはかならず額面通りの価格になるからだ。邦銀が所有している外で、売り買いがなされることが多いが、最初の価格よりも安く売った人間は、大抵は空売りで、価格が下がったところを買い戻して利益を得ようと意図がある。株の価格操作よろしく価格はある程度下げることもできるが、買戻しの段でその価格で買い戻せる保障はない。レバリッジをかけて空売りすれば、周囲のほとんどがパニック状態でなければ破産は確実だろう。安い価格で売る義務は邦銀には全くないのだ。価格低下が資本比率に引っかかってくることも可能性はあるが、その場合は邦銀は買い支えることで莫大な利益を得ることができる。もちろん国が介入することもありえないことではない。最近の若干の金利上昇は、邦銀と日銀の掌の上でおこった些細な現象に過ぎない。(ヘッジファンドはパニック売りをする人間を狙っているのだろう)

それはさておき、金融抑圧という言葉が出てくる。マネタイゼーションで金利上昇を抑え込む政策だ。金利が自由化し、金融市場が国際化したことで、それは不可能だと考えている人間が多数いることは確かだろう。しかし前述のような構造を考えれば、不可能でも何でもない。

為替の関係もあるので外資が全て撤退するとは限らないが、高い利率を当然と考える投機筋は当然退場するだろう。彼らは円高の元凶でもあり、また不安定さを生む要因である。市場の規模が大きかったり、流動性が高かったりすれば、価格が安定且つ適正なものになるという考え方は、人間の心理を単なる確率に置き換えたものであり、実証上成り立っていないし、成り立つと考えることもどうかしている。特に投機筋の存在とその比重の高さは、不安定さを相当大きくする要因だ。彼らが参加するくらいなら規模は小さくてもいいだろう。円高対策にもなれば、価格の不安定さを軽減もさせる、彼らの退場を促すこの策に問題はない。

投資家が退場すれば、流動性がなくなって価格が不安定になるというのは、あまりに単純な考えだ。規模が小さい市場で、少数の投機家が牛耳っている状態なら、それはそれは不安定だろう。しかしこれは逆で、価格の変動のある投機部分の割合が減るのだ。金融抑圧はますます容易になるだろう。投機筋が怖いから財政再建しなくてはいけないという財務省の流す愚かなデマは、ますます有効性を失うだろう。

ちなみに、実質金利マイナスであれば、邦銀が国債を買わないとか、邦銀が潰れるとか単純に考えてしまう人もいるかもしれない。これに関しても説明する。
規則として買わざるをえないことは前述の通りであるが、実質金利がマイナスであっても銀行には十分な利益がある。銀行は国債を買うためのお金を国民から借りている。そしてその金利は国債金利よりも低いのだ。つまり、かならず利ざやが存在する。利ざやがプラスであることに関しては、インフレ率がいくつであっても全く関係がない。つまり、国債を買うという極めて単純な作業で邦銀はそれなりの利益を得ることができることは変わらないのである。
もちろん、他国の国債との実質金利に差がでれば、邦銀にとってそちらを買うという力も働くのは確かだろう。しかし為替やその他のリスクを計算に入れれば、多少の金利差(実質)で邦銀が他国債を選択する可能性は少ないだろう。(近年の実際のパーフォーマンスはそれを裏付けている)

黒田総裁は、やるべきことをやっている。株価の動きも、国債金利も、全く想定内だろう。アベノミクスの最高の施策は、黒田氏を日銀総裁に据えたことだ。安倍氏はどうも理解できていなそうで、他の政策はダメなものも多々ある。それでもそれを打ち消すくらいこれは大きいことだ。
日本にとって一番心配なことは、投機筋の逆恨みによって黒田総裁の暗殺がなされることである。そうならないことを切に願う。