ブラック企業の裏には | 秋山のブログ

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ブラック企業という言葉が流行っている。労働基準法を無視して従業員を働かせたり、従業員の権利を無視して解雇したり、時間外賃金を払わなかったりするトンデモない企業のことを指す言葉だ。まったくけしからん話なのだが、法律を改悪してそれらを容認するような動きすらある。ということで、ちょっと考察してみる。

企業は社会にとって重要な存在である。だからといって何でも自由にしていいわけではない。放置していても企業が競争して自然に労働問題がうまいようにいくなどということは決してなく、むしろ真逆であることは歴史が証明している。そして労働者の権利を守る規制は、それなりに成果をあげてきたことも確かである。

労基法のような規制を撤廃することは、労働者から搾取しようという意識が高い企業には都合がいい。より搾取した分が企業の増益になるだろう。ここで昨今見かける誤りは、企業が利益を上げるので景気がよくなって皆の利益になるという考えだ。これはトリクルダウンの亜型である。
世の中全体にとって上がって嬉しい企業の利益は、従業員給与を払う前の企業の売上げのことであって、企業の黒字ではない。配当等に比べて消費性向の高い従業員の賃金が少なくなれば、世の中の需要が減るために全体のパイは縮小する。逆に、賃金の上昇、消費の上昇、売上げの上昇が連鎖すれば、全体のパイは拡大していく(これが成長だ)。
株価の上昇を過大評価するという誤りもある。株価は配当が特に強い要因であるので、企業の黒字こそ大事ということになる。だからそれを指標に政策決定するならば、前述の通り成長を抑制する政策を取ることになる。(株価上昇の経済に対するよい効果は限局的なものだ。最近の外国からの金融投資による株価上昇を喜ぶなどというのは全くのナンセンスである)

つまり規制緩和を考える際には、それによって全体のパイが本当に増えるかどうか考えればよい。そしてパイを規定する最大の要因は、供給力の心配の乏しい現代では、圧倒的に需要だ。そう考えれば、企業減税(インセンティブがいくら増えても需要がなければ起業はできない)や、資本の移動の自由化などは、(需要を減らす等の犠牲を払ってまでは)推進する価値が全くないことが分る。解雇制限の撤廃など愚の骨頂だ。

そうはいうものの、例えば中小企業など、それではやっていけない。ブラック企業にならざるを得ない。労働の規制緩和が必要だ。といった話もあるだろう。しかしそれは本当の原因と、本来すべき対処が見えていないための誤りだ。中小企業の問題は、中小企業が本来受け取るべき報酬を得ていないということだ。中小企業は大企業から、その力関係による搾取を受けている。
では、大企業のそれらの行為に厳しくすべきかと言えば、半分しか正解でない。時には大企業も結構苦しいのだ。つまり大企業から本来得るべき利益以上の利益を得ているものがいる。それは、銀行業不当に高い配当を求める投機家である。
既に述べてきたように、成長率を超える金利や配当は、本来成り立たないものだ。撤退をちらつかせて脅したり、例えば最近では西武の例のように企業の短期的な運営を強要したり、そんなことをして勝ち取った高すぎる利息や配当が、要するに原因である。(高すぎる利息は企業を内部留保に向かわせるという効果もあるだろう)
自由な資本の移動や、金融業を規制しないことは、理論上(正しく考えれば)も実証上も誤りである。つまりウォール街を占拠せよという運動は正しい。(白状すると当初この運動に私は懐疑的であった。しかし参加者のスローガンを見れば、彼らの中にしっかりと理解している人間がいるのが分る)