医療費削減どうすればいい? | 秋山のブログ

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今回もTVで見た話題について。医療費削減の方法をパネラーに問うという話が出ていた。これに関して書こうと思う。

 

最初からちゃぶ台返しだが、削減の必要がそもそもないということを説明しよう。

 

前回と同様、経済の発達から考えてみる。簡単なように10人の村で考える。

10人の住民且つ労働者がいて、一人が一人分の食料を生産していた。

ところが生産技術が上がって、一人で二人分の食料を生産できるようになったとする。

すると食料のために働くのは5人となり、残りの5人は別の何かを作って食料と交換することになる。

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     下矢印

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りんごりんごりんごりんごりんご TシャツTシャツTシャツTシャツTシャツ(下の段を交換する)

これが経済成長だ。GDPで考えるなら、この村のGDPは2倍になったということだ。

 

大凡このように経済は発達していくものであるが、現代だとそう単純ではない問題がある。次の生産物が見つからないという問題だ。高度成長期であれば、TVが欲しい、冷蔵庫が欲しい、洗濯機が欲しいなどと欲しいものが容易に見つかった。しかし今の時代問われてもなかなか答えられないのではないだろうか。

そんな中で、増やすことができるものが医療である。高齢化なのだから当然需要は増えているのだ。余剰のある分野から人を移動させ、供給することによってGDPは大いに増加する。その費用をケチればその分だけGDPは増加しないということになる。

 

上記のような生産能力の向上は、知識、技術の進歩によって起こる。しかし生産能力が向上しても成長に繋がらない場合も少なくない。例えば2倍生産できるようになってそれを売っても、内部留保されるなどして、賃金に反映されなかったらどうなるだろうか。消費者が別のなにかを買うことができないため新しいなにかを作る産業は生まれず、GDPも増加しない。そしてこれが現在の日本の状況である。

すなわち多くモノを生産しても、賃金に反映されなければ、失業や低賃金のワークシェアリングを招くだけで新しい需要を生み出さない。上前をはねているものから回収してこなければ、当然そのための財源は出てこないことになるだろう。高度成長期において経済がうまく回っていたのは、生産能力の向上が賃金に反映されていたからであって、人口の増減は何の影響ももたらしていないし、もたらさない。

昔よりも上前をはねられている(レントシーキングされている)ということは、ピケティによっても証明された事実(資本の取り分が労働の取り分より大きくなっている)である。低いインフレ率、高い金利・配当、労働運動の抑制、配当や高所得層に対する税の引き下げ(これは再分配に関係する)等々、新古典派経済学の勧めで導入された政策によって実現したものだ。人々の生活がそれ(トリクルダウンなど実にバカバカしい)によって豊かになるという話は、完全に真逆の結果に終わった。

 

医療のための財源がないという理由も、この話に密接に結びついている。増やすべき次の産業、この場合医療介護のための財源は、既存の産業の人々の収入から供給される。しかしそれらの人々は搾取され、賃金を下げられ、払う余力を失っているということである。搾取された状況からさらに多くとる、例えば消費税で財源を確保するなどと言えば、無理に決まっているであろう(景気をますます悪化させる)。解決法は、搾取しているところから取るか、搾取を減らし国民特に低中所得層の収入を増やすかということになる。

ピケティは資産課税を提唱したが、資本家層から取る手段がインフレ税であり、財政赤字を出して社会保障を十分給付することにより、インフレを起こすことが賢明だ。財政赤字による公共投資も一つの手段である(社会インフラが整備されたり実地訓練になったりすることによる生産能力の向上というメリットもある)が、使ったお金のそれなりの部分が搾取もされるので、社会保障と比べて効率が悪いだろう。

法人税や配当等に対する増税をして財源とするのももちろん正しい。法人税減税が経済によい効果を示す(増税が悪影響を与える)ためには条件があり、それは日本の場合には当てはまらない

 

以上のように医療費の削減は必要ないが、メスを入れるべき点がないわけではない。

 

番組で取り上げられていた話だが、医療機器の価格の問題がある。これには経済学的な視点が役に立つだろう。医療機器の価格が極力隠されている状況は、情報の非対称を利用している例だ。これに対しては情報の整理、場合によっては開示するような法律、システムを作るなどする必要があるだろう。

また、最近話題になっているのが、一部の極端に高額な薬の価格である。製薬業は参入するためのコストは極めて高く、特許によっても保護されているので、市場機能が働きにくい。命に係るものでもあるので、極端に高い価格によって莫大な利益を得ることも可能である。(価格の上昇には、このように市場機能がうまく働かないことによるものがあり、修正する必要がある。余談だが、この話はインフレでも同様で、インフレも原因次第ではその原因に応じた対応が必要である)

日本において医療機関は日本の健康保険システムによる統制を受けることによって、市場機能が働かない要因が多い医療の問題を克服し、世界一のパフォーマンスを発揮してきた。製薬企業等もある程度制度の影響を受けているが、メリットは享受しているものの医療機関ほどデメリットを受け入れてはいない。民業を圧迫すべきでないとか民間に出来る限り任せるべきという主張は、市場の失敗を考慮しておらず、信仰以外の何ものでもない。製薬企業等も医療機関と同様、利益の無制限の追求は許されるべきではないのだ。規制なり、介入なりを考えるべきだろう。(医療のシステムや、薬の問題に関しては以前書いたものを参照されたい)