もしもフランスがEUを離脱したら | 秋山のブログ

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フランスの大統領選挙は、EU離脱を訴える二人の候補が破れ、フランスのEU離脱は遠のいた。これをよい結果のように評価し、もしフランスが離脱するならばフランス国民は経済的にたいへんな損害を被っていたなどと主張するエコノミストがいる。しかし具体的にどのように損害を被るのか書かれたものを見たことはない。本当に彼らの言うことは正しいのだろうか。ちょっと検討してみようと思う。

 

EU結成後ドイツは失業率を下げている一方、フランス等の国は失業率を上げている。工業に優れたドイツに対して競争できずに他の国では多くの国民が職を失った一方、ドイツでは多くの国民が職を得た。失業者が増えた国では、国が産業を育成したり、公務員として雇うことによって、失業に対応するのが正しい政策であるのに、通貨発行権を失い、条約で財政均衡を強いられているEUでは、それも容易にはできない。国民から増税すれば、国民の可処分所得は減少し、有効需要は減り、ますます仕事がなくなることになるだろう。

一方、失業率が高いということは、雇用者である資本家にとっては好ましいことだ。安く雇えるために、取り分が増える。であるならば、そこから税を取るのが正解なのだが、資本の移動の自由がそれを妨げている。

 

ドイツは失業率が低い分かなりマシだが、それでもドイツ国民にとってもEUは幸福ではない。失業率は高くないが、移民や他国の労働者にとってかわられる圧力により、賃金は低く抑えられる。すなわち、輸出で得たお金からもらえる取り分は小さく、自分が生産したモノの量ほど消費もできない。働けど貧乏ということである。GDPと、資本家を除いた国民の厚生の乖離だ。

 

失業率が高い国は、財政均衡主義のために失業者に対して、他の国民が自分の収入を分け与えることになるので、より悲惨な状況だろう。

 

さて離脱した時のことを考えてみよう。

相手国、もしくはEUから関税をかけられることによって輸出産業は販売数を落とすだろう(フランスの輸出依存度は比較的低い)。すぐにはそれが減った分の国内需要は生まれない。しかしこちらも関税をかけることによって産業を育成し、失業者を減らすことができる。失業者が減ることによって、もともと働けていた人の賃金の上昇圧力にもなる。その結果有効需要が増大することによって、需要が回復するだろう。GDPであらわされる変更直後の落ち込みはその後上昇し、結果的に離脱前より上昇するかもしれないし、やはりそれよりは低いかもしれないが、資本家層の不公正な利益が減少する一方、ほとんどの国民の厚生は離脱前より増大しているだろう。直後の落ち込みに対する対応も、財政均衡主義でなければそれほど難しくもない。

 

このように離脱が圧倒的に正しいのである。