売り手市場とブラック企業 | 秋山のブログ

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ブラック企業は日本では離職率を見ればよく分るだろう。(医療系を除けば)転職がマイナスに働く傾向の強い日本では、離職率が高いということは余程のことだ。ワタミの社長が業界の平均よりは離職率が低いと弁解していたが、業界を引っ張る規模の大きな会社がそんな状況なのは決して胸をはれることではないだろう。

さて、ブラック企業が罷り通る原因として、求職難がある。だから求職難の状況が改善され、企業が人を雇う競争をはじめれば、給与も労働環境も改善することは確かだろう。

市場の失敗を認めようとしないフリードマンは、組合活動で勝ち取る労働者の給与や待遇は、企業が競争した結果適正になったそれを上回る不当なものと考えた。
労働者を得るために十分な競争がなされると考えることは、全く現実的ではない。フリードマンの言っていることは信者以外には価値のない与太話だ。それはいいとして、企業が本当に競争状態であればどうなるだろうか。

看護師は相当な売り手市場である。医療の質の向上によって、より多くの看護師が必要になった。看護協会の政治的働きかけもあって、看護師数が医療機関の収入に反映されるようになったこともあり、看護師は取り合いになり、就職先にほとんど困らないほどになった。
その結果給与はそれなりに上がったが、悲惨といわれた労働環境の改善は実はあまり進んでいない。転職先に困らないという要素もあるが、離職率もかなり高い。離職率を見ればワタミを笑えないブラック企業ならぬブラック病院だらけということだ。

これが起こる理由はひとつには、国によって医療費は決定され、価格に転嫁できないため、その範囲内の出費しか許されないということがある。また、病院間で談合などしなくても、今までの習慣や近隣の情報から、談合に近い状況には容易になりうるだろう。そして、看護師は大差ない労働環境の中から就職先を選ばざるをえないということになる。ますます高度化し、それに対応するために日夜努力して維持している専門能力を捨てて一般職につくという選択肢もありえない。

要するに、企業の競争で賃金や労働環境が適正化するなどということは、現実的ではないのだ。フリードマンの主張は、その理屈通りになることもなければ、理屈通りになっても成立しない。労働者を守るためには適切な規制なり、組合活動が不可欠である。