信仰とポピュリズム | 秋山のブログ

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経済に関しては御用記事が多いが、日経ビジネスオンラインは楽しくためになる記事が程よい量あるので、空き時間によく読んで楽しんでいる。

英国のEU離脱は、もちろん世界的な大ニュースであり、特集が組まれている。今回良かったことは、いろいろな見解が取り上げられていたことだろう。

いくつかの記事の中でよいと思われたのは、塚崎公義氏の「英国がEU離脱しても、世界経済への影響は限定的」という記事だ。自由貿易の信仰に騙されずに『過去に「自由貿易協定」が締結された事例を調べてみると、爆発的なメリットが生じたという話は、少なくとも先進国では聞いたことがない。』と現実から判断している。また同時にマイナスが大きいポイントも指摘している。考察はかくあるべきだろう。
(経済と少し離れるが、実情を伝えているという点でこれもよい)

一方最悪なのが、「反EUのポピュリズムが理性に勝った日」だ。
残留する判断を理性的なものと決めつけ、離脱を『右派ポピュリズム勢力への支持』と暴徒のごとくのレッテル貼りをおこない、『欧州の歴史の中で暗黒の日として記憶される』とまで言っている。
現代において右派だ左派だという分類は、役に立たないだろう。むしろそう括ることで、判断を不正確にする。この数世紀人類が学んできたことは、どの思想が正しいといったことではなく、思想が当てにならないということだ。何かの思想を持っていれば、思想を持たない人間より優れているわけではない。現在多くの人間がそのことに気付いている。英国人は、離脱勢力(右派ポピュリズム勢力などと呼んでよいかもあやしいが)を支持したのではなく、離脱を選択したのに過ぎない。
筆者は、自由貿易が素晴らしいという思想を前提に考えている。マイナスとなるだろうポイントを並べているが、それは何ら決定打にはならないだろう。論理的には、若干の関税よりも為替の影響の方が大きいので、輸出において競争力が低下するというのは軽率である。
失われる利点とされている『関税廃止、人と物の自由な移動、自由な資本取引』が利点なのかどうかは疑わしい。需要に限界がある現実の世界では関税による産業の保護は必須であろう。独占や寡占に対抗する意味でも自国に産業がある必要もある。人の自由な移動は、全体として求人難の世界であれば、労働条件を向上させるが、全体として失業が多いならば、労働条件を悪化させる。労働者の権利を確保するために必須な組合活動などができにくくなるマイナスもあるだろう。自由な資本取引に関して言えば、金融関係者がもっとも重要視すべきものと喧伝しているので、人々のためになるように思い込まされている人間も少なく無いと思うが、それは全く証明されていないものである。そしてほとんどの国民、労働者にとってむしろマイナスに働いてきたものである。
結局残留するという考えは、どこも理性的ではないのだ。資本家層が、ほとんどの国民から搾取するために喧伝しているグローバリズムを鵜呑みにしているだけである。多くの国民は、経済に関する理論など分からないかもしれない。しかし現実を比較することはできる。EUを離脱しようという人間の多くが、EU以前を知っている層だというのも証拠の一つだろう。グローバリズムの嘘を信じていない人間が勝利したことをポピュリズムだと揶揄するのは、カルト信者が普通の人々を無知扱いしている構図と何ら変わりわない。

しかし、本当に庶民は分かっていないのだろうか。
英国では、マスコミによる離脱反対の大キャンペーンがおこなわれていたと聞く。それによって大きく動いた世論調査も、数カ月後には元に戻っていたとも聞く。マスコミで誤った情報を刷り込もうと思っても、庶民はその構造を既に理解しているのではないだろうか。
日経BPの多くの記事を読んでもらえば分かると思うが、御用学者による御用記事や、偏った思想に歪んでいる記事には評価は集まらない。客観的であること、情報として価値があることに重きが置かれているように、コメントを見ていれば感じる。知的好奇心が高い層は、現在かなり理解するようになっているのかもしれない。