既得権益と参入障壁 | 秋山のブログ

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規制緩和こそ正しいという安直な主張には、既得権益を排除することこそ全体の利益に繋がるという話がついてくる。確かに多くの莫大な財産を築いた人物は、政府等から大きな権利をもらってそれを利用して利益を得ていた。それを無くすことは、公正な競争という意味では正しいように思われる。特にその権利が世襲で受け継がれるものであれば尚更だろう。しかしこれで終わりでは騙されたままなのでもう少し掘り下げるとしよう。

既得権で何故大きな利益を得ることができるかといえば、参入が抑制されるために独占、寡占の状態になり、高い価格を設定できるからだ。逆に言えば、高い価格が設定できなければそれを既得権と言って規制する必要はないだろう。医業を既得権扱いする人間もいるが、価格を極めて安く設定されている医師からは、(大昔はともかく現在は)どこにそんなものがあるのかという話しか出てこないだろう。株式会社の医療への参加の是非が以前から議論されているが、価格の自由化がない状態での参加はほとんど儲けに繋がらないだろう。医師等が経営の素人で、一般企業の経営者が経営に当たれば何倍もの生産性を得られるなんていうのは、単なる思い込みだ。介護事業に進出したワタミだって私の近所の介護施設より(従業員数から考えて)大きな売上げをあげているわけではない(しかも儲けのない部門はコムスンから受け継いでいない。グッドウィル売上げ800億、ワタミ売上げ145億)。

オリックスの宮内社長は、混合診療推進で知られているが、独占寡占で高利益を得られる自由診療と、それと同時に独占性が高い保険業で、利益を得ようとしていると思われる。いかに高利益をあげるかという観点からみればまあ当然のことではある。
既得権は参入障壁のひとつであるが、参入障壁はオープンにされていない技術だったり、最初に資本投下が必要だったり(知識は全ての人が等しく持っていて常に手ぶらで誰でも新規参入できるという経済学のありえない設定とは真逆で)、常に存在して独占寡占のもとになっていると言っていいだろう。
規制によって独占寡占の過剰利益を抑制している状況に、規制を撤廃して、別の方法を使って過剰利益を得ようとしているものを参入させる意味はまったくない。

大事なのは独占等により暴利を貪っているものを見つけてそれを規制することだ。そのためには既得権を解体することもあれば、逆に既得権になりうるものを割り当てた上でコントロールするという方法もありえる。既得権という言葉に騙されずに、構造をしっかり理解して、できる限りの最善の方法をとるべきであろう。