経済と裁判 | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

ISD条項で、企業が国を訴える問題を指摘された時に、推進派がする話は二つ。勝訴率は高くないという話と、日本の企業が他の国に行ってやられるのを防ぐのに役立つという話の二つだ。

市場はほぼ常に不完全であり、独占や情報の非対称等々はあるので、企業が市場の失敗によって世間に提供した以上の利益をむさぼる可能性はある。それに対して当然国の出番となるはずだが、それを抑制しようというのだから全く正しくない話だ。

こんな例え話をすれば分り易いと思う。
米問屋のシカゴ屋が、米を買い占めた。その独占的立場を利用して、米の価格を釣り上げ、庶民には高い値段で売りつけ、莫大な利益を得た。
それに対して、お役人が入って、値段を下げさせたところ、減った利益を賠償しろと訴えた。
もしくは、国が安く米を放出したために、利益が減った、民業圧迫だ、賠償しろと訴えた。
そんなところだろう。

訴えられても勝てればよいという考えはどうかしている。対応に莫大なコストもかかるが、勝ってもそれが戻ってくるわけではない。十分負ける可能性もある(というか、前述の例は多くの場合条件の変更は許されない等の理由で負けるだろう)。これがあるだけで、国の介入防止につながる。つまり暴利を防ぐ手段(市場を公正にするものすら)の放棄に他ならない。
その他には、時間の問題もあるだろう。経済活動は時間が命のところがあるが、原告性善説(話は外れるが、医療裁判でもこれが相当悩ましい)に則った賠償責任のない嫌がらせもできる。

もちろん暴利をむさぼっているわけではないのに、企業が国にやられる可能性もある。しかしこれは現参加予定国に関しては、もともとほとんどない懸念だろう。そしてそれをやりそうな国なら、絶対に批准しない内容だ。

米国は日本に自分の作った新薬を高く買えと迫っている。薬は命に関わるものであり、また独占的な状況になりやすい。日本は公定価格で薬の価格を抑えているのである(それでも高すぎると思われるものも多い)。労働における組合よろしく、国は弱い立場である患者という消費者の代表として交渉していると言ってもいいかもしれない。
米国は皆保険制度を潰す意図はないという。薬で搾取できればそれでいいということなのだろう。実際韓国(日本に似たシステム)はひどいことになったらしい。