中央銀行と政府 | 秋山のブログ

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まことしやかに語られている嘘がある。中央銀行は政府から独立しているべきであるという意見である。

『先進国の中央銀行なら当たり前』などという主張があるが、何故そうなのかということがはっきりしなければ、意味は無い。

日銀が主張してきたように、日銀だけで景気をよい状態にすることはできない。財政政策や税制、さまざまな制度によって経済は調整される必要がある。一方、中央銀行が失策をおこなえば、それは直ちに経済に悪影響を及ぼす。日銀のいくつかの失敗は、景気を悪化させた要因として間違いではないだろう。中央銀行と政府が強調して、景気対策をおこなうことはむしろ当たり前のことであろう。

Wikiの中央銀行の独立性の項を見れば、政府の要請による金融緩和等の政策によって『最終的にインフレとそれに伴う資産の再分配(インフレリスク)及び潜在成長力を損なう可能性がある』とあるが、資産の再分配は努めておこなうべきことであり(有効需要が増加する)、それによって潜在成長率が損なわれることもない(可能性があるとしばしば表現されるのは、現実において全く実証できないからだ。それは、生産関数という間違ったモデルを信じるならば、損なうことになるはずであるという話に過ぎない)。

政府は、選挙民の意見に左右されるため、それに銀行が従えば、短絡的な政策が取られるので、中央銀行は独立であるべきだというのは、全く国民を馬鹿にした意見だろう。一部の人間に有利な偏った政策がおこなわれるのであれば、選挙というオープンな制度のもとで遠からず修正されるであろう。失敗を多々繰り返したとしても、散々間違えておきながら、それが修正されない現在のシステムより数倍ましである(実際に間違った理論に則り、大きな失敗をいくつもしている)。
1998年に施行された新日銀法は、政府がおこなった愚策の一つである。この改悪に関与した官僚は糾弾されてしかるべきだろう。

中央銀行(日本銀行)の役割に関しては、間違った理解が蔓延しています。中央銀行の役割は物価の安定であるという考えがありますが、経済を悪化させて、物価を安定させるならば本末転倒です。中央銀行の役割は、政府と協力し経済を健全に保つことです。

金融資産を持つ資産家にとって、インフレはもっとも好ましくないものです。インフレは資産を目減りさせるもので、あたかも税のように働き、格差を縮小します。格差は有効需要を減少させ不況の原因となるため、ある程度のインフレは望ましいものです。不況対策を取られると困る資産家によって、様々な嘘が喧伝されましたが、この中央銀行の役割が物価の安定であるという話もその一つです。中央銀行が物価だけを見ているならば、高い金利によってインフレを抑制することになり、資産家(及びその運用者、証券会社等々)はより高い利息を得ることができるために二重に利益を得ることになります。

金融資産が目減りすると、成長を阻害するというのも、嘘の一つです。生産性を向上させる投資とは設備投資のことであって、金融資産のことではありません。さらに設備投資の資金は必要であれば、銀行の信用創造機能によりほぼ無限に供給できるものです。すなわち、設備投資と貨幣の投資を混同させるというイカサマだということです。

中央銀行の独立性が重要だという考えも間違っています。選挙で選ばれた議員は、大衆に迎合した政策を取るので、財政事情によっては日銀から借金して事業をおこなう誘惑にかられるからとされています。しかしそれが何か悪いことのように思えるのは、国家と家計を混同しているからです。また、大衆に迎合という(もしくはそれに類する)表現は、国民を馬鹿にするもの以外の何ものでもありません。
多くの国民にとって、物価はある程度上昇することが好ましいことです。経済を理解すれば自ずとその結論に達し、そのように政府や中央銀行が行動することを求めるはずです。経済を理解していなくても、一般的な国民は、国に事業を求めたり、社会保障等への支出を自然に求めます。基本的に再分配されなければ豊かな生活をおくれない状況にあるからです。中央銀行の独立性という全く価値のない概念が、特に先進国で常識化していることにはこのような背景があります。


●インフレは残酷?

貯めてきた貯金が目減りするので、インフレは残酷だという極めて情緒的な主張を見ることがあります。老人等が貯めてきた貯金、積み立ててきた年金が目減りすることを非難したりしています。しかしこれは全くナンセンスな意見で、高齢者世帯の貯蓄が減っていく形にならなければ、(誰かが貯蓄するためには誰かが借金をする必要があるので)勤労世代が貯蓄することは不可能になります。
何より問題なのは、この話の影に、大きな金融資産を持つ資産家が隠れているということです。インフレにつながる財政政策は、一般的な勤労者世帯、高齢者世帯の厚生を増大させるもので、資産家が目減りさせた資産がその代金です。それを防ぎたいために、様々な嘘が流されていることに気付かなくてはいけません。

●インフレと賃金

インフレと景気を考える時は、賃金の上昇率もセットで考えなくてはいけません。インフレは可処分所得を減らしますが、賃金が同等に上昇すればその問題はなくなります。ところが一部の経済学の本には、インフレ率のほうが賃金の上昇率より大きくなるからインフレはよくないといった表記がありました。実体経済における貨幣の循環を考えれば、人々が消費するモノの量が同等、または増えているならば、賃金の上昇率以上にモノの価格が上がることは不可能です。実際のデータを見れば、インフレ率の高かった日本では常に賃金の上昇率の方が高かったのが分かります。これが逆転しているのは、不況にある最近の話です。

●インフレと金利の嘘

インフレがおこるとそれに比例して利率が上がるという話も嘘です。インフレがおこれば、それによって社会がより高い利率に耐えられるようになるため、利率を上げる方向に圧力がかかるでしょう。また、インフレ率と利率に相関があるのも確かです。しかしながらそれはインフレ率が上がれば、金利が上がるということと等しいわけではありません。高い金利が価格に上乗せされるという経路も十分考えられます。また、インフレ率が変わる前の、利率が適切な値だったかどうかも分かりません。利率はその時々の状況に応じて、中央銀行が制御すべきものです。