移民に関しての答え | 秋山のブログ

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先日日経新聞を読んでいたら、移民を推奨している記事があった。人口減少にともなう労働力不足が問題なのだという考えである。経済を司る大新聞社が経済に関して間違った理解をばらまくのはどうかと思った(こういう間違いをいちいち批判訂正していくことが重要なのではないかと最近考えている)が、ネット上で直接引用できないので、似たような趣旨の記事を探してみたところ、オリックスの宮内義彦氏が1年ほど前に書いた記事を見つけたのでそれを題材にしてみたいと思う。

宮内氏は少子化による人口減少のため働き手が足りないと決め付けている。確かに世の中を見渡せば、熟練工が足りないとか、人が足りないので、以前より女性や老人が働きに出ているという現実もある。単純に考えれば人手不足が少子化のためにおこったのだろうと勘違いもするだろう。しかし、それが違うことは、注意深く考えてみればすぐわかると思われる。
以前一人当りの生産性の推移から人手不足などないことを論じたことがある。熟練工不足に関しては、その業務の需要が減っていた≒その業務にお金がまわされなかったために、熟練工を養えず熟練工が減ってしまっていたことと、需要が改善してもすぐには熟練工は作れないことを説明した。このような状況なら失業が巷にあふれていても、求人倍率は1倍を超えるだろう。
女性の利用に関しては、女性は足りない労働を補ったわけではない。労働者の賃金が生活費に比べて低くなっていたところで、主婦が働きにでなければまともに生活できなくなったために多くの主婦は働きに出た。例えば子供を預けるためにかなりのお金がかかるならば、それは主婦労働を賃金がある形に置き換えたのに過ぎない(女性が働くべきでないという意味では全くない)。国民のほとんどに対してのレントシーキングが大きくなった結果なのだ(国民の生活が贅沢になったせいなどと主張するものもいるが誤りだ)。

宮内氏は、安い労働力と高度な労働力の二つを分けて考えている。

経営者はできる限り賃金を安くしようとする。為替のおかげで得られる安い賃金の労働力は利益を増やすためには好ましいものだ。コンビニなど、安い外国人労働者がいないと成り立たないなどと言っているが、これは競争している周囲もやっているからに他ならない。安い外国人がいなければいないで、高い日本人を使っても、利益を縮小するか、価格に上乗せすればいいだけで問題にはならないだろう。外国人全面禁止なら周囲のライバルだってやれないのだ。
外国人が安い労働力なのは、為替のおかげだけではなくて、労働を買い手市場に出切るということも大きい。より余るのだから、より低くなる。そこで職を得る日本人も安い賃金で職を得なくてはいけなくなるだろう。現在主流派のおかしな経済学は需要をほとんど考慮しない体系になっていて、賃金が需要の源であるという事実を考慮すらできないようになっているが、経済の発展過程や過去の恐慌を観察すれば、実際は賃金の低下こそが不況の原因であることは明白である。するとこの後進国からの単純労働者の移民はまさに不況を引き起こすための政策ということになるだろう。

高度な労働力は、来てくれるならばそれはたいへんありがたいことである。しかし宮内氏の言っていることが正しいかと言えば、それは違う。言葉は悪いが、この人材争奪戦は泥棒根性丸出しのみっともない行為だ。
個人の素晴らしい成果は、どこまでがその個人自身の手柄であるか明確に示すことはできない。天才は必然的に何かを成し遂げられるというわけではなく、必ず周囲からの働きかけ、教育だったり、蓄積されたノウハウの継承だったりを受けた結果である。ソ連の科学者をいただくということは、その科学者に対してソ連がおこなってきた投資を、掠め取ったということに他ならないだろう。すべきことは自国民への教育の充実である。最高の栄誉であるノーベル賞受賞者は知能という面においては特別な能力者ではない。継続する強い意志(これが大変)と周りのサポートがあれば、かなりの割合の日本人がそのレベルに達することができるだろう。

治安等の問題をあげて、それさえクリアできれば移民はよいことのように考えている人がいるかもしれないが、根本的にも目先の利益しか考えない愚かな意見である。もちろん、輸出入、国際交流や海外支援を否定するものではない。これらは日本を豊かにしてくれるだろう。