自分を低めて、補語を高める謙譲語I「ご紹介します」
謙譲語Iは補語を高める
謙譲語Iは、主語(主に自分や身内)を低めて、動作の向かう先である補語を高めるものです。
(*補語とは何か? 疑問がある場合は、こちらの記事で述べています)
もちろん、自分側を低めることが目的ではありません。
それによって、補語を高めることが目的です。
次の文は「紹介する」の謙譲語「ご紹介する」を使った例文です。
このうち、正しく補語を高めている使い方はどれでしょうか。
A (私は)先生に兄をご紹介しました。
B (私は)兄を先生にご紹介しました。
C (私は)兄に先生をご紹介しました。
D (私は)先生を兄にご紹介しました。
A・Bが正しい使い方です。どちらも「先生にご紹介した」という意味で、補語である先生を高めています。
しかし、C・Dは間違いです。
C・Dはどちらも「兄に(先生を)ご紹介しました」という意味になってしまい、兄を高めてしまっているためです、
A (私は)先生に兄をご紹介しました。(○)
B (私は)兄を先生にご紹介しました。(○)
C (私は)兄に先生をご紹介しました。(×)
D (私は)先生を兄にご紹介しました。(×)
「補語」とは何か
特に敬語を理解するには、この「補語」がポイントです。
英文法におけるSVCやSVOCのCにあたります。

「補語」についてはこちらの記事でも詳しく書いているのでご覧ください。
「ご紹介していただけますか」は間違い
時々この謙譲語Iを相手に使っている例を見かけます。
- 「(私に、あなたが)担当者をご紹介していただけますか」
- 「(私に、あなたが)その店をご案内していただけますか」
- 「(あなたは)ポイントカードをご利用されますか」
「あなた」をへりくだらせてしまっているわけで、現在の敬語の規範的には誤りです。
- 「担当者をご紹介
していただけますか」(「して」を取る) - 「その店をご案内
していただけますか」(「して」を取る) - 「ポイントカードを
ご利用されますか」(「ご」を取る)
「して」を抜いた「ご紹介いただけますか」なら、自分をへりくだった謙譲表現です。
「ご」を抜いた「利用されますか」なら、相手を高めた尊敬表現です。
------
『その敬語、盛りすぎです!』は、全国の本屋さんでお求めください。
青春新書インテリジェンスシリーズのコーナーに置かれています。
オンラインの本屋さん e-hon ではこちら
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000034645382&Action_id=121&Sza_id=C0

