116分

この邦題はトンチンカンだし主題はそこじゃない…。
原題は「俺は薬師(やくし)様じゃない」。なお英題は「Dying to Survive」で「生き抜くために死ぬ」。
――インド製強壮剤の店を営む程勇。しかし店は開店休業状態で妻とは協議離婚中、一人息子の親権も取られてしまいそうだ。老いた父はほぼ寝たきりで介護施設に入所しておりその料金の支払いもままならない。
ある日店にマスクを三重につけた男がやってきた。そしてインドからある薬を輸入して売ってほしいと言う。彼は慢性白血病で毎日抗癌剤を飲まなければならないのだが、その薬は恐ろしく高い。しかしインドへ行けば同じ薬が1/20の価格で手に入るのだ!
しかし程勇が販売しているのは免許のいらない保健薬だ、医療用医薬品を販売することはできない、程勇は無理だと断る。
そんな折、父が脳梗塞を発症し多大な医療費が発生し程勇は頭を抱える。その時思い出したのがインドから薬を輸入する話だ。程勇はすぐにあの白血病の男・呂受益に連絡する――
[ここからネタバレ----
程勇はインドへ飛び、呂受益の言っていた薬をとりあえず100個購入して船で密輸した。インドの製造元はこれを売り切ったら正規代理店として認めようと言う。呂受益は白血病仲間のチャットグループで有名なポールダンサーの劉思慧を通じて購買者を募った。すると多くの白血病者やその家族が集まり、あっという間に100個売り切った。
正規代理店の指定を受けた程勇は本腰入れて薬の輸入販売を始める。販路は口コミだけだったが薬は飛ぶように売れた。あっという間に大金持ちになった程勇は父の手術代も支払うことができた。程勇から薬を安く買うことができた患者らは皆彼に感謝し命の恩人、薬師様だと拝み、彼を讃える旗を何本も贈った。
程勇の離婚協議中の妻には曹斌という弟がおり刑事だった。ある日警察にスイスの製薬会社ノーワの顧問弁護士がやって来た。ノーワの主力製品である抗癌剤グリニックの偽物がインドで製造され最近上海にも出回っているようだと相談する。曹斌が現物を入手して調べさせると、中身は偽薬ではなく本当に効果のあるコピー薬だった。ただそれがとにかく安いというだけで。しかし医療指示書もなく販売できるというならやはりそれはニセモノと言わざるを得ないのだろう。
ナノメータという商社がドイツ製のグリニックを販売すると宣伝する。グリニックは一つ4万元するがナノメータ社の製品は3千元で売り出すと言う。程勇が販売しているインドのコピー商品は5千元で販売している…患者はナノメータ社に殺到した。インドでも2千元なのにそれでは絶対に儲けが出ない、それは偽薬に違いない!憤った程勇と仲間らはそんな薬はニセモノだと叫んで乱闘騒ぎを起こした。
後日真夜中にナノメータ社社長・張長林がやって来た。張長林は程勇がインドからグリニックのコピー商品を仕入れていると知り、その販路を譲ってくれともちかける。どうせこのまま販売を続けていてもすぐに当局にばれて禁固10年から20年の刑に処されるぞと脅す。
翌日、店に警察がやってきた。偽薬販売の疑いで店を捜索されたが、直前に張長林から連絡があったため商品を外に運び出しており捕まりはしなかった。だが程勇は薬の販売からは手を引こうと決心する。今まで一緒にやって来た白血病の仲間らは販路をあの胡散臭い張長林に譲ると聞いて猛反対するが程勇の決意は固い。仲間は一人また一人と彼の元を去っていった。
一年後。程勇はアパレルの小さな工場の工場長になっていた。その彼の元に呂受益の妻がやってきた。そしてインドのグリニックは手に入らないかと問う。ナノメータ商社がコピー商品を売っていることが警察にばれて差し押さえられ張長林は行方をくらましたのだ。実は張長林は薬の価格を2万元にまで吊り上げていたため患者らの中に彼を擁護しようという者は一人もいなかったのだ。だが薬を手に入れることができなくなったため呂受益は生きる道を絶たれたと悲観し手首を切りまでしたと妻は訴える。
翌日程勇が呂受益の見舞いに行くと、彼はより一層痩せて青白い顔で力ない笑顔を見せた。その夜、呂受益はトイレで首を吊ったのだった…。
呂受益の弔問には驚くほど沢山の白血病仲間がやって来ていた。程勇には彼らの視線が自分を責めているようで辛い。あの時薬の販売を止めていなければ呂受益は死なずに済んだのかもしれない、そしてここに集う大勢の患者らも…。
程勇はインドへ飛び、再び薬を輸入し販売することに。ただ今度は規模を小さく、以前買ってくれていた人に限定し、価格はなんと500元にした。
張長林の行方が依然不明なことに業を煮やした警察はインド薬を所持していた患者らを連行した。だが彼らはどこから薬を手に入れたのかを一切話さなかった。患者の一人は曹斌に言う。私は三年間正規の薬を、一つ4万元の薬を飲んでましたが、おかげで今は全ての財産を失いました、この薬を売ってくれる人は一つたったの500元…彼は金もうけがしたいわけじゃないんです、もしあなたが彼を捕まえたら私たちは全員死ぬしかないんです、私はまだ生きたいんです、と…。
ある夜、程勇の乗った車の窓を叩く男が。張長林だった。彼は程勇が500元で薬をこっそり流していることを知っており、いくら義侠心から患者らを救おうとしても薬では絶対に治せない病気があると言う。それは「貧困」という病だ…。
程勇は張長林に30万元の逃走資金を与え逃がす。だが間もなく張長林はホテルにいるところを突き止められ逮捕された。警察は取調室で張長林に誰から薬を仕入れたかと厳しく追及するが、張長林は自分は誰も傷つけてない、むしろ白血病患者を何百人と救ったのになぜ責められるんだろうと笑う。
程勇と白血病仲間の彭浩は夜中に港のコンテナから薬を運び出していたが、彭浩はトイレに行った時に港の警備員が警察と話しているのを目撃した。偽薬の捜査で来ていたのだ!彭浩は戻って来ると何も言わず薬を積み終えた軽トラに乗り込むと程勇を置いて走り出した!その後を曹斌の覆面パトカーが追跡する。その様子を目にした程勇は茫然とする。
港はすでに警察に包囲されていたが彭浩の軽トラはその包囲網を強引に突破した。だがその直後の交差点で大型トラックと衝突した。病院にかけつけた程勇は曹斌から彭浩が死んだことを聞かされ激高しつかみかかる「あいつはまだ20歳なのに…あいつは、あいつがもっと生きたいと思う事は罪なのか!?」
インドの製薬工場がノーワ社に訴えられたため操業停止となった。薬はかろうじて市場に出回っている分を回してもらえそうだが仕入れ値が1つ2千元と跳ね上がる。だが程勇はその価格で仕入れ、売価は今まで通り500元だと断言する。そして夜中に薬を運ぶが、ついに警察に見つかり程勇は逮捕されてしまった。
裁判が終わり程勇を乗せた車は裁判所からゆっくりと出て行く。ふと見ると道の両脇には多くの、本当に多くの白血病患者とその家族らが並んで見送ってくれていた。その人波の中には呂受益や彭浩の姿もあるように、彼らの笑顔があるように見えた…。
程勇は法に反して医薬品の無許可販売を行ったが、多くの白血病患者を救ったことで酌量され禁固五年の刑が言い渡された。この事件は大きな波紋を呼び、政府は医薬品制度の改革に着手し程勇は特例で禁固三年に減刑となった。(終)----ここまで]
コメディと書いてあったのでコメディなんだと思って見てたら全然…真面目な、とっても社会派な、良い映画でした。意図的に笑わせようという演出は一切なく、ただ前半は何かとやんわりとしたちょっと笑えるような雰囲気で進むので物語に入り込みやすい。また展開がとても速く、でも必要最小限の情報を的確に詰め込み表現しててすごい計算だなと思う脚本。
2015年、陸勇という男が白血病になり、薬があまりに高いのでインドのジェネリック製品を個人輸入して服用していたが、仲間らに頼まれて彼らの分も輸入し販売しはじめたことから逮捕されたという「陸勇事件」を元にした物語。命に関わる薬が高すぎて貧乏人には手が届かないという問題を浮き彫りにしたなかなか社会派な映画。日本では皆保険制度と手厚い公費制度のせいで一般人にはこの問題は目隠しされているけど臨床の場では非常に問題になっている。(近年のオプジーボ問題がこの一角。)日本人も見るべき映画。
ただこの映画では患者側からの視点のみで、本当は製薬会社にも言い分があるんだけどそこもちょっとは描くべきだったんじゃないかと。
キャストがあんまり見栄えしないけどみんな役に合った"普通の人っぷり"が良い。冴えないおっちゃんな主人公・程勇が最初はただの商売として、とりあえず金が必要だからと始めた輸入販売。彼の意識が周囲の変化によって少しずつ変わっていく過程…とても格好良く見えて来るし共感できる"普通の人"っぷり。演じるのはベテラン俳優シュー・ジェン(徐峥)。「猟毒人」の呉雄を演ってた人と知ってマジで?と二度見。
呂受益を演じるエリック・ワン(王傳君)なんかとってもキモくて印象的だったけど、実は若くてイケメンなのね、化けてる化けてる。
キャスティングにしてもお芝居にしても格好つけてないところがこの作品の説得力を上げてると思う。良い映画。もっと広く見てもらうべき。

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