麻煩家族 | あさひのブログ
山田洋二監督の「家族はつらいよ」の中国版リメイク作品。

「麻煩家族」(2017年 監督/黄磊 主演/李立群)
104分


麻煩は大変な、面倒な、厄介な、の意味。

――文錦輝は仕事も引退し毎日友人とバドミントンしたり酒を飲みに行ったり麻雀を打ったり気ままに暮らしている。家は長男の嫁の丁雁が家事を切り盛りし小学生の孫二人がいる。
ある日またいつものように気持ちよく酔っぱらって帰って来ると部屋に綺麗な花が活けてある。妻の潘素に訊くと、彼女が通っている小説創作サークルで誕生日祝いに貰ったのだと皮肉交じりに言われた。妻の誕生日をすっかり忘れてた文錦輝は明日なんでも好きなものをやろうと言い繕うと、潘素は一枚の紙を取り出した。それは離婚届け。ここにサインしたものが欲しいと…。――

[ここからネタバレ-----
茫然として翌朝を迎えた文錦輝だが、そこへ既に嫁に行った娘の文静がパジャマ姿でやってきて夫と離婚すると騒ぎ立てる。彼女はしょっちゅう夫の馮万力と喧嘩しては離婚すると騒いでいるのだ。間もなく馮万力もパジャマ姿で妻を迎えにやってきたが文静は怒って二階から降りてこない。
馮万力は文錦輝を連れ出して必死に自分に落ち度がないことを説明する。しかし喧嘩の内容があまりにしょうもないために文錦輝はもう離婚してしまえと言う。おれだって離婚を突きつけられてんだ、と。馮万力は唖然とする。

馮万力から話を聞いた文静は真っ青に。しかしなぜ母は突然父と離婚したいなどと言い出したのだろうか…。すると馮万力が言う、先ほど義父と話するために入ったカフェ&バーのママさんがグラマー美女で、お義父さんは彼女と親しげだった、理由は浮気じゃないか?と。
馮万力は探偵事務所を訪れ陳律師(律師とは法律家のことのようだ)に浮気調査を依頼する。陳律師が言われた通りのカフェ&バーへ行くと、確かにママさんはグラマー美女で、ターゲットの文錦輝は実は陳律師の同級生だった。顔を見られてばれてしまい結局二人で飲み明かす。
家に戻って来た文錦輝はなんとなく気まずい。だが潘素はいつも通りだ。離婚なんて冗談だったんだろ?と訊くと、しかし潘素は本気だと言うのだった…。

長男の文遠は仕事で忙しく週末にしか家に戻ってこれない。やっと日曜日が来て息子たちとサッカーしようといそいそと出掛けようとするのを丁雁が止める。今日皆で集まって義父母の離婚について話し合うはずでしょ、と。文遠はしぶしぶ息子達にすまないと謝り彼らだけで遊ぶようにと送り出した。だが息子達は彼らは彼らで毎日曜ごとに"パパの遊びに付き合わされる"ことにうんざりしており、自分達だけで遊べると喜んで出掛けて行った。

何も知らされていない次男の文聡は、フィアンセの林叢を両親に紹介するため自宅へ連れてきた。すると兄も帰ってきてるし姉夫婦まで来ている。家族会議で両親の離婚問題を話し合うと言われて二人はとても気まずい。
子供たちはなぜ離婚なんてことになったのかと父に尋ねるが、父はこっちが訊きたいと言う。潘素はだんまりだ。これじゃ納得できないし絶対反対だと子供たちが騒ぎ、潘素はやっと口を開く。もうお父さんが嫌になったの、と。一緒に暮らしている上でのほんのちょっとした嫌なことの積み重ねがもう我慢できなくなったのだと。
息子たちはそんなことくらいで、という意見もあれば、確かにわからないでもないという意見も。しかしやはり離婚はすべきでないと反対する。潘素は家を出て、友達が紹介してくれた部屋を借りて暮らすと言う。文錦輝は朝から晩まで休みなく働いて家族を養ってきて、やっと引退しのんびり暮らせると思ったら離婚しろと言う、男は家族を養う奴隷じゃないかと皮肉交じりに言う。そして文静の尻に敷かれている馮万力にお前がまさにそうだと言ったために、馮万力は逆上し離婚を突きつけられるのはあなたが浮気してるからだと陳律師から送ってもらった写真を突きつけた。それはカフェ&バーのママの手を文錦輝が握っている写真で、それを見た文錦輝は倒れてしまい救急車で運ばれる事態に。末子の文聡が付き添って救急車に乗り、残った子供たちは父が死んだら葬儀をどのように行うかを話し合うのだった…。

一時は墓地の相談までし始めていた文遠らだが、幸いにして文錦輝は命を取り留めた。
文聡は結婚を機に家を出ることに。父に、母ともう一度よく話し合った方がいいと勧めるが、文錦輝は潘素とはお互いに考えていることがわかるだけに今更話し合っても何も変わらないと言う。林叢はたとえ考えがわかっていてもそれを実際に口に出す事はまた違うと説得するが文錦輝は首を振る。

小説創作サークルから帰って来た潘素が部屋に戻ると文錦輝は古い映画を見ている。そして「すまなかった。おれは今まで『ありがとう』の一言もかけたことがなかったな。」と言った。「今までおれの妻でいてくれてありがとう。」そう言ってサインした離婚届を差し出した。潘素は離婚届を受け取ると、その場でびりびりと破り捨てた。

雪降る北京の夜。夫婦、恋人、親子、それぞれが"家族の温もり"で暖をとるのだった。(終)
----ここまで]

よい物語でした。一言でいえば「ベタ」。
離婚問題をきっかけにそれぞれの夫婦が互いの気持ちを見直していくというハートフルコメディ。意地悪な言い方するとお涙頂戴的な。(^▽^;)
元映画の方は観てないけど、まーぁこれはおそらくリメイクといってもめちゃくちゃ素直にまんま中国語にしただけの脚本ではないかと予想できるほど、日本的。それもひと昔前の、ちびまる子ちゃんくらいの時代の家族の。
逆に「家族はつらいよ」の方が2016年公開って、時代にそぐわなさすぎる内容だと思う。今どき三世代同居、専業主婦、両親引退隠居生活、嫁姑含め親族がめちゃくちゃ仲良いって設定、日本じゃありえんくね?そういう点は今の中国にはピッタリくると思う。

映画というよりは舞台向けなコンパクトな物語。ボケは一切ないけど細かに笑いを取りに行ってる見事な脚本。笑いであり皮肉でもあるところがミソ。両親の離婚問題によって自分たち夫婦の関係をも見直していくという息子たちの物語もそつがない。
しかし、妻の潘素が離婚したいと思う気持ちは果たして理解されるのかという点が疑問。朝のうがいの音がうるさいとか人前でおならするとか脱いだ靴下が裏返しだとかそういう細かいデリカシーの無さを気にするのは日本的で、中国の女性もそういう所気にするのか?と。
あと、「家族はつらいよ」のレビューを見る限りはラストシーンの演出が異なる模様。[ここからネタバレ含む-----
「家族はつらいよ」では最後主人公は「本当は別れたくないけどそういう弱音は吐けない昭和の男のプライド」によって離婚届を差し出しているようだけど、本作では「愛するからこそ妻の希望を叶えさせてやろう」という結論から離婚届を差し出している。「家族はつらいよ」では妻は「やはりあなたについて行きます」と答えているようだけど、本作では特に言葉はない。----ここまで]
やはり日本では妻は夫に従うべしという慣習があり、中国では夫婦は平等なんだよな。

主人公の文錦輝を演じるのは「洪武大案」で朱元璋を演じてた台湾のベテラン俳優リー・リーチュン(李立群)。見た目に頑固そうな彼にこのキャラは実にハマリ役w
長男の文遠を演じるのが監督のホァン・レイ(黄磊)。でもあまり前面には出てこず、それよりは娘の夫の馮万力役ワン・シュン(王迅)がキャラが濃くて面白かったな。
中盤でえらい流暢に日本語をしゃべる女性が出て来るんだけど、彼女は女優さんではなくこの映画のメーキャップ担当の山崎恵子さんで、エキストラ出演みたい。

ラストシーンで文錦輝が観ている映画が「幸福の黄色いハンカチ」で山田洋二監督へのリスペクトが窺える演出。「家族はつらいよ」と見比べてみるのも面白いのではないでしょうか。(たぶんそっくり、ほぼ同じだと思う。)


YOUKU
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