「芳華」(2017年 監督/馮小剛 主演/黄軒、苗苗、鍾楚曦)
136分

※日本語版はまだありません。
1970年代の中国人民軍で楽器演奏や舞踊で慰労する文工団に所属する少年少女らの青春を描く群像劇。厳歌苓という作家の同名小説が原作で、脚本も原作者が手がけている。
あらすじを書くにはこれといって起承転結がないので省略。
文工団というのは楽団員といっても基本的には軍人であり有事の際には兵士として前線にも赴く。(ただ女子が多いからか彼女らは戦争が勃発した際には衛生兵として負傷兵の看護に当たっていた。)軍人たるものお国のために身を尽くす…といってもみんないたって普通の人間で、普通の青春時代を過ごしていて、恋とかいじめ、妬み嫉み、それから堅い友情とか。
彼女らは寮生活で、厳しいコーチ(上官)の元で叱咤され続け芸を磨き、清純で規律正しい生活を送っている。やがて戦争が終わり文工団に解散令が。長年共に暮らしてきた仲間達と離れ離れとなる。・・・つまりこれは日本人にとっては「寮生活してる高校生が部活動などに一心に励んだ三年間の学生生活と卒業を描く青春物語」と同じ感覚なのだ。
文工団には男子もいるけど本作は主に舞踊を担当する女子らにスポットを当てて描いているので、おばさ…かつて女子であった皆様は「あるある!」と非常に共感できる作品となってる。男女共学の学校の女子に発生する派閥、ヒエラルキー。これは過去の思い出を全て若さゆえと良い思い出として昇華できるおばさまにはキュンキュン来るんだけど、今現在若い10代20代が見るとただただ辛いだけだろう。これは回顧するための作品であり、今の若者に向けたメッセージなどではない。
昔のいかにもな軍隊風、今の北朝鮮の美女応援団のような不気味に揃った笑顔で歌い踊る文工団なのだけど、でも芸としてやはり美しくて、いや美しく描いていて、軍隊の中では軽視されがちな文工団に対する監督の敬意みたいなのを感じる。そして中盤では激しい戦争のシーンもあり、直視しがたい映像の数々が反戦のメッセージともとれる。序盤に敷いた伏線を回収する技も毎度見事で美しい。
主演筆頭がホァン・シュアン(黄軒)となっているけど実際はミャオミャオ(苗苗)が演じる何小萍をはじめとする女子4名が主人公で、誰か一人ではなく彼女らを柱として文工団の若者全体を描いている。この女子たちが本当に飾らない素のようなお芝居…つまり憎らしかったり汚かったりする所をも隠さず見せているのが良い。
ホァン・シュアンが演じる劉峰はその女子らの「見た目は華やか内心ドロドロ」な集団生活の中で重要な(そして意外な)役回りとなるのだけど、やっぱり彼のお芝居は凄いなとため息が出てしまう。主役の女子たちを立てながらもしっかりとした存在感を根付かせてる。若いのに凄い…と思ったら彼すでに33歳だと。うっそぉ!?と思うと同時に、なるほどだからこんなお芝居に深みがあるのかと納得。
普通の青春群像劇としてももちろん成立してるけど、この映画が一番心に響くと思われるのは戦争を体験した世代。辛く苦しいことがあったからこそ楽しかった思い出はキラキラ輝く。おそらく本国中国では60代くらいのおじさんおばさんが皆自分の青春時代と重ね合わせて涙したことだろう…。
Pangzi