「瘋狂的外星人」(2019年 監督/寧浩 主演/黄渤、沈騰)
116分

※日本語版はありません。
タイトルは「おかしな宇宙人」。瘋狂的というのはクレイジーって意味。
この監督は「瘋狂的○○」というタイトルのコメディ映画を何本か撮ってていずれも大ヒットしたらしい。
――さびれた世界公園(※東武ワールドスクウェアや犬山リトルワールドみたいなテーマパーク)で細々と猿回しショーを続ける耿浩と兄貴分の大飛。
ある夜突然空からE・Tのような生き物が落ちて来た。耿浩と大飛はいい見世物になるとそのE・Tに首輪をつけて、ムチを打って芸を仕込ませようとした。はじめは抵抗をみせていたE・Tも痛い目に遭うと知って渋々言う事を聞くようになった。
だがある日E・Tが逃走する。耿浩と大飛は懸命に追いかける。E・Tは逃げ回るが最終的に彼らの家へと戻っていく…その狙いは耿浩がキーチェーン代わりにズボンにつけていたバンドにあった。それはE・Tにくっついていたのを耿浩が剥がしたものだった。実はそれこそが重要アイテム…E・Tがバンドを頭に巻くと、周囲の物が突然浮遊し出した。
E・Tは言う、自分は宇宙人で地球人と初めての交流に来たのにこんな仕打ちをするとは許せない!と――
[ここからネタバレ-----
その少し前の話。某C国の選ばれた宇宙飛行士が地球上空で宇宙人との初めての対面を果たした。だが宇宙飛行士が記念の写真を撮ろうと炊いたストロボに宇宙人は攻撃する気かと驚き怒りをあらわにする。誤解だと釈明しようとしたその時デブリが飛んできて宇宙人にぶつかり地球へ落ちて行ったのだった。
C国の工作員は急ぎ宇宙人を探し出そうとするが、不定期に宇宙人から送られて来る映像はコルコバードっぽかったりパリっぽかったりエジプトっぽかったりで工作員は世界中を駆け回ることになる。宇宙人は地球の名所めぐりでもしてるのか!?
そしてやっと行き着いたのは中国の世界公園だった。
宇宙人はバンドの力で地球人と会話したり超能力を使えるのだった。宇宙人は耿浩と大飛に、自分と同じ目に遭わせてやると怒りをあらわにする。その力を目の当たりにして震える二人。なんとか怒りを収めようと御馳走と酒を勧めた。すると宇宙人は酒で酔っ払いご機嫌になった。隙を見て耿浩がバンドを奪う。動かなくなった宇宙人を、大飛はいいダシが出るだろうと(マムシ酒のように)酒に漬け込んだ。
そこへC国の工作員がやってきた。宇宙人をどこへやったと銃を突きつけられ追及される。耿浩は自分の相棒の猿の毛を剃って宇宙人が身に着けていた宇宙服を着せて差し出した。工作員は猿を宇宙人だと思い込んで連行していった。
時をみはからって猿を呼び戻してずらかり、そして宇宙人の証拠を抹消するために穴を掘って埋めようとする。だがその時、相棒の猿が突然宇宙人の声で喋りはじめた。その頭にはあのバンドがまきついていた…バンドを介して猿に宇宙人の意識がのりうつったのだ。猿はその超能力で耿浩と大飛、それに追いかけてきた工作員らをコテンパンに叩きのめす。殺されそうになった耿浩がとっさに差し出したのはバナナ…その刷り込まれた条件反射によって猿は動きを停める。その隙に耿浩はバンドを取り外した。猿は元のただの猿に戻った。
散々な目に遭った耿浩と大飛。しかし宇宙人を猿のように扱ったのは確かに悪かったと反省する。と、後ろを振り返ると酒漬けにしていたはずの宇宙人が座っていた。その頭部にはバンドが巻き付けられている…耿浩と大飛は観念するが、宇宙人は周囲にあるありとあらゆる酒の瓶を超能力で集めると宇宙船に乗せた。そしてご機嫌によっぱらいながら宇宙船に乗り込み、一瞬のうちにその姿を消した…。(終)-----ここまで]
原案は「流浪地球」と同じ作者・劉慈欣の短編「郷村教師」で、原作者も脚本に参加しているけど物語は大幅に改変されているらしい。
序盤があまりコメディらしくない雰囲気でどうだかなぁと思っていたのが、後半戦に突入すると前半に敷いてた伏線を次々使って笑いの応酬!いや振り返ってみるとすっごくよくできた物語!面白かった!
名作SF映画やらなんやらをとことんパロディにして、でも単なるパクリではなく熱いオマージュであることはその笑いの見せ方からよくわかる。そういう意味でSF好きにおすすめしたいコメディだけど、物語的にはサイエンスの知識は全くいらないし単に宇宙人をモチーフにしただけの普通のコメディ。
耿浩と大飛のコンビと宇宙人が優位を取ったり取り返したりという単純なドタバタ劇だし、子供から大人まで楽しめるシンプルでわかりやすい笑い。この作品は舞台が中国であるというのがすごく重要で、中国だからこそできたコメディ。宇宙人がその力を発揮するためのアイテムが頭に巻くバンドだというのはもちろん孫悟空の緊箍児を意識したもの。BGMがやけに京劇風なのも後半になるとわざとそうした理由がわかる。
主人公の耿浩と大飛を演じるホァン・ボー(黄渤)、シェン・トン(沈騰)はどちらも有名なコメディ俳優らしい。ホァン・ボーは「一出好戯」で主演してた人だね。
でもこの作品で最も目立ち印象に残るのはやっぱりCGで描かれた宇宙人。一見子供向けアニメのようだけど、妙に表情豊かで芸が細かい。お酒を飲んだ時の表情が、もう、ただのおっさんで大笑い。どうやら実際に俳優が演じた表情をキャプチャしてCGを作り出してるらしくて、その元となるお芝居を演ってるのが「我不是薬神」で主演してるシュー・ジェン(徐崢)。道理でおっさんなわけだ!
あとはC国の大統領があからさまトランプ大統領にそっくりだとか、細かいところが笑える。(字幕ではC国って書いてるけど実際はめっちゃユーエスエーって言っちゃってるし!)
若者にウケそうなイケメン俳優はいないのでそういう意味で日本上陸するかは微妙だけど、映画マニア向けなミニシアター系ではけっこうウケそうだと思うんだけどなぁ。