85分

※日本語版はありません。
――明代、皇帝の命により秘密監察部隊「九門」が設立された。彼らは普段は一般市民として生活しているが、命があれば密かに行動しその任務を果たす一流の暗殺者なのだ。
九門のリーダーの趙鐸は、密かに軍を集め謀反を図っている兵部尚書・楊尚賢を粛清に行く。仲間らが楊尚賢の徒党を暗殺しその首を楊尚賢に見せつけ追い詰める。趙鐸は他にいるはずの仲間の名を吐けと迫るが、その時九門提督(親方)の息子である魏超が楊尚賢を刺殺してしまった。
九門提督・魏信は趙鐸に任せた作戦をぶち壊したと息子をこっぴどく叱りつけた。実は魏超は優秀な趙鐸が自分を差し置いて九門のリーダーを任されていることに嫉妬しており、ある日金を積んで仲間らを買収し九門を乗っ取る計画に出る――
[ここからネタバレ------
趙鐸は楊尚賢の事件の手掛かりを追ってとある賭博場へ。襲い掛かって来る郎党らを次々仕留めていく。その頃、献王の妃に内定している娘・妙云の屋敷を魏超らが襲撃し一人残らず殺害した。
妙云の護衛は九門の担当だった。ありえない失態に魏信は怒りに震える。事件当時九門の兵は魏超が父の令牌を使って遠ざけていた。魏信は息子を詰問するが、魏超は事件の捜査のために兵が必要だったと釈明し、妙云を襲撃し殺したのはただ一人別行動をとっていた趙鐸に違いないと告げ口する。趙鐸はその昔戦場で殺されそうになっていたところを魏信が助けてやった孤児だった。義理の息子として魏超と共に育ててきたのに恩を仇で返すと言うのか…魏信は九門のメンバーに趙鐸を殺せと命じる。
密かに思いを寄せていた妙云が無残に殺されているのを見て趙鐸は慟哭し、急ぎ魏信の元へ戻ってきたが、妙に嫌な雰囲気で仲間らの視線も冷たい。なぜか自分が妙云を殺したことになっていた。九門の仲間らが一斉に趙鐸に襲い掛かる。だがその中で趙鐸の剣の師匠である呉塵が彼の危機を救い屋敷から追い出すようにして逃がしたのだった。
馬に乗って逃げた趙鐸だが途中で力尽きて地に倒れる。そこへ通りがかった小坊主が彼を助け和尚の元へと運んだ。和尚は彼の正体を詮索することはなく、怪我が治るまではと面倒をみてくれた。趙鐸はわんぱくな小坊主を見るうちに殺伐とした心が癒されて行き、怪我が治った後も小坊主の遊びや修行の相手をして穏やかな生活を送るようになった。
だが九門では王妃殺害犯を即刻捕えよと皇帝からの命令が下っていた。この指令を果たせなければ九門提督の命を代償にすることになろう。寺にやってきた魏超は和尚に趙鐸の身柄を引き渡せと迫るが和尚は何も答えない。憤慨した魏超は寺を焼き払った。
出先から帰って来た趙鐸と小坊主。自分のせいで和尚が殺されたことを知った趙鐸は泣きじゃくる小坊主に必ず仇を取って帰って来ると言い剣を手に旅立つ。
都へ戻ろうとする趙鐸の前に次々と九門の手練れ達が襲い掛かって来る。昔共に戦った仲間らを、しかし趙鐸は己の目的のために容赦なく切り捨てていく。その中で実は魏超が楊尚賢と結託し謀反を唆していたことを知った。魏信の元へ戻った趙鐸は真実を告げる。魏信はまさか実の息子が自分を裏切るような真似をしていたと知り愕然とするのだった。
九門のメンバーが次々と趙鐸に倒され次は自分と危機感を募らせた魏超は、父親に早く趙鐸を殺してくれと泣きつくが、魏信は息子を張り倒し今すぐ都を脱出せよと屋敷から追い出した。魏超は自宅に隠してあった大量の金塊を持って逃げようとするがそこへ趙鐸がやって来た。魏超はここの財産を全てやるから見逃してほしいと膝をつくが、趙鐸は和尚や愛する妙云を殺した彼を赦すことなどできなかった。趙鐸は剣を魏超の胸に突き立てる。
雨の中一人歩く趙鐸の前に九門の兵の一団が姿を現す。趙鐸は襲い掛かって来る兵士を片っ端から屠っていく。そして後ろの車から降りて来たのは魏信だ。
「義父上、魏超は私が殺しました!」そう言う趙鐸に魏信は剣を抜いて襲い掛かる。あの日戦場でお前を助けたばかりに我が息子を失うことになった!猛然と突き立てるその剣を、趙鐸は避けることなく胸に受けた。「義父上、助けてくれたあの日から、私の命はあなたのもの、お返しします。」そう言って彼はゆっくりと雨の中倒れて行った。
自分の他に誰もいなくなってしまった屋敷で魏信は回想にふける。本当の兄弟のように仲良く育ってきた魏超と趙鐸。分け隔てなく育ててきたはずの二人の"息子"はもういない。(終)-----ここまで]
劇場公開の映画ではなくネット限定の映画らしい。若手監督が撮りそうな作風。スローモーションを多用し画面や動きの美しさなどの芸術性に重きを置いた、映画コンペに出品してそうな作品。
物語はこれもしかしたら有名な故事なのかなと思うようなシンプルさで、その物語を詳細に語ることはなく情景を切り貼りするような形で見せる手法が面白い。序盤は普通のアクションものっぽい体裁なのに後半にはアクションをほぼ全て間接的に映し、しかも結果を先に出してから回想ぽく事実を映すという手法を幾度も繰り返していて興味深い。クレジット後のエピローグ的な部分では時系列がてんでバラバラになっていて、でもこれで一連の事件について深みを持たせ本作のテーマが何だったのかを示すものになってる。(正直ここがないとこの物語で何が言いたかったのかはわからないだろう。クレジットが出てきてもラストまで見ましょう。)
暗殺者として世間からその存在を知られてはならない"影"として生きる九門のメンバー。孤児で九門提督に拾われたために影として生きることを宿命づけられた主人公の趙鐸は、命令に縛られることなく自由に恋もできる普通の生活に未だに少し未練がある。しかし突然降りかかった災難で九門を追われ、しかしそんな自分を受け入れてくれる人々がいた。ただ誰かが共にいてくれる、孤独ではないこと。それだけのことが何にも代えがたい幸せであると気づく。趙鐸は彼の幸せを破壊した仇への復讐と、九門提督が与えてくれた"幸せ"に報いるために、自らの命をかけて事件の幕引きに行く。
九門を追われた趙鐸が小坊主と共に暮らすシーンに多くを割いているところが本作のテーマのカギを握っているのだけど、小坊主役の子が、いや、上手なのは上手なんだけど型どおりというのか若干大げさなお芝居で、あんまり子供らしい天真爛漫さっていうのが見えてこなくてなぁ。
九門メンバーがきちんと一人ひとり漫画みたいなキャラ付けがされてるのに、ほとんど活躍せず散っていくのが若干もったいない気も。主人公無双すぎ。でも結局のところこれはアクション(主人公の強さ)を見せたいのではなくて人間ドラマとして描きたかったという所。主人公が強すぎるのはラストシーンで本気出せば倒せるのに自ら剣を受けるその意味合いを強めるためか。まさかの魏信が準主役的立ち位置とは、終盤になるまで誰も気づかないだろうよ…。
出演している俳優さんの情報が全然入手できなくて、まだまだ無名の役者さんばかりなのかも。最初はアイドル映画なのかと思ったくらい、なかなかのイケメン揃いではあるけど。
殺陣が中国の伝統的な功夫ではなくアクションゲームのような動きであったり、逆光の中で剣士のサシの勝負を映すあたりは日本のサムライ映画や漫画の影響を受けてそう。そういう今時らしい影響がみられるところも監督が若いんじゃないかなと思う理由。
YOUKU