全75話

副題が「Tribes and Empires : Storm of Prophecy」で、直訳すると「帝国と部族(の物語):予言された嵐」。古代中国をモデルにした"九州"という架空の世界で繰り広げられる、帝位争奪戦を軸としたファンタジー巨篇。原作は今何在という作家の同名小説で、監督と原作者が脚本を共同執筆している。
――九州と呼ばれる世界。北方の瀚州は雪原と砂漠と草原が広がり多くの遊牧民族が暮らしていた。その一つ、碩風族の頭の息子・碩風和叶は砂漠で行き倒れの占い師を発見し村へ連れて帰った。占い師は九州の中心部を治める端王朝のとある秘密を口にする。皇帝の第六子が人間ではない妖怪の子であると…。直後、端王朝が誇る最強の騎兵隊・穆如鉄騎がやってきた。彼らは王朝の秘密を知ってしまった占い師を追って来たのだ。穆如鉄騎は口封じのために碩風族を皆殺しにする。幼い子供たちはその難を免れたが人攫いの手によって捕まり奴隷として売られて行った。碩風和叶は奴隷同士が戦い殺し合う闘技場に売り飛ばされた。彼はいつかここを出て草原へ帰り、部族の王として復活と復讐を遂げると心に誓う…。
孤児の寒江は武芸の達人に育てられた。だがある日突然端王朝大将軍・穆如槊の屋敷に連れてこられ、自分が穆如槊の三男・穆如寒江だと告げられる。そして家のために死んでくれと剣を手渡された。寒江は誕生時に占いで将来国の災厄となると告げられたため穆如槊は我が子を捨てたのだ。建国以来占いが絶対的に信頼されている端王朝、その頂点に立つ牧雲皇家に対して、兵権を握る穆如家に謀反の意図がないことを示すには他に方法はないのだ。お前は生まれて来てはならない存在だった…その言葉を聞いた寒江は涙を流し剣を胸に突き立てた。
皇帝の第六子・牧雲笙の母親・銀容は絶世の美女であり魅族と呼ばれる精霊であった。皇帝は銀容妃をこよなく愛したがとある事件で彼女を失う。牧雲笙は美しい少年であったが皆からは化け物の子だと恐れられ孤独に育った。彼が恐れられた理由はもう一つ、それは、彼が皇帝の剣を手にした時九州に嵐が吹き荒れるという占い結果がもたらされたからだった――
これは観る人を選びそう…。全75話と長いその理由は物語自体が長いのではなく、撮り方。重いテーマの人間ドラマかドキュメンタリー映画みたいな撮り方でひとつひとつのシーンをじっくり時間をかけて描いているのでどうしても長くなる。これは最初にこの世界観に入り込めれば面白いのだけど、そうでなければやたら冗長でしんどいと思う。
[ここからネタバレ含む-------しかも!これ実は完結してなくて物語も謎をちりばめたまま伏線を回収せず終わっている。元々続編ありきの企画かもしれないけど、ぶっちゃけ打ち切りかなと思う…。-----ここまで]
中国明代をモデルにしてるような中央の端王朝と北の遊牧民族。そこに精霊族や地底人といった西洋寓話風の設定も盛り込んで、徐々に世界の秘密が明かされていくといった物語。ファンタジーなので勿論マジカルな事も起こるけど基本的にリアリティに寄せた人間ドラマ。異民族異文化の、食べ物とか着物とか礼儀作法とかの日常的な人間の生き方が興味深く、ファンタジーと民俗学が好きな人にはオススメ。あくまで架空の世界という設定なので、中国っぽい服装や所作であってもどこか現代的な要素が含まれていたり普通の時代劇とは微妙に違う(不自然と感じる)部分が。西洋文化だけでなく日本文化を参照したと思われるモチーフも多く、流行を押さえた芸術作品の色を強く感じる(そういう所がまた映画っぽい…。)画的な美しさに相当こだわった作品。
帝国の皇子と将軍の息子と異民族の末裔という三人の主人公のそれぞれの物語を同時並行で進めているけど、連続TVドラマの企画としてはこれが失敗だと思う。牧雲笙と穆如寒江は生活圏も近いので話が交錯しても違和感ないけど、碩風和叶は全く異なる生活圏で他の二人にほぼ絡んでこないし彼の物語は外伝として切り離すべきだったろう。脇役も丁寧に描き過ぎてて多すぎ欲張りすぎで物語の本筋が遅々として進まない…。
しかしこの三人の主役を演じる俳優らは本っ当に素晴らしかった!!ワイルドで無口なくせに正義と情熱の熱いハートを持つ男前・碩風和叶、器用で頼れるナイスガイなのに好きな子の前ではモジモジしちゃって可愛い穆如寒江、所作がとかく美しくこの世のものとは思えないオーラをまとった皇子様・牧雲笙。みんな口数の少ない役柄なのにキャラがしっかり立ってて、視線やちょっとした顔の筋肉の動きといったもので心情を見せるのが巧み。寒江役のショーン・ドウ(竇驍)や笙役のホァン・シュアン(黄軒)は典型的中国人顔とも言える細目一重で香港スターのような華やかさは無いのだけど、お芝居はめちゃくちゃ光ってる!特にホァン・シュアンは「ミーユエ」では上品で爽やかな好青年、映画「妖猫伝」ではちょっと軽薄な詩人ときて、今作では高貴でミステリアスな皇子(しかも二重人格)と、どれも基本カッコイイ役だけどキャラクターが全然違って、器用としかいいようがない。
他にも牧雲厳霜役チャン・ジァニン(張佳寧)や南枯月漓役ワン・チェン(万茜)のような若くて可愛い女の子が肝の座ったお芝居してたのが印象的。あと子役も素晴らしかった、主人公三人の少年時代!ちゃんと成人後を演じる俳優に見た目似ている子をキャスティングしてて、特に穆如寒江の少年時代を演じるシモン(石雲鵬)君は殺陣もキマッてるし思春期の少年の瑞々しさがはじけてるお芝居におばちゃんキュンキュンした(*´ω`*)
役者の芝居が本格揃いだったのに加えてアクションシーン(決して多くはないけれど)も映画さながらの迫力だし、一番の目玉だと思われる衣装やメイクも凝りに凝ってて「こういうのを作りたい!見せたい!」という監督の気概みたいなのがひしひしと感じられた作品。でもこれが映画ではなくTVドラマを見る層にウケるかっていうと…時代がまだまだ追いついてないと思う。残念。
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