「カンフー・ジャングル」(2014年 原題「一個人的武林」 監督/陳徳森 主演/甄子丹、王宝強)
96分

――武芸の一門の師範を務める夏侯武はある時誤って殴った相手を殺してしまい自首する。
三年後、トンネル内で男が殴り殺される事件が発生。現場には鳥の形を模した謎の楔がこれみよがしに刺さっていた。服役中の夏侯武はそのニュースを知り事件の担当刑事の陸玄心に面会を要請する。殺された男は武林(武芸の世界)では7大英雄と呼ばれる達人だったのだ。夏侯武は犯人が武芸の達人を殺すことで自分がナンバーワンの存在であることを示そうとしている可能性があると説くが、陸玄心はそんな古くさい物語のような話を信じられるわけもなく呆れて出て行った。
だが夏侯武が7大英雄として挙げた人物が一人また一人と殺されていく。現場にはやはり謎の楔が残されていた。陸玄心は夏侯武に捜査への協力を仰ぎ仮釈放させる――
[ここからネタバレ-----
次に狙われるであろう7大英雄を守るため陸玄心らは警察隊を引き連れて向かったが一歩遅くすでに殺されていた。だが夏侯武は現場でやはり武芸の達人である封于修の姿を見る。彼はニヤリとして立ち去っていく。夏侯武は後を追いかけるが封于修はビルを飛び越えて逃走していってしまった。警察隊が後を追ったが見失い、そして同時に夏侯武も姿を消していた…。
夏侯武は故郷へと戻っていた。一門は夏侯武が逮捕投獄されたことで弟子は殆ど去ってしまっていたが妹弟子の単英が細々と守り通していた。単英から数日前に見知らぬ男がやってきて鳥の形の楔を置いて行ったと知り、封于修が自分を狙っていることを知る。夏侯武は自ら陸玄心に連絡を取り、改めて事件捜査に協力するため単英と共に香港へと戻る。
警察の捜査で封于修の家が判明。家を捜索すると彼の妻の位牌が。ちょうど一年前に癌で亡くなったのだ。封于修は妻の一周忌に必ず自宅へ戻って来るはずだ。
警察が周囲に監視カメラを仕掛け潜伏し待っているとやはり封于修が花束を持って戻って来た。だが様子がおかしい事を察知した彼は監視カメラの死角へと姿を消す。だがその行く手に現れたのは単英。単英は剣を抜き封于修に対峙するが、激闘の末敗北。重症を負った妹弟子の姿を発見した夏侯武は陸玄心に救援を求め自らは封于修を追いかける。
単英はすぐに救急車で運ばれ命に別状はなかった。だが夏侯武はそのまま行方をくらましてしまった。結局彼は封于修と組んでいたのではないか…。と、残る7大英雄の一人から陸玄心に連絡が。現在トラックの運転手をしている彼の元に夏侯武がやってきたと言うのだ。
走行中のトラックの前に封于修が立ちはだかる。急停止したトラックから降りて来た運転手はゆっくりと彼の前に立つ…それは夏侯武だった。
封于修はカンフーは人殺しの術だと言い放つ。癌で亡くなった妻が望んだ、武林の頂点に立つためには、完全勝利つまり相手を殺さねばならないと言い襲い掛かって来る。次々と車が走り抜けていく道路上で二人は激闘を交わす。そしてその戦いは夏侯武が制した…だが夏侯武は二度と人を殺さないと亡くなった師匠と妹弟子に誓った、その拳を寸前で止める。お前が殺さなければ俺がお前を殺すぞ!封于修は逼りつかみかかる。と、走り抜けるトラックに衣服が引っかかり夏侯武は数十メートル引きずられた。動けなくなった夏侯武を封于修は側道へと引っ張って来て、そして鳥の形の楔を取り出しとどめを刺そうとする。
夏侯武が目を開けるとすぐ隣に息絶えた封于修の顔が。駆けつけた陸玄心が封于修を射殺したのだった…。
その後夏侯武は事件解決に協力したことで減刑され釈放された。元気になった単英と共に故郷へ戻り、彼女と結婚し子供をもうけ、そして彼の武芸一門は多くの弟子ができて繁栄していった。(終)----ここまで]
※中国語で見たので多少誤りがあるかもしれません。
ぜ、前半が異様に長く感じる…。
でもクライマックス(ラスト15分)のドニーとワン・バオチャンのタイマン勝負はそれまでのしんどさを吹き飛ばすだけのカッコ良さがあったから許す!!!
ドニー演じる夏侯武は非常にまっとうな、正義を貫き愛する女性を守るためという全世界共通な"主人公道"を行くキャラクターでよしよしよし!
加えてワン・バオチャン演じる封于修も、共感できなくはない辛い過去を負っているという設定が任侠ものらしい、まさに武林らしいカッコイイ悪役でダブル主演ぽくなってる。
カンフーで敵(というか警察)をばったばったとなぎ倒したりビルや民家を逃げ回る鮮やかさはアクション映画として十二分に見ごたえあり、それだけで充分なのに、なんか妙に物語が凝ってて従来の香港アクション映画とは勝手が違うような…。陸玄心が率いる警察チームの内部事情とか捜査状況とかの刑事ミステリな側面が特に前半は大きく出ていて、これは賛否両論じゃないかと。アクションを求めてる人には重箱の隅をつつくような理論はいらないし、ミステリを求める人は現実重視だからいろいろツッコミ入れてしまう。
ただすごく面白いと思ったのはラストのオチ。[ここからネタバレ-----封于修は車に轢かれて死にかけの夏侯武をそのまま殺すのではなく、敢えて側道へ避難させてから自らの技で殺そうとする、これは生死ではなく勝ち負けを重視する武林の思想からだ。相手が勝手に自滅したのでは勝った事にならないからだ。そういう所を正々堂々としたかった彼を無情(?)にも陸玄心が射殺する。これは理論をとやかく言わず格好良さを求めるアクションものに対して客観的で現代的なミステリが「でも実際強いのは拳より銃でしょ」と冷徹に撃ちぬいているようで----ここまで]、どちらが正しいという話ではなく、なぁんかシニカルな結末だなぁと思った。
ワン・バオチャンが悪役というのは結構意外だったけど、まぁお世辞にも整った顔立ちではないしちゃんと悪いカオさせれば悪者に見えるんだなぁ。でもファンのおばちゃんとしてはどうしても彼を応援しちゃう!
あとヒロイン…ではないか、助演になるのかな、陸玄心を演じるチャーリー・ヤン(楊采妮)が素晴らしかったな。疲れた顔のベテラン女刑事という妙にリアリティあるキャラになってて。アクション映画ではなくサスペンス劇で見てみたいと思うお芝居。
本編終了後に謝辞が映し出されその後今までカンフー映画に関わって来た有名な俳優やスタッフらが実は脇役やモブで多数出演していたことが明かされる。香港映画マニアにはそういう所もお楽しみいただけるのでは。
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