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こちらでは『海外のユニークな旅先ばかり』をご紹介しています。
本題の“カタリ派”に入る前に、フランスの“地方“について触れたいと思います。
カルカッソンヌ(Carcassonne)やアルビ(Albi)と言えば、フランスの世界遺産都市として有名ですが、いずれも現在は南西フランスのオクシタニー地方(Occitanie)にあります。
“オクシタニー地方”・・・今ひとつピンと来ないのもそのはず。2年前にオランド前大統領によってフランス全土で行われた地方制度改革で地方は統合され、“オクシタニー”という名称に関しては2016年9月末に新名称として効力をもったに過ぎないからです。
それまでは、前者がラングドック・ルション地方(Languedoc-Roussillon)、後者がミディ・ピレネー地方((Midi-Pyrénées)でした。これなら聞きなれた地方名ですね。
下記は地方制度改革前の地方名称(Région)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:R%C3%A9gions_de_France.svg
By Solsticedhiver [Public domain], via Wikimedia Commons
そして下記が地方制度改革後(2016年1月1日)の地方名称(Région)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Regions_France_2016.svg
By Monsieur Fou [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], from Wikimedia Commons
ということで、改めまして今回ご紹介するのはフランス南西部のオクシタニー地方です。
ここは、中世ヨーロッパに興った“カタリ派”の歴史無くしては語れない場所と言えるでしょう。
ところでこの“カタリ派”とはいったい何でしょう。
それは、中世ヨーロッパで12世紀から14世紀頃にかけて存在したキリスト教の一派です。
彼らは独自の「教皇」や「司教」を持ち、極度の禁欲を実践し、二元論をとなえたことから、カトリック教会と激しく対立、「異端」として断罪され、ついには歴史の表舞台から消えていきました。
カタリ(Cathari)という単語の由来は所説ありますが、ギリシャ語の「Katharos」(清浄なもの)に由来する説が有力のようです。
カタリ派を巡る時代背景を考える時、“12世紀ルネサンス”とも言われるように、 中世においてとりわけ12世紀は重要な時代と言えるでしょう。
それは、都市化による人口の増加、大学の誕生、そして経済的発展に伴う大聖堂の建築など、西ヨーロッパキリスト教世界が活気づいた時代でした。
そのような時代にあって絶大な権威を誇っていたのがローマカトリック教会でした。しかし現実には、一部で腐敗や汚職も蔓延していました。
そんな折、自らを「善きキリスト者」と呼び、清貧を志して実践したカタリ派が、ローマカトリック教会への不満の受け皿になって、民衆に受け入れられたのは、ある意味、自然の流れであったとも言えるでしょう。
またこの時代の特徴として、民衆の間に宗教的情熱が盛り上がっていたこともあげられます。
カタリ派の前に現れたワルドー派や、女性たちによるベギン運動(ベギン運動に関してはこちらの記事をご参照ください)など、ローマカトリックの司牧の周縁で“使徒的な生活”を目指した人々が現れましたが、そこには常に「異端」の危険がありました。
カタリ派はそうした「異端」の代表ともいえるのです。
<異端として迫害されたカタリ派の信者たち>
また、カタリ派がなぜ異端と言われたかと言えば、カタリ派の思想の最大の特徴は二元論にあります。
キリスト教においては一元論(善なる神が世界をつくり、悪は実在しない)が基本であるのに対して、カタリ派の思想では二元論(善なる原理と悪の原理が存在する)が基本となっています。
キリストが受難することによって原罪をあがなったという「正統」側の解釈に対して、カタリ派は受難を否定し、この世に悪があるのは悪の原理が存在するからだとします。
カタリ派は自らを真のキリスト者と自認していましたが、このようなカタリ派の 思想がローマカトリックの教えと相容れないものであったことは明らかでした。
それでは早速、この“カタリ派”ゆかりの地をあえて『城』に特化してオクシタニー地方(Occitanie)に訪ねてみましょう。
まずは、冒頭にも触れました超有名な世界遺産都市カルカッソンヌ(Carcassonne)です。ちなみにカルカッソンヌのあるオード県(Aude)は、 『カタリ派の里(Pays Cathare)』として知られています。
<オード川(Aude)から眺めるカルカッソンヌのシテ(城砦都市)>
<オード川に架かる旧橋(Pont Vieux)を渡るとシテへの道が続きます>
<いよいよヨーロッパ最大の城塞都市(シテ)の中へ>
ここカルカッソンヌのシテの中にあるカルカッソンヌ城は、ローマ教皇によるカタリ派討伐の舞台となったところです。
というのも、11世紀から12世紀にかけて城主であったトランカヴェル家がカタリ派を擁護したため、カタリ派の拡大を恐れたローマ教皇がアルビジョア十字軍を派遣。トランカヴェル家は戦いに敗北し、以降カルカッソンヌ城はフランス国王の所有と なります。
ちなみにアルビジョア十字軍の“アルビジョア”は、カタリ派が同様に活動拠点としていたアルビの街の名から来ています。
カルカッソンヌ城の中では、“アルビジョア十字軍によるカタリ派征伐”に関する 歴史ビデオがご覧いただけます。
そして、タイトルにも記しましたように、オクシタニー地方にはアルビジョア十字軍との戦いに際し“カタリ派”が拠点とした城が点在しています。いずれも険しい岩山に築かれたこれらの城を訪れると、彼らの戦いがいかに壮絶なものであったかが感じられるでしょう。
下記の地図をご覧ください。これら(赤印)は全てオクシタニー地方に残る“カタリ派”ゆかりの城です。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Routes_des_ch%C3%A2teaux_cathares_sans.svg
By Pinpin (Image:Routes des châteaux cathares.svg) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/) or CC BY-SA 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0)], via Wikimedia Commons
ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。いずれも岩山にへばりつくかの様に聳える城です。風が強い日などは、十分に注意が必要です。
<展望台から遠望するラストゥール城(Lastours)>
<健脚な方は城まで歩くこともできます>
<アギラ城(Aguilar)>
<アギラー城から眺めるピレネー山脈>
<ケリビュス城(Quéribus)>
<城の入り口>
<ここは特に突風にご注意ください>
<見晴らしの良いケリビュス城>
<ペイルペルテューズ城(Peyrepertuse)>
<“カタリ派”終焉の地モンセギュール城>
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ch%C3%A2teau_de_Monts%C3%A9gur_-_vue_a%C3%A9rienne_2.jpg
By MDanis [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], from Wikimedia Commons
1209年にはじまったアルビジョア十字軍は、1244年モンセギュール城の陥落に より幕を閉じます。
“カタリ派”の歴史を知ってこれらの城を訪れる時、自然と中世の時代にタイムスリップし、より深い思いが込み上げてくることでしょう。
■オード県の“カタリ派の里(Pays Cathare)” 公式サイトはこちらへ
(仏語、英語、西語、独語があります)
■“カタリ派の里(Pays Cathare)”の城、修道院、中世の街、博物館の公式サイトはこちらへ
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