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こちらでは『海外のユニークな旅先ばかり』をご紹介しています。

 

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 ヨーロッパを旅していると、必ず耳にするのが教会などの建築様式。ツアーであれば、現地ガイドが「これは〇〇世紀のゴシック様式で、その特徴は・・・」と説明 する姿を見かけることは多いですね。

 

 その中でも“旅のテーマ”として最も好まれるのが「ロマネスク」と言っても過言ではないでしょう。それには比較的多くの国を対象にできるということも 理由に挙げられます。

 

 “ヨーロッパ・ロマネスク紀行”といったタイトルのツアーも数多くありますが、 この“ヨーロッパ”部分をスペインにしてみたり、フランスにしてみたり、ドイツに してみたり。

 

 イタリアもありますが、やはりイタリアはルネサンスの方が、一般的にしっくり 来るかと思います。(とは言いつつ、これは固定概念でイタリアには素晴らしいロマネスクが沢山ありますが)

 

 ではなぜ、ロマネスクが日本人に人気があるのか?!おそらくゴシックやルネサンス、そしてバロックに比べて時代も古く、“洗練されていない”と言ってしまえば身も蓋もないところ、これに“侘び寂び”を感じる日本人が多いので しょう。

 

 確かにロマネスク様式では、柱はあるものの、まだこれで建物を支えるまでの技術がなかったために、分厚い壁が建物を支え、建物内部の大半を占めています。

 

 外見も、高さがなく何となくずんぐりむっくりとして素朴な感じがします。

 

 そして前述のはその広さを利用して、文盲の民衆にもキリスト教世界が理解できるようにと聖書の教えを説いた絵、つまりフレスコ画で埋めつくされいました。

 

 柱は低く、壁が多いロマネスクは内部も光が無く薄暗いですね。また、ロマネスクの建物内では円形アーチが特徴です。

 

 ちなみにロマネスク(romanesque)とは、フランスの考古学者に よって命名されたもので(フランス語ではromane)、ゴシックに先立つ様式を指しています。時代はおよそ10世紀後半から12世紀と言えるでしょう。

 

 下記はロマネスク様式の典型的な例と言えます。

 

<スペイン北西部レオンの町にあるサン・イシドロ教会内の12世紀パンテオン>

 

 次のゴシック様式になると、柱で建物を支える技術も発達し、よって建物は ぐっと高さを増します。

 

 内部も壁が占めていた部分はステンドグラスの窓となり、光も多く差し込むため明るくなりますね。

 

 柱と柱をつなぐ、ロマネスクの円形アーチは尖頭アーチに代わり、建物全体の高さをぐんと上げることに成功したわけです。

 

 ゴシック(gothique)は、フランスが発祥とされ、およそ12世紀後半から15世紀頃。(イタリアでは14世紀に既にルネサンスが始まっていますが、西、仏、 ドイツでなどでは16世紀以降です)

 

 下記はゴシック様式の典型的な例です。

 

<ステンドグラスが有名なレオンの大聖堂>

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cathedral_of_Le%C3%B3n_-_Stained_glass_windows.JPG

© José Luiz Bernardes Ribeiro /

 

 と、ここまでロマネスクやゴシックの話をしてきましたが、本題はプレ・ロマネスクです。

 

 プレ・ロマネスク(pre-romanesque)“ロマネスクの源流”とも言える実に興味深い建築ですが、ロマネスクほど多くは残されていません。

 

 そんな中、今回ご紹介するのはスペインに残る秘蔵プレ・ロマネスクの 一つです。

 

 場所は、前の記事でご紹介しましたソリア県と同じくスペインのカスティリャ・イ・レオン地方にあるサモラ県です。

 

注)この地図は「Provinces of Spain.svg」に一部日本語を加えています。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Provinces_of_Spain.svg

By Emilio Gómez Fernández & Javi C. S. [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], from Wikimedia Commons

 

 サモラ県の県都サモラ(Zamora)から北西へ約23kmのエル・カンピジョ(El  Campillo)という村にあります。首都マドリードからは北西へ約275kmです!

 

       

 

 その名はサン・ペドロ・デ・ラ・ナベ聖堂(Iglesia de San Pedro de la Nave) です。時代は7世紀の西ゴート時代のものです。

 

<サン・ペドロ・デ・ラ・ナベ入口にある門>

 

<案内に7世紀とあるサン・ペドロ・デ・ラ・ナベ>

 

 さて、ここで7世紀の西ゴート時代について、つまりプレ・ロマネスクの時代背景についてざっくりと触れたいと思います。

 

 世界史で習った記憶のある方も多いはずの「ローマ帝国の東西分裂(395年)」 さらに「西ローマ帝国の崩壊(476年)」・・・その時は“フ~ン”という感じですが、旅で史跡を訪れると役立つものですね。

 

 ということで・・・とりわけ紀元476年「西ローマ帝国の崩壊」の主なる原因は と言えば、当時ヨーロッパに侵入したゲルマン民族でした。

 

 そして、この時スペインに侵入したのがゲルマン民族の一派である西ゴート族(Visigoth)です。(スペイン語ではVisigodo)

 

 ローマ帝国は313年コンスタンティヌス帝がキリスト教を公認していましたので、そんなスペインの地に入って来た西ゴートはどうしたのでしょうか?!

 

 なんとすんなりキリスト教を受け入れ、ローマ時代のキリスト教聖堂“バシリカ”スタイルにさらに独自アイテムも加えて発展させたのです。

 

 彼らの独自アイテムで注目すべきは柱頭部分、そして馬蹄形アーチの使用です。

 

 馬蹄形アーチと言えば、イスラム芸術で考案されたモチーフと思われがちですが、実は西ゴートがすでに使用していました!

 

 考えてみれば、711年イスラム勢力がイベリア半島に侵入した時、半島にいたのは西ゴート族。つまり、イスラムが西ゴートのモチーフを真似たの です。

 

 それでは早速、7世紀の西ゴートが遺した遺産サン・ペドロ・デ・ラ・ナベ(San Pedro de la Nave)を訪れてみましょう。

 

 

<7世紀の西ゴート時代に築かれたサン・ペドロ・デ・ラ・ナベ>

 

<素朴な馬蹄形アーチ>

 

<バシリカ入口の柱頭に刻まれた西ゴートの“十字架”>

 

 バシリカ内部は薄暗く、まだフレスコ画などもありません。それでもよく見ると、柱頭部分に深く彫刻がされていますね。

 

 ここからはプレ・ロマネスクの柱頭芸術をご覧ください。

 

 

 ロマネスク以降になると、教会内部に施される彫刻やフレスコ画にも、テーマに ある程度の決まりごとが出て来ますが、プレ・ロマネスクは実に自由です。 

 

 

 自然をモチーフにした図柄が生き生きと表現されています。

 

 

 職人たちの柱頭に込められた思いを想像してしまいます。

 

 

 

 

 

 そしてこちらが西ゴート発祥馬蹄形アーチです。

 

<サン・ペドロ・デ・ラ・ナベの内部にある西ゴートの馬蹄形アーチ>

 

 ちなみに下記が、馬蹄形アーチが繰り返される有名なコルドバのイスラム芸術メスキータ(Mezquita)

 

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mosque_Cordoba.jpg

By Timor Espallargas [CC BY-SA 2.5 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5)], from Wikimedia Commons

 

 こうしてみるとよく分かりますね。

 

 ちなみにメスキータのアーチを支えている“素敵な柱”は、西ゴート時代もしくはローマ時代のバシリカから拝借した“リサイクル”です。

 

 

<およそ1400年前の洗礼盤>

 

 サモラ県に残された秘蔵プレ・ロマネスク「サン・ペドロ・デ・ラ・ナベ(Iglesia de San Pedro de la Nave)」はいかがでしたでしょうか?

 

 ここは、聖地サンチャゴ・デ・コンポステラへの巡礼ルートにもなっています。

 

<サン・ペドロ・デ・ラ・ナベにある聖地サンチャゴ・デ・コンポステラ巡礼の道を示す看板>

 

 『プレ・ロマネスクを知らずして、ロマネスクは語れず

・・・』ということで訪れる機会がありましたら是非!

 

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