2021年11月12日、暗闇坂に大人が楽しめる至福のレストランがオープンしました。ベイクドアラスカやダックプレスなどの古典料理を蘇らせ再構築。懐中時計で時計の針を戻し、当時の富裕層のごとくその時間や料理を味わい堪能できる、1日1組のみのレストランです。まるで秘めごとのような時間を1組だけで堪能させていただきました。

 

店名は、

『Nose Savoir-Faire(ノセ・サヴォアフェール)』

店名の由来はフランス語で、「Savoir=知る」「Faire=する」という2語で作られた造語で、近年フランスのメゾンが大切にしている言葉。時代の流れに乗りながらも今までの経験や知識を大切にしながら新たな世界を作り上げていくという奥深い意味をこの店名に込めたそうです。日本語で言えば、武道などの「守破離」に当たるのでしょうか。経験豊富なシェフだからこそ掲げられた店名とも言えましょう。

 

 

伝統料理に新たな息吹を吹き込んだのは、能勢和秀氏。フランス料理界の重鎮 志度藤雄氏に師事した後、「シェ松尾」の松尾幸造氏のもとで勤務。松濤レストランでは料理長に就任しました。「俺のフレンチ」では立ち上げから関わり、日本におけるフランス料理の変遷に寄り添い、伝統と新たな潮流を交差させ、料理の楽しさを発信してきました。『Nose Savoir-Faire』は、そんな能勢氏の集大成。ブラックを基調としゴールドをあしらった空間には、シェフズテーブルのようなフラットなカウンター。贅沢を知る大人の為のハイエンドな世界が楽しめるレストランとなりました。

 

 

メニューには、シーリングワックスのような押印。しかもゴールドです。

能勢和秀シェフのサインも書いてありました。

まさに今宵だけの秘密の宴ともいうべき演出ですね。

 

 

JIYO

"JIYO"つまり滋養という名のスープです。それもそのはず。すっぽんのダブルコンソメというスタートは贅沢なスープ。濃厚だけどクリアで胃袋も温まり、食事がスタートします。『Nose Savoir-Faire』では器にもかなり気を使っていましたが、スープは真鍮に木製の器。木製なので手に持ったり口に当てたりしても柔らかで熱くありません。口に入れる物、手に取る物も含め食事が楽しめる配慮を感じたスタートでした。

 

 

大黒神鳥の先端

ブラックの空間に、ゴールドの蓋付きの器が登場しました。

 

蓋を開けると、海苔で作られた黒いピラミッドが登場。

 

世界戦略的かきとして通常1年かかる牡蠣を3〜4ヶ月で育ててしまうという、若牡蠣「先端(sentan)」。欧米市場進出を見据え、ノロウイルスの存在しない海域である広島県大黒神島世界規格で作られた新ブランドです。フランスで食べる牡蠣のように丸く、小ぶりでありながらぷっくらした身の入った牡蠣は、低温で優しく火入れ。

能登の初摘み岩のりをふんだんに使い、クリームとクリームチーズで合わせています。

組み合わせとして確実に美味しいやつですね。味が濃厚な牡蠣に磯の香りを纏わせクリームでコーティングし、クリームチーズの酸味も少し添加。シャンパーニュの方は極上の味わいなのではないでしょうか。お酒を飲まない私にも最高の味わいでした♡

 

 

活オマールブルーが登場しました。まだ生きていたんです〜。

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ブルターニュの青い宝石

炭火で焼いてたたき風にしていただきました。最後に自家製のバラのエッセンスの高貴な香りの組みあわせ。オマールの風味ともよく合いこれにはびっくりしました。

 

先ほどまで生きていたオマールは身が引き締まりまた甘〜い。ここに合わせたのは濃厚な焦がしバターのソース。手前のキューブにセップ茸の香りと共に閉じ込めていました。添えられたホワイトアスパラガスは2週間ほど乳酸発酵をさせたピクルス。メインともなりそうなほど立派な海の宝石が惜しみなく使われたリッチな前菜でした。

 

 

TMD.1

黒い宝石・白い宝石

黒い宝石はキャビア、白い宝石は白子というゴージャスな組み合わせ。

最後にキャビアを丁寧に乗せて仕上げていきます。

 

 

登場したのは濃厚な味わいの徳島県の「たむらのタマゴ」で作られた天然のふぐの白子のフラン。黄身の味がしっかり厚みのある卵は濃厚な、白子とも絶妙な科学反応をおこし、軽いながらも極上のフランを作り出します。ソースはキャビアという贅沢。

 

TMD.2

古代ローマの晩餐会

桐の特注プレートに盛り付けられてきたのは、フォアグラと柿。甘さの同調ですね。

ローマ時代にはフォアグラが晩餐会に登場したということで、タイトルが付けられています。10年熟成のみりん粕につけたフォアグラは焼き穴子と共に。

 

ピンクグレープフルーツのシートでフォアグラのテリーヌをカバーしています。柿はフランボワーズビネガーと蜂蜜で作ったマリネで、これはちょっといい意味で軽い裏切りがあり楽しかったです。最後にブレンドされたスパイスを添えて味の変化球。

 

見てみてください、このフォアグラ!嫌な匂いは抜け、美味しい味わいだけを引き出しています。小さなフォアグラですが、穴子のリエットを重ね熟成味醂を重ねています。少し白味噌も入っていたのか、味醂との組み合わせで日本人も素直に食べらるフォアグラに。古代ローマの人たちの贅沢な晩餐会に思いを馳せていただきました。

 

 

萩の甘鯛とクレオパトラ

クレオパトラは男性に会う前に馬乳とサフランのお風呂に入りお肌のお手入れをし、また高貴な香りを身にまとい夜を迎えたという伝説から付けられた名前です。

なんだかローマの晩餐といいクレオパトラといい壮大なロマンを感じますね。

 

柚子風味のサフランのソースの上には、ふっくら焼けた萩の甘鯛。

下にはカーボエネロを焼いたものと、生のコーンスプラウト。綺麗にカットされた蕪も乗っています。アクセントは寒しじみの泡でしっかりした味のアクセント。

このお皿の中には、甘い、苦いなどさまざまな味が融合していました。

メニュー名といいシェフの味わいのバランス感覚に脱帽な一品でした。

 

 

ビュルゴー家

フランスを代表するシャラン鴨の生産者"BURGOU(ビュルゴー)"。ルージュの肉色の窒息鴨として有名ですね。これを炭火で焼いていきます。皮目がいい色合いですね。

 

『Nose Savoir-Faire』では、全て目の前で仕上げていくので、塩胡椒をふる様から、盛り付けまで全て見届けられます。まさに至福のシェフズテーブル。

 

ソースは、カシスと黒ニンニクで作った濃厚なコクとフルーティーな風合い。

 

ガルニチュールは貴腐ワインでコンポートにした姫りんごです。

アクセントにくるみも添えてありましたが、どうです。このエロチックなお料理。

まさに、この黒い空間で映える絶妙なメインですね。

 

 

TMD.3

萩の見蘭牛と幻のコウタケ

見蘭牛は仕上げに薫香を忍ばせて。開けた時にふわっと薫香が立ち上ります。

 

 

天然記念物の三島牛の血を引く見蘭牛のサーロインは、オーガニックの焼き野菜と香茸を合わせて。見蘭牛はサーロインの脂が強いワイルドな感じもしましたが、いやいや、そのジューシーな味わいと脂の美味しさが口に広がる美味しさでした。

 

そして、1800年代のフランスのダックプレスが登場しました。手に入れた時には中がボロボロだったそうですが、何軒も断られながらも復元してくれる業者さんも見つけたとか。『Nose Savoir-Faire』で拝めるといっても過言ではない代物です。

 

ダックプレスはかなり原始的な道具。巨大なネジをハンドルで〆ていき、鴨の骨や内臓から血液をプレスすることにより、絞り出していきます。ソースに添加するジュをこのマシンでとってくわけですが、古の人々のなんとも優雅で手間を惜しまぬ作業なのか!現代も手間をかけたお料理というのが嬉しいものですが、食という欲求を満たす上で、お金をかけた壮大な道具を使ってでも美味しいのが食べたい、作りたいという人々の欲求は今も昔も変わらぬようですね。是非美しい道具の細部と美味しいものを作るために昔の方も苦労したであろう動画となっていますのでご覧くださいね。

 

今回はこれをゴージャスなトリュフと合わせて。さて何ができるんでしょうか。

 

アンテイークのガラスのクロシェを開けるといい香り〜。極上な瞬間ですね。

 

 

青い宝石ふたたび

先ほどダックプレスで絞りだしたオマールのビスクを使い、雲丹とトリュフを合わせリゾットを作ってくださいました。贅沢極まりないですね。

 

 

アラスカ

ベイクドアラスカが登場しました。こちらも古典的なメニューです。1876年にデルモニコスのシェフ、チャールズ・ランホーファーがアラスカがアメリカ合衆国領となったことにちなんで名付けたという説が有力なようです。外は温かく中は冷たいことから、「アラスカ・フロリダ」とも呼んでいたそうです。類似の食べ物もよくありますし、熱いと冷たいの対比は現代にも使われいますが、いずれにしても美味しい組み合わせは今も昔も変わらないということでしょうか。クレープシュゼットでも炎の演出をしますが、今のようにスモークやエスプーマがあるわけではありませんよね。当時レストランでの一番の演出といえば炎だったことが伺える今に残る料理ですね。

 

アイスクリームの周りにメレンゲを纏わせ、こんな風に火をつけていきます。このダークな空間だからこその演出じゃないですか〜。しかもちょっと照明も落として。贅を極めたこの演出に、私たちが盛り上がったことは、容易に想像できるかと思います。

 

クリームの下はビーツのアイスクリーム。なんと中にトリュフがたくさん仕込まれていました。トリュフを使ったスイーツも時折いただきますがこれは本当に美味しかった。ベイクドアラスカでなくても食べたいアイスクリームでした。

 

パナマのジャンソン農園のゲイシャ種という最高級のコーヒー豆をマダムがハンドドリップで丁寧に淹れてくださいました。マダムは食環境コンサルタントとして国際的なイベントにも携わった後、雑誌のスタイリングや執筆などでも活躍されています。

 

クリアで華やか。格別の味わいをグラスでワインのようにいただくという贅沢。

 

2002「あき」と「さち」

ダークな空間にこの真っ赤ないちごが映えます。いちごが一気に大人になりました。

 

最後のいちごはあめがけで。カリッといった食感と中から溢れる果汁の酸味でした。

 

 

さまざまな物語を紡ぎながら、19世紀のお料理が現代のテクニックと最高の食材を駆使し能勢氏の手により再構築。暗闇坂の隠れ家でいただく贅沢極まりないレストランは、大人だけが許される密かな楽しみでもあります。新型コロナウイルスのため、現在予約は一日1組なこともあり、親しい友たちと共に、料理が作られていく全工程を楽しみながら、心ゆくまでラグジュアリーな時間が過ごせるシェフズテーブルでした。

 

 

 

Nose Savoir-Faire

(ノセ・サヴォアフェール)

東京都港区元麻布3-12-4 SP元麻布 2F

050 - 3159 - 8881( 営業日 12〜17時)

Nose Savoir-Faireフレンチ / 麻布十番駅六本木駅広尾駅
夜総合点-