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 「猫の島」ネコ100匹を一斉不妊手術 島民との“共存作戦”を追った

不妊手術を終えたネコ。術後の印として右耳をV字にカットされている=高松市の男木島(「どうぶつ基金」提供)
 島民よりもネコの数が多い「猫の島」として知られる高松市の男木(おぎ)島で6月、島にすむネコの不妊手術が一斉に行われた。増えすぎた野良ネコによる農作物被害などに悩む島民らが、ネコの殺処分ゼロを目指す公益財団法人やNPO法人と協力して実施した。島で活動に取り組む男木地区コミュニティ協議会の木場健一会長(68)は「島民もネコも幸せに暮らせる島にするための措置。今のままでは島民の猫嫌いがエスカレートしてしまう」と明かす。瀬戸内海に浮かぶ「ネコの楽園」。島民とネコの“共存作戦”を追った。(前川康二)
 ネコ目当ての観光客増も、島民にとっては痛しかゆし
 高松港(高松市)の約10キロ北に位置する男木島。外周5キロにも満たない小さな島に、島民約180人より多い約200匹のネコが暮らす。
 ネコは15年ほど前から徐々に増え始めたという。これに伴い、ふん尿による悪臭や夜間の鳴き声などに加え、腹をすかせたネコが農作物を食い荒らしたり、漁網を食いちぎったりする被害が増加。島の自治会は市の保健所などに相談したが、対応が追いつかず、深刻化する被害に悩まされ続けてきた。
 数年前に動物写真家が男木島を取り上げたことからネコ目当ての観光客が増え、餌を与えるようになったこともネコの増加に拍車をかけているという。
 島の70代の女性は「トウモロコシもキュウリもなんでもかじっていく。夜も鳴き声がうるさい」とこぼす。漁師の男性(80)も「網に着いた小魚を網ごと食いちぎる。観光客は写真をとって喜んでいるが…」と頭を抱える。
 2日間で117匹を手術
 ネコは年2~3回妊娠可能で、1回につき2~8匹を産むため、放置しておけば被害は拡大し続ける。
 一方で、ネコ目当ての観光客の増加で島が活気付いているというのも事実。「人間とネコ、なんとかこの島で共に幸せに暮らせることはできないか」。対応に苦慮した木場会長は、野良ネコの問題に対処する活動を高松市を中心に続けるNPO法人「BONにゃん」に相談。全国で猫の無料不妊手術を行っている公益財団法人「どうぶつ基金」(兵庫県芦屋市)の協力を得て、ネコのオスとメス両方に不妊手術を施すプロジェクトをスタートさせた。
 野良ネコを捕獲し、手術を施した上で元の場所に戻すという活動で、まずBONにゃんのメンバーらがネコの数や居場所、栄養状態などを確認する現地調査を実施。その後、手術に耐えうる体力を付けさせた上で、捕獲しやすくするため約1カ月間、決まった場所と時間に餌付けした。
 そして6月に入り、獣医6人と、どうぶつ基金のスタッフらが島を訪れ、BONにゃんのボランティアや島民らを含めた計約30人で“作戦”をスタート。餌やり場に集まったネコを1匹ずつゲージに入れて捕獲し、島の高台にある保育所跡に移動。待機した獣医がネコに麻酔を注射し、次々と不妊手術を行った。
 手術を受けたネコは、印として片耳の先端をV字型にカットした。麻酔がきいているため、痛みはないという。術後は半日ほど安静状態にして見守り、その後に捕獲した場所に戻した。
 2日間で計117匹の不妊手術を行ったが、手術を受けていないネコがまだ約80匹いるとみられ、今後も島民とBONにゃんが機会をみて捕獲・手術を続けていく。
 「世界で一番 ねこにやさしい島」
 ネコの不妊手術が終わったことで、島では発情期の鳴き声やけんか、マーキングが減るなどすでに効果が表れているという。
 今回のプロジェクトは人とネコの共存を目的としており、協議会やどうぶつ基金はネコをテーマにしたアートプロジェクトも企画した。コンセプトは「世界で一番ねこにやさしい島」。島でネコと島民が共に暮らす姿そのものを“アート”ととらえ、オブジェなどを制作するという。
 手始めに7月には、どうぶつ基金が昨年開催したネコのポスターコンテストに寄せられた作品約200点を島内に飾るという。また、ネコと触れ合える「猫ハウス」を開設し、ネコたちの食事や生態を管理する計画もある。
 ところで、島のネコが全て「不妊のネコ」になれば、いずれ男木島は「猫の島」ではなくなってしまう。そこで島では対応策として、全国で殺処分が予定されるネコを引き取り、不妊手術を施した上で島に移住させることも計画している。
 どうぶつ基金の佐上邦久理事長は「このプロジェクトがうまくいけば、(本当の意味で)男木島はネコの楽園になる」と話す。
 男木島は、瀬戸内海を舞台に開かれる現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」の会場で、アートを目的とした観光客も多い。ただ、普段ネコとともに暮らすのはあくまで島民。これまでネコの被害に遭ってきた島民が、ネコとの共生を今後も受け入れるかどうかは未知数だ。
 木場さんは「島民の意識が変わるには時間がかかるかもしれないが、共生の道を探っていきたい」と話している。
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