「森木、わりーな。やっぱ、俺が行くわ」
俺がそう言うと森木は立ち止まって「あ、そ」と言った。
随分素直に俺に譲るんだなと思った。
思ったが、森木が俺の性格を熟知しているからこその行動だった。
自分が行くといけば必ず俺が乗ってくるのを見越した行動だった。
俺は森木の目を見たが、お互い半笑いだった。
阿吽の呼吸を感じた。
そして二人で歩き始めると、後ろからヒロシが話しかけてきた。
「何だよお前等。きもちわりぃよ」
俺はヒロシの言葉に振り向かずに歩き続けた。
「おいってば」
それでも振り向かないで歩いた。
もうマサシの家の前に着いていた。
すると後ろから駆け寄る足音が聞こえた。
ヒロシが駆け寄ってきたのだ。
そしてヒロシは肩を掴んで俺を止めた。
「なんだよ。帰れよお前」俺が言った。
ヒロシは眉間にしわを寄せて悔しそうな顔をした。
坂東高校との喧嘩のあと、一人で逃げてしまった自分を後悔しているのだろう。
「帰んねーよ。帰んねー」
「聞こえねーわ。行こうぜ森木」
俺はそう言ってまた進もうとした。
するとヒロシは強い語気で「帰んねーって言ってんだろ！」と言った。
俺と森木は顔を見合わせて笑った。
そして俺が言った。
「そんなんでついて来れんのかぁ？」
ヒロシは俺を睨み上げた。
すると家の中から男が出てきた。
マサシだった。
俺達を見て一瞬戸惑った顔をしたが、すぐに喧嘩師の顔になって俺達を睨み付けた。
僅かな沈黙の後で俺が言った。
「よぉ、遊びに来たぜ」
～チキン番外編完結～
井口達也
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『アウト～不良の流儀～』発売日2014/1/20
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2014/1/20発売
同日アウト四巻発売
※登場人物おさらい
坂東高校
マサシ(坂東高校番長)
リョウキ(ナンバー２)
絵美(達也の恋人？)
菜穂(テルとヒロシが惚れた女)
シンゴ(坂東高校一年金髪坊主)
サダミツ(坂東高校一年筋肉マン)
ワタル(唇ピアス。坂東高校一年)
達也(狛江の馬鹿)
テル(狛江のカバ)
ヒロシ(狛江の九官鳥)
森木(狛江のダンディ)
ワン公(狛江の土佐犬)
ルパン(狛江の怪盗)
ヒデくん(鼻毛が出てる人)
ミカ(ヒデくんの彼女でありヒロシの実姉)
ヤスシ(達也を奈良まで運んでくれたトラックの運ちゃん)
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※一家に一冊！
チキン (ａｍａｚｏｎに飛びます)
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チキン番外編①