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チキン番外編①
ゲラゲラと笑う男達に、周りの乗客たちは下を向いたまま迷惑そうな顔をしている。
俺の膝に誰かが手を置いた。
ヒロシだった。
「行くんじゃねーぞ」という事だろう。
すると俺より先にテルが、女の子に声をかけた男にすっと近寄り、襟首を掴んで後ろに引きずり倒した。
そしてそのまま顔面に拳を落とした。
殴られた男はその一発で完全にのびてしまった。
テルはとにかくカバぢから、いや、馬鹿ぢからだから、これをされたらさすがにキツイ。
あっという間の出来事だった。
それを見て、座っていた男達がテルに向かって走り出した。
テルは前蹴りをして一人の突進を止めた。
残りの一人はテルを殴り飛ばした。
俺はヒロシの制止もお構いなしで立ち上がって、テルを殴った男を殴り飛ばした。
周りの乗客はあまりの状況に声も出さずに、潮が引くように俺達から離れたのだった。
さすがに関わりたくないと思ったのだろう。
もみ合いになってすぐに電車はまた次の駅に着いた。
ドアが開くと、テルは前蹴りで止めた男に頭突きをして、のけぞったところにタックルをし、なんとそのまま担ぎ上げた。
そしてドアに向かって運び、そのまま外に放り投げた。
ついでに倒れている男も引きずり出した。
俺とやりあっている男はなかなかしぶとく、体格に劣る俺を掴んで離さなかった。
するとその男もテルが引き剥がし、髪とベルトを掴んで持ち上げ、そのまま外に放り投げた。
コンクリートに叩きつけられた男達はすぐには立てなかったが、一人は立ち上がり、ドアが閉まりかけた所によろよろと近付いてきた。
なんとか中に入ろうとしたが、ドアは閉まり、手だけが挟まれた形になった。
すると、それまで何もしていなかったヒロシが、ドアを掴んでいるそ男の手を蹴り上げた。
手はドアから離れ、ドアは閉まったのだった。
その様子を見てテルがヒロシに言った。
「お前…ひでーな…」
「お前らの方がひでーよ。何で着く前に喧嘩すんだよバカ!」
周りの乗客は当然俺達から離れたままだ。
誰も声を出さない。
その代わり、誰も駅員を呼ぶような事はしなかった。
電車はそのまま発車した。
その後もヒロシの小言は続いた。
「気まず過ぎるよ」
そう言ってヒロシは次の駅で俺達を引いて電車を下りた。
「何で下りるんだよ」
俺がヒロシに聞くと、ヒロシは言った。
「周りの人達チラチラこっち見てるしさぁ、気まずいって。それに誰かがチクったらヤバイじゃん。っていうかお前らほんとにバカ過ぎるっつーの。場所考えてよほんと」
俺達は一服をして次の電車を待った。
テルはしみじみとした口調で言った。
「タバコ、んめーな」
「何たそがれてんだよ」
俺がテルにそう言うと、ヒロシが口を挟んできた。
「いい事した感じになってんじゃねーよ。だいぶ周りの迷惑になってっから」
「カッカッカ」
テルは満足そうに笑って、タバコをもう一吸いしたのだった。
しばらくして次の電車が来て、ドアが開いた。
~つづく~
井口達也
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