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チキン番外編①

チキン番外編②

チキン番外編③

チキン番外編④

チキン番外編⑤
チキン番外編⑥
チキン番外編⑦

チキン番外編⑧

チキン番外編⑨

チキン番外編⑩

チキン番外編⑪
チキン番外編⑫

チキン番外編⑬

チキン番外編⑭

チキン番外編⑮

チキン番外編⑯
チキン番外編⑰

チキン番外編⑱



帰れと言ったら、ヒロシは俺を怪しむ目で覗き込んだ。




「達也ぁ、お前、絶対これから女と会う感じだろ?」




「んな事ねーよ。寝るんだよ」




「なーにが足の骨が折れてるだよ。さっきまで俺を殴ろうとしてたくせに」




「いてーいてー。ヒロシを助けにいったせいで大怪我したわ」




「くっ…」




ヒロシが言葉に詰まった時、また電話が鳴った。




ヒロシは電話に向かって一直線に走った。




きっとまた女からの電話だと思って、俺の邪魔をしようとしたのだろう。




あまりの動きの素早さに、ヒロシに先を越されてしまった。




そしてヒロシは容赦なく電話に出た。




「もしもし?君、えみえみって子?達也ね、足なんて折れてねーよ。そんなことより俺とこれから遊ばない?」




俺はヒロシの頭をひっぱたいて電話を奪い取った。




「もしもしえみえみ?ごめんな。バカがいてさ」




すると、電話から聞こえてきたのは図太く低い、カバ男の声だった。




「はぁ?さっきから何だおめーら。えみえみだぁ?女と遊ぼうとしてんのかよ」




テルだった。




俺はまた無条件に電話を切ろうとした。




「じゃあな。カバ。いや、バカ」




「待て待て待てーい!コラ!さっきもいきなり切りやがってよぉ!心配して電話かけてんだろうがよ」




人がやられたのを喜んでおいてそれはない。




俺はテルに言ってやった。




「用件はそんだけか。じゃあな」




「待て待て待てーい!おい達也、女と遊ぶなら俺もまぜろよ」




「うっせーな。切るぞ」




「あのな、おめーら、俺がどこにいるか知ってんの?」




「知らねーよ。じゃあな」




「待て待て待てーい!今お前の団地の近くだからさ、今から行くよ」




「なんでいるんだよ。帰れよ」




「心配だから来たんだよ」




テルは俺がやられると喜ぶが、反面、本当に心配しているようだった。




実は、少しだけいい奴だった。




こうなるといくら止めても来るので俺も諦めた。




無言で電話を切って、数分と経たない内にテルがやってきた。




テルは俺の顔を見て大笑いしたが、すぐに神妙な顔になった。




「狛江、ナメられてんじゃねーよバカ」




「うっせーよカバ」




「よえーんだよ達也」




「おめーよりつえーよカバ」




「は?やんのかコラ」




「上等だよカバ」




「俺の方が勝ち越してんだろうがよ達也」




「嘘つくんじゃねーよ。俺の方が3回勝ち越してんだろうがよ」




「俺の8勝5敗19引き分けだろうがよ」




「お前は5勝だろ」




一触即発の雰囲気の中で、ヒロシが話し始めた。




ヒロシはネズミーランドでのことを細かくテルに説明したのだった。




森木が妹の為に買ったマグカップが割れた話をしたら、テルは顔をしかめ、あごをしゃくれさせながら泣き始めた。




俺はテルに言った。




「何その不細工な顔」




「う、うっせぇ、うっせぇ、うっせぇやい。くぅ…」




テルは極端な男だ。




周りから見たらコワモテの風貌だが、誰よりも涙もろく、情に厚い。




鼻水まで垂らしているテルは、落ちている俺の服を拾って鼻をかんだ。




「コラ、何すんだカバ!」




テルは一呼吸おいて話し始めた。




「達也よぉ、そいつら今どこいんの?」




「さぁな。地元に帰ったんじゃん?」




するとヒロシが割り込んできた。




「浅草らしいよ」




それを聞いて、テルの目が光った。




「ヒロシ、ナイス」




テルの言葉に親指を立ててこたえるヒロシ。




そしてテルは立ち上がって言葉を続けた。




「オラ、おめーら、行くぞ」




~つづく~



井口達也



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