絵美とは以前からの知り合いのようにすぐに打ち解けた。
向こうも柔らかい感触で接してくれた。
話を聞くと、絵美は高校生だった。年下は、別に嫌いではないらしい。
「たっつんは年上が好きなん?」
いきなりあだ名で呼ばれて驚いた。
関西人特有の気質なのかは分からないが、距離感を一気に縮める人懐っこさと明るさがある子だった。
「たっつんって何だよ」
「嫌なん?なんて呼ばれてるん?」
「つん、って変じゃん。せめてたっちゃんとかさ」
「じゃん、って何だか東京っぽいね。狛江って東京なん?」
「狛江は東京の中心地だっつーの」
「それじゃあ、つんつんね」
「もはや名前が全く分からないじゃん」
「いいやん。かわいいよ」
可愛いといわれて照れた。
俺をからかって遊んでいるのだろうか。
雰囲気からしてそういうわけではなかった。
恋人感覚のような一時を、悪ノリ気味に楽しんでいるようだ。
「んじゃあ、俺はえみえみって呼ぶわ」
俺がそう言うと絵美は吹き出した。
ふざけたあだ名を付け合う事で、親近感がまた強まったが、このままでは友達止まりだ。
歩く二人の間には、まだ若干の距離もある。
俺は手を握りたかったので、二人の手が軽く当たるまで絵美の方に近付いた。
一度手が軽く触れ合ったが、絵美は無反応だった。
二度、三度と触れると、絵美は歩きながら言った。
「手、繋ぎたくなるやん」
「でしょ?」
「わるい男やなぁ」
「つないでいい?」
「先生もおるからダメ」
「えみえみ、どうしてもダメ?」
「つんつん、あきらめて」
手はつなげなかったが、雰囲気は良かった。
何か乗り物にでもと思ったが、苦手だという事で断られた。
俺としてはただ話しているだけでも十分楽しかったので、飲み物を買って二人でベンチに腰掛けた。
「えみえみ、今度大阪遊びに行っていい?」
「ええよ。案内するわぁ。つんつんはよくナンパとかするん?」
「するわけねーじゃん」
俺がそう言うと、絵美は俺の顔を横から覗き込んだ。
「んー…」
「えみえみ、近い。顔、近い」
「んー、おでこに、今度は嘘って書いてるよ」
そう言って一人で笑っていた。
周りからみたらカップルがじゃれあっているような光景だった。
絵美は大阪で俺は東京。
出会いはナンパ。
遊びに行くとは言ってみたが、自由時間が終われば二人は別れてもう会うことは無いだろう。
そう考えるとこの恋愛は現実的ではなかった。
まさにここは夢の国。
きっとこの場だけの出会いになるのだろう。
二人は無意識でそう感じているのか、純粋に楽しいからなのか、夢中になってお互いの事を話したのだった。
しかしそんな二人の幸せの時間は、長くは続かなかった。
「なぁにしてんねん絵美」
かすれた声だった。
俺と絵美の前に、一人の男が現われた。
井口達也
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