恐怖!ネズミーランドの巻①





屋上に上がってきたヒロシの手には、やはり思い出旅行のプリントがあった。




そして、プリントをひらひらさせながらこう言った。




「達也ぁ!お前、これ行かないよな?」




一瞬だけヒロシを見て、俺はまた空に漂う煙草の煙に目を戻した。




すると森木がヒロシに言った。




「俺も今達也に聞いたところなんだけどよぉ、めんどくせーってよ。」




「だよな。めんどくせーよな。うん。達也にはウハウハドリーム…いや、ネズミーランドなんて似合わねーもんな。」




ヒロシの意味深な言い方が面倒臭くなったので、俺は身体を起こしてヒロシを見た。




核心を聞きたかった。




「ネズミーランドはよぉ、女でごった返してるって本当かよヒロシ。」




「ん?んー、誰がそんな事言ってんの?あんな所ガキばっかでしょ。」




「ルパンが言ってたぜ?」




するとヒロシはルパンを見て、顔をしかめた。




余計な事を言いやがって、ということだろう。




動揺しているようだった。




「あ、あー、そうだったかな?まぁ、そんな日もあるかもね、うん。」




「お前、俺を行かせたくないみてーだけど、何かあんの?」




「そんな気ねーよぉ。達也の事だからさ、行かないんだろーなーって。」




焦るヒロシを横目に、今度は森木が話し始めた。




「達也が行くとさ、片っ端からナンパするじゃん?」




「しねーよ。可愛い子しか。」




「だろ?ヒロシは競争相手を減らしたいんだろ。」




俺はヒロシを見た。




森木の言葉が図星だったのか、ヒロシは俺を目が合うとすぐにそらして、とぼけた顔をして煙草をふかした。





「おし…行くかぁ。」




俺がそう言うと、ヒロシは少し肩を落とした。





俺は右手を軽く握りこんで、人差し指と中指の間から親指を少し出して、いわゆる「セッ○ス」を表す形を作り、ワン公に向けた。




「ワン公、お前も行くぞ。」





「ヒュウ~!」




これから起こる事など知る由も無く、のん気に喜ぶ屋上の馬鹿共。




そして思い出旅行当日を迎えた。





~つづく~



井口達也




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