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チキン番外編①
「オラ、おめーら、行くぞ」
テルはそう言って立ち上がった。
一度熱くなったテルをなだめるのは至難の業だ。
一人で行って絵美を驚かせる魂胆だったが、どうやらそれは難しそうだ。
俺は渋々立ち上がった。
「ヒロシ、何やってんだよ。行くぞコラ」
いざ行くとなるとあまり乗り気には見えないヒロシの顔を見て、テルは語気を強めた。
「どうやって行くんだよ」
ヒロシがテルに聞くと、テルは眉間にしわをよせて、車を運転する真似をした。
ヒロシは呆れたように言った。
「車なんてねーじゃん」
「下にあんじゃん。達也の親父のが」
テルはそう言って俺を見たので、俺は「テル、お前が運転するならいいぜ?」と言った。
するとヒロシが言った。
「いいぜ?じゃねーよ。また鬼兵隊の時みたく人でも轢いたらどうすんだよ」
俺とヒロシはテルを見た。
「ヒロシ、達也、おめーら俺をナメてんだろ?あれからかなり上達したっつーの」
そう言ってテルはさっさと玄関に向かった。
俺もその後を追うと、ヒロシはぶつくさ言いながらもついてきた。
いざ車にのると、さすがに俺も少し怖かった。
俺よりはましだが、テルの運転は怖い。
しかも、さっきまで余裕の表情だったテルがカチコチに緊張している。
「なぁにが上達してるだよタコ。いや、カバ。ガチガチじゃねーかよ」
助手席から俺がつっこむと、テルは「ううううるせぇ。だぁーっとけ」
テルは深呼吸をして車を発進させた。
しかし、車は急発進して壁にぶつかった。
「だから嫌だって言ったんだよ!俺帰る!」
ヒロシはそう言って車を下りようとした。
テルは焦って車をバックさせたが、これも急発進。
車を下りかけていたヒロシは大きく振られ、シートに叩きつけられた。
俺は爆笑した。
「テル、おまえが上達したのは良く分かったからさ、電車にしようぜ」
俺がそう言うと、テルは安心した顔をした。
それから俺達は狛江駅に向かい、一路浅草を目指したのだった。
~つづく~
井口達也
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