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絵美から手を握られて、俺はようやく絵美に会えた気がした。




「怒ってんの?」




絵美は黙って首を横に振った。




「不機嫌そうじゃん」




それでも絵美は無言だ。




「ねえ」




俺がそう言うと、絵美は俺の手を引いて歩き出した。




ヒロシがそれに気が付いて、何か言ったようだったが、菜穂が話をそらして上手く誤魔化してくれたのだった。



きっと絵美と俺を二人きりにさせる為だろう。




ホテルの塀沿いに少し歩くと、ホテルの裏側に出た。




角を曲がってヒロシ達から見えない場所にくると、絵美は急に笑い出した。




何がなんだか分からない俺の顔を見て、絵美は言った。




「つんつん、めっちゃびっくりしたやーん!」




「怒ってるんじゃないの?」




「ドッキリ返し~」




暗い表情をしていたのは、なるほどそういう事かと安心した。




そんな俺にむかって、絵美は言葉を続けた。




「会いに来てくれたん?」




「んー、まぁ…ね」




「でもやっぱりまた喧嘩してたしなぁ…。絵美に会いに来たんやなくて、喧嘩しに来たんとちがう?」




当然俺は「会いに来たんだよ」と答えた。




絵美は満足そうな顔で言った。




「つんつん、ありがとぉね。菜穂にね、つんつんが来てるーって聞いてね、めっちゃ舞い上がったわぁ」




喜ぶ顔を見て、来てよかったと思った。




その後、ここまで来る途中の話や、絵美達の高校のことなど、他愛もない話をした。




やはり近くで見る絵美はかわいい。




気が付けば、二人は向かい合ったまま身体を寄せ合っていた。




まるで恋人だ。




俺の中では完全にそういう思いだが、やはり絵美はどこかつかみ所がない。




盛り上がってきた所で、俺は切り出した。




「えみえみ、ネズミーランドの続き、どうかな」




「ん?何かあったぁ?」




絵美はすっかりキスのことを忘れているようだ。




「いや、まぁ…ね」




「つんつん、ちゅーやろぉ?」




「まぁ…そうだね」




「つんつん」




「あ?」




「めっちゃ好き」



~つづく~




井口達也




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