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チキン番外編①
自販機コーナーに入ってきた男達は俺と目が合うと、一瞬固まった。
一人は出っ歯の剃り込み坊主、もう一人は茶髪で髪を縛っている細眉の男だ。
男達は「あれ…お前誰だっけ」とは言わなかったが、明らかに俺が誰なのかを考えているようだ。
その間わずか三秒となかっただろう。
茶髪の男が大きく目を見開いた。
どうやら俺が誰なのか気が付いたようだ。
男は一瞬後ろを気にして、また俺を見た。
先生に見つからないか、邪魔が入らないか確認したのだろう。
茶髪の男は大きな声を出すわけでもなく、静かに口を開いた。
「コラ、ガキ。今日うちの奴等と揉めたガキっちゅうのはお前やろ?」
どうやら俺やヒロシたちが直接揉めた相手ではなかったが、静かな口調の中に、威圧的な雰囲気を前面に出してきている。
この場はどうやっても誤魔化せそうにもないし、はなからそういうつもりも無い。
しかし俺は絵美に会いたい。
するともう一人の出っ歯の剃り込み坊主男が言った。
「多分こいつやわ。金髪のガキがどうとかマサシが言うてたし。おうコラ。どつきまわしたろか」
雰囲気はどんどん悪くなってきた。
僅かな時間で俺の腹は決まった。
こういう場面では先手必勝でぶっ叩くに限る。
俺が口を開こうとすると、俺の後ろに立っている女の子を見て坊主の男が言った。
「あれ?菜穂やないか。何してんの」
この子は菜穂というらしい。
すると菜穂が俺の後ろから話した。
「楽しく話してんやからあっち行ってやー」
「は?お前ナンパされたん?」
「あんたら、マサシらみたいに謹慎になりたいん?嫌やったら早くあっち行ったほうがええよ」
「ガキになめられたままで帰せるわけないやろ。菜穂、お前こそあっち行けや」
坊主がここまで言うと、茶髪の男が話し始めた。
「と言うワケや。表出ろや」
そう言うと、坊主の男に合図をした。
すると坊主は見張りになって周りに目をやった。
数秒して、坊主の男が言った。
「リョウキ、今や」
茶髪の男はリョウキというらしい。
リョウキは坊主からの合図を受けて、俺に言った。
「ちょっとこっちこぉ」
そう言うと、勝手に玄関に向かって歩き始めた。
~つづく~
井口達也
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