俺の口から坂東高校と聞いた靖史は深くタバコの煙を吐いたが、すぐに話を変えた。
「お前等もうすぐ着くで」
靖史の家から俺達が泊まる民宿「山小屋」は車で5分程の場所にあったが、靖史の運転は強引で、あっという間に民宿の看板が見えてきた。
民宿の前にはヒデ君のバンも止まっていた。
靖史はバンの目の手前に車を止めると、「ほんじゃまたいつか。がんばりや」と言って去って行った。
俺の中ではまたすぐに再会するよと思っていた。
何せどうしても靖史の単車を手に入れようと思っていたからだ。
ヒロシは緊張から開放されて顔が明るくなっていた。
するとヒデ君が民宿の中から出てきた。
「お前等来たか!あの人ちゃんと送ってくれたみたいでよかったよ。内心ちょっと心配だったんだよね」
「ちゃんと送ってくれたよ」
俺がそう答えると、ヒロシは「よく言うよ」といわんばかりにため息をついた。
「達也、ヒロシ、皆にはさっきも言ったけどさ、こっちに居る間は俺の言う事はきっちり聞いてもらうよ。こっちじゃ俺が親代わり。絶対に揉め事だけは起こすなよ?」
「分かってるって。くっそきたねー民宿でダラダラと過ごすよ」ヒロシが言った。
「俺もさ、ミカがいるからさ、出かけたりするんだけど、ヒロシ、本当に頼むぞ?特に達也からは目を離すなよ?」
「大丈夫大丈夫。よく見とくよ」
俺は何も言わなかった。
誰が何と言おうとやるべきことをやるつもりだった。
それはヒロシも一緒だ。
惚れた女に会いに来たからだ。
テルとヒロシは傷の手当をしてくれた菜穂に、そして俺はネズミーランドで一目惚れした絵美に。
最大の目的はネズミーランドで俺達が袋叩きにされた相手「坂東高校」の男達とやり合うためだったが、もはや頭の中は九割がた女の事で一杯だった。
俺達の平和ボケした頭に、目が覚める一撃を喰らう事になろうとは、この時はまだ誰も分かっていなかった。
~つづく~
井口達也
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