~前話までのあらすじ~
トイレで大喧嘩した相手と奈良行きを決意した達也。
アカシを知っているこの男と居れば、少しは楽しい旅になるかと思ったからだ。
そこでヒロシを強引に誘い出した。
女を餌に。
そしていよいよトラックはリベンジの街、奈良に向かって走り出したのだった。
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チキン番外編第二章⑯
~本編ここから~
「なんだよヒロシ。さっきからいてーよ」
運転手と俺の間に挟まれたヒロシは、俺を肘で何度も突いてきた。
ヒロシを狭い真ん中の席に座らせたせいで、ヒロシは居心地が悪そうだった。
「席を替われ」という意味で俺を何度も肘で突いてくるヒロシ。
そんな事はお構いなしとばかりにタバコを吸ってごまかす俺。
運転手の入れ墨男もがさつに話しかけて来るが、ヒロシはまだビビっているので簡単な返事しか出来ていない。
するとヒロシが口を開いた。
「女…」
「は?」
入れ墨男がヒロシに聞き返した。
見知らぬ運転手と一緒に奈良まで行く事をかたくなに拒み続けたヒロシを、俺は女を匂わせて無理矢理に説得させていた。
しかし女のアテなんて勿論無い。
入れ墨男は何の事か分からなくて不思議そうな顔をしている。
ヒロシのイライラはピークに達していたようで、ストレートに本題をぶつけてきた。
「女と遊べるって聞いたからこっち乗ったんですけど…」
「女だぁ?いねーよンナもん。坊主君、君が紹介してくれるなら別やけどな。ガッハッハ」
入れ墨男の言葉を聞いてヒロシは俺を睨んだ。
「達也ぁ…さっきの小指はなんだよコラ」
「なんでもねーよ」
「小指を立ててさ、女と遊べるからお前も来いってサイン出してたじゃねーかよ」
「小指のストレッチしてただけだろ」
「小指のストレッチィ?聞いたことねーぞ…そんなストレッチよぉ。クソッタレ…ハメやがったな達也…」
「まぁいいじゃん」
ヒロシの怒りは収まりそうにない。
すると入れ墨男が話しかけてきた。
「なんやお前ら、女に飢えてんのか?」
するとヒロシは即答した。何かもらえそうな雰囲気を感じ取ると即座に擦り寄る癖がある。
「はい。飢えてます。ペコペコです」
「そうなんやぁ。俺も最近長距離ばっかで抱いとらんなぁ…。おし!お前ら!」
ヒロシとしては「おし!お前ら!風俗おごったるわ!」と言われると思っていたのだろうが、入れ墨男は「椅子の後ろにエロ本があるから、お前にやるわ」と言った。
急ブレーキがかかったわけでもないのに、ヒロシはダッシュボードに頭をぶつけた。
がっくりきたのだろう。
「なんや坊主君、エロ本じゃ不服なん?」
「い、いえ、そんなことないッス。あと、ボクの事はヒロシでいいッスよ」
「おう。ヒロシな。俺は靖史(やすし)。そっちの喧嘩バカは達也な」
「靖史さん、こいつの事はどうでもいいッスよ。喧嘩バカっていうよりただのバカなので。あまり関わらないほうがいいッスよ」
「ガハハ。そやな。たしかにそいつはバカやわ」
二人で散々俺の文句を言っているが、俺はすでにエロ本を読み始めていたので気にしなかった。
「靖史さん、怪我してるみたいなんですけど、どうしたんスか?」
「これか?そこのバカに殴られたんや」
「え?靖史さんって達也の親戚じゃないんですか?」
「ん?ちゃうよ?」
靖史の言葉を聞いてヒロシはまた俺を肘で突いた。
一通りエロ本を読み終わったので、俺はアカシの事を靖史に聞いてみることにした。
~つづく~
井口達也
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