チキン番外編第二章⑮
~本編ここから~
「ヒロシぃ、お前も来いよ」
俺がそう言うとヒロシは一瞬言葉に詰まった。
「な、なんでだよ」
顔を見たら、絶対に嫌だということは分かった。
「すぐだからさ、お前も行こうって言ってんだよ」
「やだって」
別にいなくてもよかったが、ヒロシをイジるのは楽しい。
ヒデ君が「それはダメだろ」と言い出す前に先手を打った。
「みか姉さんもさ、俺らが一杯いると嫌なのはわかってんだろ?少しは気を使えよバカ」
心にもない事をさらりと言ってのけた俺は、あえてヒデ君と目を合わせなかった。
「やだって言ってんだろ」
「お前さ、俺の親戚のにーちゃん信用できないっつーの?」
話を摩り替えてみた。
ヒロシは強面の男をチラリと見て、また俺に目を戻した。
いかつい運転手のトラックに進んで乗るはずもないが、断れない状況に追い込んでいった。
頭の回転が速いヒロシ以上に、悪知恵だけは俺も速かった。
「兄ちゃん、いいだろ?」
俺は男に向かって言った。
すると男は「俺はかまわねーけど」と答えた。
決めるならいまだと思った俺は「じゃあ、そう言うことで」と言って話を終わらせようとした。
ヒロシは俺を睨んだ。
ヒデ君は少し考えていた。
さすがに心配なのだろう。
もう一押しだ。
俺はヒロシに向かってすばやくウィンクをして、自分の小指を伸ばしたり曲げたりして「女がらみでいいことがあるよ」と言わんばかりにヒロシにサインを送った。
そんなものは一切無いのだが。
するとヒロシは上目遣いで「本当か?」とサインを送ってきた。
俺は、自信満々にうなずいた。
「ヒデ君、俺も行くからさ、あとで宿で会おうぜ」
ヒロシはまんまとだまされたのであった。
ヒデ君はまだ考えているようだったが、俺が入れ墨男に「お前も協力しろ」という意味で目配せすると、男は「じゃあ、行きますか。俺に任せてください」と言ってくれた。
するとヒデ君は、「んー…じゃあ、お願いします。でも、俺もこいつらの保護者なんで無責任な事はできないんスよ。だから、本当によろしくお願いします」と言って頭を下げた。
入れ墨男はヒデ君に向かって「大丈夫ですよおにいさん。俺、コレで飯食ってますから」と言って運転する真似をした。
ようやく話がまとまり、俺達はトイレを出た。
~つづく~
井口達也
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全てはここから始まった。小説チキンをよろしくだぜ!!
是非手にとって読んでくれい★
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チキン番外編①