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チキン番外編①
トイレに響き渡る破裂音。
ブピビ!ブパ!
俺は入れ墨男が入っているドアを蹴飛ばし、外に出ようとした。
すると中から男が言った。
「クォラ!蹴るんじゃねー!ンナことより、一つ言う事聞いてくれへんか?」
「…なんだよ」
「便所紙がねー。隣から一つ投げ入れてくれへん?」
俺は舌打ちをした。
「すまんの」
「フン」
俺が普通にトイレットペーパーを投げ入れるわけも無く、とりあえず用具入れからバケツを取り出して、上から投げ入れた。
ガシャンと鳴った。
恐らく頭に直撃したのだろう。
「…コラ…冗談が過ぎんぞあんちゃん…」
「わりぃ」
そう言って次はモップを投げ入れた。
ガコ!と鳴ったと思ったら、ドアの内側から男がドアを叩いた。
「次やったらただじゃおかんぞコラ」
「わりぃ」
そう言って次は束ねたホースを丸ごと投げ入れた。
ビタンビタンと音を立ててホースは男に直撃した。
するとトイレのドアが少しだけ開いた。
そして中から男が言った。
「…大人からかうと死ぬぞコラ」
「うるせーよ。くせーから早く閉めろ下痢野郎」
「分かったから早く紙取ってくれやぁ…」
素直な返事だったので俺の戦意はさらに低下し、完全に消えうせてしまった。
今度はトイレットペーパーを投げ入れた。
出て行こうとすると、拭き終わった男がトイレから出てきた。
「ふぃ~。パンツがオシャカになってもうたわ。とりあえず、便所紙サンキューベリマッチ」
そう言って手を出してきた。
握手しようという意味だった。
「手…洗えよ」
「ガハハ」
不思議なもので、一度本気でやりあうとお互いに妙な親近感を覚えるものだ。
男は言葉を続けた。
「あんちゃんは何処行くのよ」
「は?」
「さっきも会うたやん?同じ方向に向かってんちゃうん?」
「おめーには関係ねーだろ」
「途中でまた会ったらかなわんからな、聞いとこ思ってな」
「奈良だよ」
「おっほー。俺もじゃ。そんならまた会うかもやなぁ。まぁもうすぐ奈良やから会わへんか」
「次会ったらやっちまうからなコラ」
「おっほー。元気がええわ。あんちゃんは東京モンか?」
「狛江ナメんなよ」
「おっほー。狛江かぁ、知っとるわ」
トラックの運転手だから色んな場所の土地勘があるのは不思議ではなかった。
それでも、地元を知ってるといわれると敵でも嬉しいものだった。
男は意外な事を言い出した。
「あんちゃんさ、狛江なら愚連隊知っとるやろ?」
井口達也
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