(チキン番外編はコチラ↓から)
チキン番外編①
「俺と奈良行かない?」
「何?奈良?達也奈良行くの?」
「一応そういう予定。ヒロシたちとさ」
「ほえ~。奈良って京都だっけ?」
「…たぶん。とりあえず大阪のあたりじゃん?」
俺も馬鹿だからその辺のことは詳しくなかったので適当に答えた。
ここにヒロシがいたら確実に奈良は奈良だろとツッコンだはずだ。
「遊びに行くんか?いいなー」
「ヒデくんも行こうぜ」
「若い奴らにオッサンの俺がまじってたら変だろ。お前らで楽しんできな」
俺は移動手段がない事を正直に伝えた。
「ルパンの運転で行くってことになってんだけどさ、まだ死にたくねーし、ヒデくん運転お願いできない?」
「そういう事か。俺を足代わりにする気だな?」
「まぁ、そうなるかな」
馬鹿正直に答えたが、ヒデくんは嫌な顔もせずに笑った。
「おし。俺も行く」
「マジ?よっしゃ」
「と、言いたいところだけどさ、連休は予定があるんだよね」
「何かあんの?」
「デート」
「どこに」
「大阪に食い倒れ旅行に行こうって言われたんだよね」
「決まりだね」
「ダーメ」
「いや、こっちこそダメ」
「デートの邪魔だっつーの」
「ほどほどにしかしないからさ」
「ほどほどでもダーメ」
「わかった。もういいわ」
「ごめんな達也」
「もう母ちゃんの卵焼き、届けないわ」
俺がそう言うとヒデくんの表情が一変した。
ヒデくんは俺の母親のダシ巻き卵が大好きだった。
母親がたまに多めに作ってヒデくんの現場に届けると、ヒデくんは大喜びだった。
「母ちゃんに届けろって言われたら、はいよーって言いつつ、玄関先で全部俺が食うことにしたわ」
「達也よぉ…」
「ん?」
「ひどすぎる…」
ヒデくんの顔は半泣きになっていた。
「奈良まで、頼んでいいかな」
「わーったよ。そんかわり…」
「何」
「今から達也の家に行っていい?」
「いいよ。なんで?」
「これから卵焼いてもらうんだよ」
「オッケー」
卵焼きでヒデくんを口説いて、俺たちは移動手段を得たのだった。
~つづく~
井口達也
※達也…あくどい!と思ったらクリック!