民宿山小屋は古い民家を改造した家屋で、老夫婦と一人娘の三人で経営していた。
一人娘といっても独身の四十歳。
しかし綺麗な人だった。
名前は彩子。
俺達が与えられた部屋は二階の十五畳ほどの和室だった。
元々二部屋だったのを、ふすまをはずして無理矢理一つにした部屋だった。
道路に面しており、窓を開けると俺達が通ってきた道路を見下ろす事が出来た。
畳は所々ほころび、部屋も全体的にボロボロだったが俺達は満足だった。
まるで修学旅行気分で、血の気の多いガキどももひとまずは畳に腰を下ろした。
ヒデ君とミカは当然俺達とは別の部屋をとってあったので、監視の目も気にする事がなく、ようやく一息ついた気がした。
「彩子さん、ボインだったな…」畳に寝転がっているヒロシが言った。
「俺、ちょっと昼寝するわ」森木が言った。
長旅で疲れたのか、落ち着きすぎて誰も腰を上げようとはしない。
俺は動くなら今だと思った。
ポケットに小銭がは入っている事を確認し、立ち上がった。
そのまま部屋から出ようとするとワン公が話しかけてきた。
「どこ行くんよ?」
「喉かわいた」
俺はそう答えただけで、何事もなかったように部屋を出た。
余計な話をして動きづらくなるのを避ける為だ。
俺は奈良に来た一番の目的をかなえる為に動き始めた。
ここに来る途中に電話ボックスがあるのを確認していた俺は、早速そこに向かった。
絵美に会う為に。
井口達也
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