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 おもに2006年から2008年にかけて月刊 『世相』 に連載された記事を単行本化したもの。それぞれの方が、ご自身の著作に記述したものを元に意見を述べている。日下さんに関しては、この読書記録の中に書いてきたものが多いので、リンクさせておく。

 

 

【日本人の心を海外に伝えているもの】
日下 : 漫画・アニメはキャラクターとストーリーとピクチャーの3本立てで日本人の心を表現していますから、誰でも一度読んだら理解できるわけです。(p.50)
   《参照》   『里中満智子』 杉山由美子 理論社
             【日本マンガの強み】
 漫画やアニメが海外で読まれだしたのは10年ほど前からである。その頃、日本の漫画やアニメを読んでいた10歳程度だった子供たちは、現在20歳程度になり、子供の漫画を散見し読んでいたであろう30代の親たちも現在40代である。
 世界の中ではややユニークで知られることのなかった日本人の心の在り方が、世界中の人々に理解されつつある、ということである。故に、民衆レベルでは世界は明らかに日本化している。しかし、政治や経済の権力者のレベルは必ずしもそうとは言えない。

 

 

【 「優しい」 に該当する中国語はない】
日下 : 両者とも四川省出身だから、中国語で大いに話をしていたのですが、「優しい人」 というところだけ、彼女は日本語でいったのです。
竹村 : つまり、日本語でしか表現できないということですか。
日下 : はい、中国語にはないということを、かれは書いているのです。 ・・・(中略)・・・ 。中国人に生れたら、一生に一回、一つでもいいからいわれてみたいと思う単語が10個並んでいてその合計が 「優しい」 になるのだということです。(p.77)
 会話をしていた中国人男性は、最近いろんな著作を出している 石平さん という方。神戸大学の出身者だという。 “神の戸” にある大学から巣立った中国人が、日本に対して貴重な役割を担ってくれそうな気がする。
 漢字についてであるけれど、広大な中国では地域ごとに漢字の読み方が違う。ゆえに中国人同士であってすら筆談はできても口頭での会話はできない場合が普通である。
日下 : あれは皇帝の行政用語だから、あれでは小説が書けないのです。
竹村 : それで、あんまり恋愛小説がないのですか。
日下 : そういう言葉で勉強していると、ほんとうに恋愛しなくなってしまいます(笑)。というよりも、情がなくなるのです。(p.179)
   《参照》   日本文化講座⑩ 【 日本語の特性 】 <後編>
          ○○○ 世界で最も《 繊細 》な表現をもつ日本語 ○○○

 中国語の特性に関してこういったことは、比較文化の中ではしばしば指摘されるけれど、一般の日本人は、それを知らず、下記の 「四書五経」 に関する思いと同様に、中国人を自分たちと同様であるかのように誤解している。

 

 

【 「四書五経」 と今の中国は関係ない】
渡部 : 当時の哲人の英知が普遍的な価値として結晶したわけです。その後、民族も変わり、王朝も変わって、いまの中国の人とは直接関係ないんですよ。ただ漢字が同じだというだけの話です。 ・・・(中略)・・・ 。
 それから、いまのイタリア人は古代ローマ人の子孫とはいえない。古代ローマの教えというか、あのセネカだとかキケロが書いた本を栄養分にして国をつくったのはドイツ、フランス、イギリス、オランダというような近代国家なんです。
 だからもとの哲学が生まれた国とはほとんど関係なく普遍的な価値になっている。「四書五経」 もいまの中国の本と考えたら大間違いなのです。(p.84-85)
   《参照》   『歴史から消された日本人の美徳』 黄文雄 青春出版社
   《参照》   『日本人が知らない「日本の姿」』 胡曉子 小学館
             【著者が語る中国人】

 

 

【戦前の日本には、ノーベル賞級の科学者が沢山いた】
渡部 : ノーベル賞についていえばですね。戦前も自然科学の分野で、ノーべル賞を当然もらうべき日本人は何人もいたんです。ところが、誰ももらえなかった。
 これは私の憶測ですが、戦前の人種差別が支配的な時代には、有色人種には自然科学のノーベル賞はやらないという暗黙の了解があったんじゃないかと思うんです。 ・・・(中略)・・・ 。そうでなければ説明できない。日本人はノミネートされても外されるんですから。
日下 : 共同研究なのに、相手だけがもらっちゃうとか。
渡部 : そうです。野口英世だって何回もノミネートされて、全部、最後になると外されてしまいます。それから、1902年にZ項を発見した天文学者の木村栄博士などもそうです。
日下 : 地球の自転運動を観測していて、みんなが誤差だといって捨てていたのを集め、「いや、これはこういうのを入れれば説明がつく」 といって明らかにしたのがZ項です。(p.103-104)
 大学時代、科学雑誌でこのZ項のことは読んだことがあるけれど、ノーベル賞級の発見だったとは記述されていなかった。その雑誌とは 『科学朝日』 である。客観的な記述に終始しただけとも考えられるが、朝日は科学雑誌の分野まで日本を評価しない統制を敷き続けていたのではないか、という疑念も残る。

 

 

【比較と俯瞰が知恵を育てる】
日下 : そういえば昔、ヨーロッパの地図を見ていて、国境が接している隣国が一番多い国はドイツなんだと思ったことがあるのです。 その時の地図では、ドイツがいちばん多くて9つありました。そういう真ん中の国ですから。
渡部 : ですから、比較言語学はドイツの学問だと言ってもいいのです。グリム兄弟は童話で有名ですが、ヤーコブ・グリムという人は、実は比較言語学の基礎を築いた方です。(p.121)
 このお三方の話がいつも面白いのは、比較・俯瞰をする考え方の基礎の上に、国際経験および学識・知識が豊かで、様々な情報を自在に料理して語ってくれるからである。その比較の仕方、俯瞰する角度、さらに時間軸をも自在に変えてする思考が実に多様で面白い。

 

 

【宗教より心が先の日本人】
渡部 : 日本の心学、心の学は心があるから、心を磨くためには神・儒・仏、何でもよろしいというわけです。だから宗教のほうを相対化するのです。 ・・・(中略)・・・ 。こんな発想をする国民は、私の知る限り世界に皆無だと思います。(p.52)

 

 

【キリスト教神学】
日下 : 彼ら(外国人)が表面ではグローバルなことをいっても、結局はキリスト教の精神に基づいて信者と非信者を区別している。その区別のシビアさは日本に住む日本人には分かりませんが、しかし、佐藤(優)さんは、よく分かっておられるのでしょう。
渡部 : 佐藤さんは神学を学んだということだけれど、それは日本人としては珍しいことです。しかし、西洋の昔の偉い政治家というのは、神父とか神学者が多いのです。ルイ14世のときのリシュリューとか。
竹村 : 博士号のことを英語ではドクター・オブ・フィロソフィーといいます。フィロソフィーとは哲学博士のことで、それは神学です。
日下 : キリスト教的人間観、社会観を洗い出すと、日本人にはびっくりするようなものがあります。(p.162-163)
   《参照》   『笑いの力』 河合隼雄・養老孟司・筒井康隆 岩波書店
               【思想の枠組み】
 比較・俯瞰するにしても、今日の世界を考えるには、国際世界を先導してきたキリスト教の神学についての基本的認識を欠いているのなら致命的ですらある。
 地球の為に時代が要請する大局的な世界観とすれば、 “キリスト教・神学” から “日本・心学” への変遷が必要な時代である。

 

 

【日本は、他国よりもずっと 「いい国」 】
渡部 : 私は日下さんの本を読んで、日本外交の間違いは、他の国も日本人のように立派だと思い込んでいるということだとつくづく思いました。
竹村 : 他の国より日本のほうが、すっといい国だということですか。
日下 : ずっといいのです。
竹村 : しかし戦後の教育は 「日本だけが悪いことをした」 と教えてきましたね。
渡部 : それを東京裁判史観といい、その根拠はもう完全に崩壊しています。(p.199)
   《参照》   『アメリカに頼らなくても大丈夫な日本へ』 日下公人 PHP
               【戦後の日本人が語る「戦前」の誤り】

 

 

【昭和27年4月28日】
 独立という言葉が出てきたけれど、日本は昭和27年4月28日に正式に独立しました。(p.206)
 昭和27年は、戦争が終わってから7年後の、1952年である。
 お3方共に、昭和5年(1930)生まれ。戦前・戦中・戦後を知っている方々だからこそ、戦前から日本が優れた国であったことや、日本が占領下に置かれていたとこに、深い拘りをもっているのだろう。
 我々後続の日本人も、お3方から学んで、その思いと認識を引き継いで行くべきだと思う。
 
<了>
 
 
 
 

  日下公人・著の読書記録

     『デフレ不況の正体』

     『思考力の磨き方』

     『独走する日本』

     『日本と世界はこうなる』

     『こんなにすごい日本人のちから』

     『反「デフレ不況」論』

     『人生応用力講座』

     『僕らはそう考えない』

     『「大和」とは何か』

     『日本人の「覚悟」』

     『官僚の正体』

     『お金の正体』

     『栄光の日本文明』

     『「見えない資産」の大国・日本』

     『強い日本への発想』

     『アメリカはどれほどひどい国か』

     『遊びは知的でなくてはならない』

     『「逆」読書法』

     『あと3年で、世界は江戸になる!』

     『日本の黄金時代が始まる』

     『「マネー」より「ゼニ」や!』

     『男性的日本へ』

     『よく考えてみると、日本の未来はこうなります。』

     『上品で美しい国家』

     『数年後に起きていること』

     『アメリカに頼らなくても大丈夫な日本へ』

     『「質の経済」が始まった』

     『 「道徳」 という土なくして 「経済」 の花は咲かず』

     『失敗の教訓』

     『 「人口減少」で日本は繁栄する 』

     『国家の正体』

     『日本人を幸せにする経済学』

     『闘え、日本人』

     『自信がよみがえる58の方法』

     『「考える力」が身につく本』