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 この御三方の鼎談は、数年前まで頻繁に出されていた。しかし、いずれも昭和5年(1930年)生まれの方々なので、さすがに最近はあまり見かけなくなった。
 この本は、2000年7月初版の古書だけれど、震災復興資金の捻出方法が書かれている。

 

 

【日本は超先進国】
日下  いってみれば日本は 「超」 先進国なんです。ところが、このことは数百年も時代を先取りしているから、分からない人には分からないんですね。
 たとえば、浮世絵がその好例です。19世紀、ヨーロッパの画壇では印象派の画家たちが活躍していましたが、その特徴のひとつは、風景画を描いたことが挙げられます。 ・・・(中略)・・・ 当時のヨーロッパでは風景画を描くということが革命的な意味を持っていたのです。 ・・・(中略)・・・ それは、19世紀までは、絵を描くならばキリスト教の聖人を描くべきだと考えられており、風景画を描くことは神への冒涜と受け取られていたからです。 ・・・(中略)・・・ だから、ヨーロッパでは表現の自由がなかったのです。(p.14-15)
 当時のヨーロッパにあったのは、宗教画か、お金持ちが描かせた個人的な肖像画のみだった。
日下  そうした状況にあったヨーロッパで、画家たちが風景画を描き始めたのは、安藤広重や葛飾北斎などの描いた浮世絵に触発されたからです。 ・・・(中略)・・・ ヨーロッパの画家にとって、浮世絵が新鮮に見えた理由はもう一つあります、浮世絵の極端にデフォルメされた遠近法が、ヨーロッパの画家には衝撃的だったからです。たとえば、手前に梅の枝が一つあって、遠くの方に富士山があるという構図ですね。
渡部  波の間から富士山が見える構図になっている絵もありますね。(p.16-17)
 印象派以前のヨーロッパには、 “遠近法を取り入れた風景画がなかった” ということの方に日本人は驚いてしまうけれど、それほどヨーロッパにおいては、宗教の枷が強力だったということである。
 宗教(キリスト教)がどれほど欧米人の意識を拘束していたかを、宗教的タブーなきことにおいても 「超」先進国である日本人は、対比的に知っておくべきである。
   《参照》   『日本人の「覚悟」』 日下公人 (祥伝社)
              【俗信こそが最高である】

 たまたま、数日前の読書記録に書いた小説の表紙 が北斎の絵だったけれど、当時のヨーロッパ人は、葛飾北斎 の絵の多様性にもたいそう驚いたことだろう。北斎は、南方仁みたいに未来から江戸時代にタイムトラベルしていた人だったのかもしれない。(南方仁は、医療アニメの主人公で、このアニメが最近ドラマ化され放映されていた)現代の日本にだって、未来からタイムトラベルして来ている人々は結構いるのである。

 

 

【西洋的世界観の崩壊】
竹村  体のども部分の細胞でもいいのですが、ある種のホルモンを加え、そのホルモンの濃度を調節することによって、そこから心臓ができたり腎臓ができたり血管ができるという。(p.198)
日下  身体機能に支障をきたした場合には、脳に関係なく内蔵が自ら 「あそこが火事だから助けにいけ」 とホルモンを分泌するんです。
 この発想が、キリスト教的 「上から下へ」 というピラミッド型秩序の世界観に反しているわけで、この点が非常に大切なところです。
 この点に関して日本人は何の抵抗も感じないのですが、西洋人は 「そんなはずはない。脳の中枢から神経が通っていて、その命令によって各身体機能が働いているはずだ」 と、自分たちの世界観に固執するんです。
 それで、脳から指令を送る神経を一生懸命に探すわけですが、探せども探せども見つからない。
「神経などなくても、ホルモンの濃度を調節するだけで十分できますよ」 といったのが日本人だったのですね。 ・・・(中略)・・・ 下からのお神輿経営や集団合議制が身体秩序のなかにあるというのはキリスト教徒にはショックらしい。(p.200-201)
 あらゆる細胞にはすべての遺伝子が組み込まれており、特定の遺伝子のスイッチだけがONになっているのだけれど、ホルモンが関与することで別の遺伝子のスイッチがONになり、別の機能をもった器官が生まれるのである。そして、ホルモンは脳の指令とは直接関与していない。つまり、身体秩序は脳に依存していない。ところが、西欧的世界観においては、人体全てを集中管理する脳(=唯一神)の存在を欠くことなどあってはならないのである。
 身体が必ずしも脳の支配下にないどころか、脳の多くの部分が欠損してしまった場合であっても、残った部分の脳が、欠損してしまった多くの脳の部分の役割を果たしているという事実も、今日では確認されている。唯一神という概念は、あきらかに揺らいでしまう。
 「全てのものに神は宿る」 という日本人の考え方(世界観)の方が正しいのである。

 

 

【日本人すべてに英語は必要か?】
日下  まあ、そうですね。だから立派な英語を使える人は日本人の1%で十分だとするべきです。(p.120)
竹村  こういう教育を受ける人は人口の1%でいいんです。中学から大学までの間、日本人全員が同じような英語教育を受けてもムダですよ。それでは 「円グリッシュ」 になってしまう。
 画一的な教育を全員に受けさせるのではなくて、これからの日本を背負う人たちには、過酷な英語教育を受けてもらったほうがいい。 ・・・(中略)・・・ 1億2千万人が同じような英語教育を受けて入いるようでは、日本の未来は暗いでしょう。(p.130)
 英語と日本語は、本質的に対極的な性質を持っている。一般の日本人はあえて対極を跨ぐ必要などない。
 現代の日本人は、英語など話せなくとも世界中の文化を知ることができる。日本は圧倒的な翻訳大国だからである。英語など話せず英語の思考方法など詳しく知らずともかまわない。純粋に日本語による思考方法に基づいた生き方に徹しているからこそ価値が増す時代になっているのである。
  《参照》   『ガイアの法則』 千賀一生 (徳間書店) 《前編》
             【経度0度と経度135度の文明的特徴】

 普通の日本人は、日本語の固有性を生かした生き方を貫けばいいのではないか。日本語の特異性を生かし、日本文化に浸った生活をすべきなのである。
   《参照》   『星言葉』 晴佐久昌英 (女子パウロ会)
             【日本語の特質を生かした日本であれ】

 

 

【大蔵省の収入】
渡部  バブルのときには、 ・・・(中略)・・・ 土地の売買が行われるたびに、大蔵省には多額のお金が入ったんです。
日下  バブルでいちばん儲けたのは大蔵省ですよ。
渡部  そのお金で国家財政の累積赤字が消えたのかというと、ぜんぜん消えてない。国鉄赤字も消えない。
 以前、「バブルで大蔵省の懐に入ったお金はどこへ行ったのか」 と大蔵省のエリート官僚に尋ねたことがあるのですが、その人は 「雲散霧消してしまった」 と答えたんです。
 だから、教訓として、大蔵省に税金を納めても雲散霧消するだけなんだから、税金をとっちゃダメなんですよ。(p.55-56)
 冗談みたいなエリート官僚の答えだけれど、決して冗談ではない。官僚がやることなんてこんなもんである。決して国のためとか国民のためなんて考えてはいないのである。
   《参照》   『日本民族の役割』 助安由吉 (エイト社)
             【穢れた行政】

 

 

【奨学金の出所】
 渡部先生が、小原白梅育英基金に呼ばれて講演をした時、奨学生たちの態度が素晴らしかったと書かれている。
日下  文部省から奨学金が出るとだめなわけで、つまり国家がやっちゃ駄目なんです。
渡部  奨学金制度のようなものは国がやらないほうがいいですね。
竹村  それを本当に皆さんに分かっていただきたいですね。これからは個人が出したお金で奨学金制度ができたり、老人ホームがつくられるような方向へ日本をもっていかなければならない。ところが今の日本の方向は逆です。たとえば介護保険もそうでしょう。
日下  そうです。「介護保険も税方式にしろ」 なんていっていますが、そういうふうになればなるほど感謝しなくなるんです。(p.213-214)
竹村  国が税金でそういった団体に補助金を出していると、役人の声が強くなる。それよりも所得税や相続税を安くし、お金持ちが自分の稼いだお金をNPOの運営資金に当てたり、寄付金に回したほうがよっぽどいい。しかし、日本ではこのことの重要性がまだ十分に理解されているとはいえません。
 なんでも国に任せてしまうのはよくない。我々が納めた税金がどこに使われるのかが、ぜんぜん分からないのだから。
日下  国家は寄付をされると税金が取れなくなるので、NPOに反対なんです。一応の建前として、「我々が使った方がうまくいく」 というんですが、 「本当かね?」 と質すと逃げちゃう(笑)。
渡部  その嘘の部分は、日本にある財団のほとんどが活動していないことに表れています。トップの大半は天下りで、やっていることといえば、ただ職員に給料を払っているだけ、予算の大半が人件費なんです。(p.216-217)
 官僚って、思いっきりズル~~~イ奴らばっかである。
 東日本大震災の復興資金も、建設国債だとかで、結局、国(官僚)に関与させたがるのである。
 寄付金は非課税とし個人の寄付金を集めれば、復興資金など容易に集まることだろう。寄付をしてくれた人々の中で希望者には、建物や道路に名を残すとかして顕彰すればいいのではないだろうか。

 

 社会や世界に貢献したい人は、決して国(官僚・役人)を経由してはいけない。国費同様、寄生虫のような奴らを利するばかりで、多くは貢献したい処に届かないのである。

 

<了>
 
  

  竹村健一・著の読書記録

     『嫌な奴とつき合いなさい』

     『僕らはそう考えない』

     『好きなことをやって、成功する法則』

     『栄光の日本文明』  

     『日本人よ、侍スピリットでよみがえれ!』

     『強い日本への発想』

     『日本の黄金時代が始まる』

     『これ1冊で日本の大変化がわかる!』

     『いつまでも若く生きる』

     『日本の出発』

     『例外的日本人』

 

  渡部昇一・著の読書記録

     『僕らはそう考えない』 竹村健一・日下公人・渡部昇一

     『中国を永久に黙らせる100問100答』

     『ラディカルな日本国家論』

     『痛快! 知的生活のすすめ』 渡部昇一・和田秀樹

     『楽しい読書生活』

     『ローマ人の知恵』

     『強い日本への発想』  竹村健一・日下公人・渡部昇一

     『大人の読書』  渡部昇一・谷沢永一

     『いま大人に読ませたい本』  渡部昇一・谷沢永一

     『時流を読む知恵』

     『日本の黄金時代が始まる』 竹村健一・日下公人・渡部昇一

     『人生力が運を呼ぶ』 木田元・渡部昇一

     『国を語る作法』

     『反日に勝つ「昭和史の常識」』

     『日本史の法則』